「万年バイト不足」の職場、何が足りない? [鼎談]アルバイト育成のトップランナーに聞く(3)|人手不足の時代に本気で考える アルバイト人材育成|ダイヤモンド・オンライン
大久保さんがどのような経緯で「アルバイト育成こそが企業の要だ」と考えるようになったのかということなんです。
【大久保】原体験があるとすれば、大学生のときにやっていた30席くらいの小さな居酒屋でのアルバイトです。2年半、週6回くらい一生懸命頑張ってバイトしていてすごく楽しかったんですよね。なんで楽しいのか考えてみると、その店のトップが自由にやらせてくれていたからでした。
ただ、僕はサービス業をやっているくせに、このとおり全然愛想がありません。当時も「輝いてないスタッフ第1位」に2回くらい選ばれたほどで(笑)。その店には3段3列のキープボトルが500本くらい、しかもみんな同じ銘柄で、なぜかみんな「あだ名」で名前を書いてあって、五十音順に整理整頓すらされていませんでした。
愛想がない僕なりにまず努力したのが、お客さんのあだ名とキープボトル500本の位置を全部、頭に叩き込むことだったんです。そこから始めて、灰皿を早めに交換したり、飲み物をつくってあげたりという細かい気配りを徹底するようにしていきました。
そのお店を辞める日、平日にもかかわらず常連さんがたくさん来てくれて、お店が満席になりました。しかも、8割くらいのお客さんが、ただのアルバイトにすぎない僕のためにプレゼントを持ってきてくれて……。バイト中に泣いてしまったのは、それが初めてでしたね。
そのときに「自分もいつかこういう店をつくりたいな」と思いました。そういう店でアルバイトにもこういう経験をさせてあげたい、自分のようなアルバイト経験をさせてあげたいと感じたのが、僕の根っこにあるのだと思います。
【渋谷】大久保さんとお話ししていると、「大変お忙しいはずなのに、本当にたくさんの本を読まれて、勉強されている方だな」という印象を受けるんですが、それは学生時代からですか?
【大久保】いや、大学生の頃はマンガしか読んでなくて(笑)。不動産会社のときも勉強していません。エー・ピーカンパニーに入って3ヵ月で店長になったんですが、そのときに追いつめられて本を読みはじめました。人件費とか売上の見方とか、経営的な数字の読み方など、本当になんにも知らないで店長になったので…。今でも年間300冊くらい読みますね。
【中原】大久保さんのお話を伺っていると、先日、トヨタ自動車さんにお邪魔したときのことを思い出しました。80年代にトヨタが海外進出した際、現地の人を動かすいちばんの方法が「公平に教えること」だったそうです。人種という色眼鏡をかけないで接して、日本の優れた技術を徹底的に教えているうちに、トヨタに対するリスペクトが生まれて、現地の人が動いてくれるようになったのだとか。