関連法成立 刑事司法の在り方 大きく変化 | NHKニュース
これまで検察や警察が自主的な運用や試行という形で行っていましたが、一部の事件で義務化されます。対象になるのは、殺人や傷害致死など裁判員裁判の対象になる事件と特捜部が捜査する事件など検察が独自に捜査する事件で、取り調べのすべての過程での録音・録画が義務づけられます。
しかし、録音・録画をすると容疑者が十分に供述できないと認められる場合や、容疑者が拒否した場合、それに暴力団の事件は例外にするとしています。
取り調べの録音・録画は、24日に成立した関連法が公布されてから3年以内に義務化されます。
欧米では広く使われている2つの捜査手法が新たに日本で導入されます。
1つ目は事件の容疑者や被告を対象にした「司法取引」です。容疑者や被告が共犯者など他人の犯罪を明らかにする供述や証拠の提出をして捜査に協力した場合、見返りとして検察が起訴を見送ったり、起訴した場合でも刑を軽くするよう裁判所に求めたりすることなどができるようになります。
対象となる事件は、汚職や脱税、談合、それに振り込め詐欺などの知能犯罪と薬物や銃器の犯罪で、捜査機関と容疑者や被告、それに弁護士の3者が合意することが条件になっています。
また、みずからの罪を軽くするために、うその供述をして無実の人を「引き込む」のを防ぐため、容疑者や被告がうその供述や偽の証拠を出した場合は5年以下の懲役にする罰則を設けています。
「引き込み」の防止を巡っては、国会での審議で「新たなえん罪を生むおそれがある」と指摘され、司法取引の協議の際に弁護士が関わることを義務づける条文が加えられました。
さらに、法案には明記されませんでしたが、付帯決議として検察が取り引きの協議について記録を作成して保管することも盛り込まれました。
2つ目は裁判の証人を対象にした「刑事免責」です。
裁判では事件について重要な事実を知っている証人が、みずからの刑事責任が問われることを心配して証言をためらうケースがあります。
この制度では、検察が「証言した内容について刑事責任を追及しない」と約束したうえで、裁判で証言させることができます。
「司法取引」や「刑事免責」は、関連法の公布から2年以内に導入されます。
捜査機関に電話やメールなどの傍受を認める「通信傍受」の対象も広がります。
これまでは薬物犯罪や組織的な殺人など4つの類型の犯罪に限って行われてきましたが、振り込め詐欺や組織的に行われる窃盗や誘拐、それに児童ポルノの製造など9つの類型の犯罪も新たに加えられます。
法案では、傍受した内容を暗号化するなどして厳格に管理すれば、これまでのように通信事業者の立ち会いは必要なく、直ちに通信を傍受することができることになっています。
通信傍受の対象の拡大について、警察庁は、深刻な被害が続いている振り込め詐欺事件の捜査やテロ対策などに効果が期待できるとして、その必要性を主張してきました。一方、捜査機関の権限が拡大し、通信事業者の立ち会いが必要なくなることで、乱用やプライバシーの侵害を懸念する声も出ていたことから、警察庁は傍受した内容を暗号化するなどして厳格に管理するとともに、事件の捜査と関係のない警察官が必要に応じて指導役として立ち会うとしました。
これに対して、通信傍受の拡大に反対する市民グループなどは「警察以外の第三者がチェックするわけではなく、監視の役割は果たせない」と批判しています。
さらに、捜査の過程で集めた証拠について、検察が被告に有利な証拠を隠したりしないようにするため、被告側が請求した場合、検察は原則としてすべての証拠の一覧表を開示することが義務化されます。