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「報酬は変わらず、リスクだけ低く」は実現できる? ノーベル賞を受賞した「虫のいい話」|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

リスクとは将来の不確実性だ。この不確実性に対する見返り(リスクプレミアム)こそが金利の正体である。したがって、高いリターンを得ようと思えば、当然、それを得られる不確実性も高まるし、確実にその利益を得ることを優先すれば、一度に手に入れられるものも少なくなる。


一方、リターン(金利)というのはもう1つ別の意味――コスト(割引率)としての性格を持っている。人やモノや企業の価値は、それが生み出す将来のキャッシュフローと割引率によって算定される。


価値算定に必要なのはそれだけであり、資産がどんなお金から構成されているか(負債なのか株主資本なのか)はまったく関係がない。


だとすれば、人・モノ・企業の価値を高める方法は、2つしかないことになる。


1つはそれが生み出す将来のキャッシュフローを増やす方法。人の価値を高めたいとき、たとえばさまざまな自己投資によってスキルを高め、生涯年収をアップさせるという道が考えられるだろう。投資用マンションのような資産であれば、家賃価格を引き上げれば簡単にキャッシュフローの額は大きくなる。企業も優秀な人材の採用によって、稼ぐ力を増強していくことは可能だ。


しかし、キャッシュフローを増やすという道は、やはりハードルが高い。相場以上の家賃を設定すれば、まず借り手がつかないだろうし、会社が優秀な人材を確保しようとすれば、人件費が跳ね上がりかねない。


そもそも人間というのは怠け者であり、かつ、貪欲な生き物である。つい考えたくなるのが、「楽をして価値を高める方法」だ。キャッシュフローを増やす努力をせずに、手元の資産の価値を高めることはできないのだろうか?


そこで考えられるもう1つの道が、割引率を下げるというやり方である。なんとか将来のキャッシュフロー(稼ぎ)はそのままにキープしつつ、割引率だけを下げることができれば、いまの場所を1ミリも動くことなく新たな価値を手にすることができる。


しかし、割引率(コスト)とはリターンの裏返しであり、リターンとはリスクに対する見返りだ。


「リターンはそのままでリスクだけを小さくする」などという虫のいい話はあり得ない。常識のある人なら、そんな無茶なことに首をつっこもうとしないはずだ。


しかし、そこで最後の最後まで諦めずに粘り続け、「リスクだけを小さくする方法」を発見してしまったとんでもない人物がいるのをご存知だろうか。


それが、「資産運用の安全性を高めるための一般理論形成」により1990年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ハリー・マーコウィッツ(Harry M. Markowitz: 1927〜)である。


「すべてのタマゴを1つのカゴに盛るな」という格言を耳にしたことはあるだろうか?タマゴを1つのカゴに入れていると、そのカゴを落とした場合には、全部のタマゴが一度に割れてしまいかねない。


一方、複数のカゴに分けておけば、1つのカゴを落としていくつかのタマゴが割れてしまったとしても、ほかのカゴのタマゴは無事だ。いわゆる「リスク分散」の考え方を表した格言として、いろいろな場面で引き合いに出される言葉である。


マーコウィッツが提唱した現代ポートフォリオ理論(MPT: Modern Portfolio Theory)は、まさにこの格言を学術レベルで精緻化したファイナンス理論である。投資家は複数の資産に分散投資する(ポートフォリオを組む)ことによって、投資のリスクだけを減らして確実に期待収益を得ることができる――そのことを見事に証明して見せたのが彼の業績なのだ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160603#1464950396