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海上自衛隊の護衛艦 ベトナムのカムラン湾に初寄港 | NHKニュース

ベトナム南部のカムラン湾に寄港したのは、海上自衛隊の「ありあけ」と「せとぎり」の2隻の護衛艦です。日本の護衛艦カムラン湾に入港するのは今回が初めてで、桟橋ではベトナム海軍や地元政府の関係者が自衛官たちを出迎えました。
部隊を率いる第15護衛隊司令の森下治1等海佐は「今回の寄港を通じてベトナム海軍との親善に努めたい」と話し、ベトナムとの防衛交流に期待を示しました。
カムラン湾は、ベトナム戦争中はアメリカ軍が駐留し、その後、ロシア軍が2002年まで使用していた戦略的要衝で、ベトナムと中国が領有権を争う南シナ海の島々にも比較的近いことから、現在はベトナム海軍の最重要拠点となっています。
寄港の目的は幹部自衛官による練習航海の一環ですが、中国が軍事的な活動を活発化させているなかでの日本とベトナムの防衛分野の関係強化には、中国の動きをけん制するねらいもあるとみられます。


中谷防衛大臣閣議のあとの記者会見で、「南シナ海における航行の自由とシーレーンの安全確保は非常に重要だ。今回の寄港がベトナムとの友好親善や防衛協力のさらなる発展に寄与できるよう期待しており、今後とも南シナ海の周辺国との関係強化に向けた努力を積み重ねていきたい」と述べました。

カムラン湾は、ベトナム南部の南シナ海に面した場所にあり、水深が深く、大型の船も接岸できる港があります。
ベトナム戦争中の1960年代後半から当時の南ベトナムを支援していたアメリカ軍が駐留し、大規模な港湾施設を整備しました。
ベトナム戦争終結後の1979年からは当時のソビエト軍が借り受け、ソビエト崩壊ののちもロシア軍が、2002年に撤退するまで東南アジアの戦略的要衝として使用していました。
カムラン湾は、ベトナムが中国と領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島にも比較的近いことから、現在ではベトナム海軍の最重要拠点となっています。
これまでベトナムは、外国軍のカムラン湾への寄港を厳しく制限してきましたが、去年11月、日本との間で防衛協力の一環として自衛隊の艦艇を寄港させることで合意しました。
先月には、外国の大型の艦艇も受け入れることができる新たな港湾施設も完成。南シナ海の領有権問題を巡る中国との対立が続くなか、日本やアメリカなどの艦艇を頻繁に受け入れることで、海洋進出の動きを強める中国をけん制するねらいもあるとみられます。

ベトナムと中国は、南シナ海の島々の領有権を巡って、これまでたびたび衝突を繰り返してきました。
ベトナム戦争中の1974年、西沙諸島で、当時の南ベトナムと中国が軍事衝突し、以後、西沙諸島は中国の実効支配下に置かれました。
また、1988年には中国が南沙諸島に艦艇を派遣し、ベトナム軍と交戦の末、武力で南沙諸島の6つを占領しました。
その後も南シナ海では、ベトナム漁船が中国当局に拿捕(だほ)されるなど、両国の間では火種がくすぶっていましたが、おととし中国が西沙諸島近くの海域に海底油田の掘削装置を設置したことをきっかけに、両国の船が衝突するなど対立が先鋭化しました。
ベトナムでは、首都ハノイだけでなく国内各地で中国に抗議する反中デモが広がり、死傷者も出る事態となりました。
これを受けて、両国の最高指導者どうしが相互に訪問し、関係改善に向けた動きも見られましたが、ことしに入ってからも中国は、南シナ海の島々でレーダー施設の建設や地対空ミサイル部隊を展開するなど軍事拠点化を進める動きを見せており、ベトナムは中国に対するいらだちを募らせています。