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性善説なのに「タダ乗り社員」を生まない驚異の組織運営術|ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹|ダイヤモンド・オンライン

 実はこの考え方は、武士道のみならず、プロテスタントの教義とも似ている。社会学者のマックス・ウェーバーが名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で看破したように、「世俗の仕事を真摯に行う」という教義は資本主義を発達させる原動力になる。つまり、簡単に言えば、このような教義を持つ者は金持ちになる確率が高い。


 事実、産業革命が起こったのはすべてプロテスタント地域からであった。そしてインドでもシーク教徒は、経済的に裕福な人が多く、先述のタイガー・ジェット・シンのように国際的に成功している人も少なくない。

社会生物学から経営学に至るまで、「集団への自発的協力」は重要な問題である。現在の理論では、集団への協力は、「タダ乗り者への罰システム」がない限り、うまくいかないとされている。しかし、そのシーク教徒の男性は、


「タダ乗りする者がいてもいいんだ。彼らが将来シーク教によって救われたと思ってくれればね」と話した。


 つまり「タダ乗りする者を罰するシステム」はないという。現代社会生物学の理論上、こういった集団は存続することはできないことになっている。つまり、シーク教が組織として500年に渡り存続していること自体が、学問的には興味深い謎である。


シーク教の人々は基本的に他の人々の善意を信じている。それがたとえ他宗教の人々であってもだ。この「性善説」に基づいた考え方を持っている代表的なビジネス組織が2つある。グーグルと、ブラジルのコングロマリットセムコだ。


 グーグルは基本的に社員の自発的アイディアとそれに賛同する人々で、様々なプロジェクトを行う。労働時間の2割は自分の好きなことをしてもよい。それ以外にもいろいろあるが、すでに有名な事例なのでここでは詳しく述べない。


セムコは、中小企業を引きついだリカルド・セムラー氏が、大胆な改革を行って急激に業績を伸ばしてきた会社だ。そのポリシーは、「社員を大人として扱う」「毎日が休日のように社員が思える会社にする」というものだ。そして、社内の意思決定を徹底的に民主化し、例えば役員会議でも、一労働者が発言できるようにしている。週休4日を望む社員がいればそのような契約を行う。上司と部下の区別はなく、基本的にすべてフラットである。


 それでいて現在は従業員3000人以上を抱えるコングロマリットとして、なお成長を続けているのだ。


 上記の例のような少数の企業やシーク教のあり方は、ある種「理想的集団」であるが、それは学問上の理論的予測によると「一時的」でしかない。このような集団はやがて崩壊するというのが、通説だ。


 しかし、シーク教は16世紀から続き、世界中に寺院がある。また、グーグルもセムコも、今のところは成長を続けている。ここに、理想的集団の謎を解くカギがありそうだ。

 1つこれらの会社に共通しているのは、皆その理念に深く賛同していることだ。そして自分に「自己効力感」がある。つまり、自分は組織の役に立っていることを実感している。そのための「しくみ」を組織は提供しているだけだ。


 そしてそのような人々が集まると「タダ乗りなんてことはしないのが当たり前」という集団規範を生む。ある種の「プライド」である。そうなると、その「プライド」の重さに負けたものは、自然と組織から離れて淘汰される。新たに入ってくる者も、知らず知らずの内に「プライド」が身に着く。


 それが、組織を存続させる。強烈な集団規範を良い方向で活用しているのだ。だが、この仮説では、まだ現代生物学理論を覆せない。その裏に、まだカギとなる秘密があるに違いないと筆者は考えている。


 もうひとつ言えることは、社員を管理し、絞り取ることで利益を得ているブラック企業の社員は、それに疲れ、やる気を失い、隙あらば「タダ乗り」を目論もうとする「ブラックマインド」を醸成してしまう。そんな社員ばかりだと、会社は成り立たない。したがってその企業はますますブラック化せざるを得ない。「会社のためになんか働くかよ」という全く逆の集団規範が作られてしまう。その悪循環には多くの組織が簡単にはまってしまうのだ。


 管理職や経営者は、その罠にはまらない知恵を絞る時期に来ていると筆者は考えている。事実、性善説なのにフリーライダーを産まない組織は実在するのだ。絵空事ではない。ブラック企業が増えれば、日本という国自体の将来が危うくなるのだ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160524#1464087124
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140205#1391597209