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日銀有力OB2人が語る金融緩和「限界論」と総括検証の行方 早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー[元日銀理事])×門間一夫(みずほ総研エグゼクティブエコノミスト[前日銀理事])|Close Up|ダイヤモンド・オンライン

日本銀行のチーフエコノミストに当たる「調査統計局長」を長く務め、日銀屈指の理論派として鳴らした富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏は特に手厳しい。


早川 「従来のストーリーが崩壊していることは明らか。当初目標に掲げた2%インフレの達成は遠のく一方で、日銀が使える金融政策の手段には強く限界が意識され始めている。


IMF国際通貨基金)も8月に発表した報告書で、今の日銀の金融政策では2%の実質成長も、20年度のプライマリーバランス基礎的財政収支)黒字化もアウトオブリーチ(手が届かない)、かつ金融政策も財政政策も限界に近いと警告している」


 異次元緩和の導入直前に日銀を退職した早川氏は、「異次元緩和が成功するとすれば、短期決戦のケースに限られる」と主張していたが、結局、長期戦に突入してしまい、戦局は悪化していった。

 早川氏の後任として調統局長に就いたみずほ総研エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は5月に日銀理事を退任したばかりで、異次元緩和を一定程度、評価している。


門間 「限界といっても、3年前に比べれば経済は明らかに良くなっており、デフレスパイラルを防止するということについて、日銀の金融緩和の力が証明されたと考えている。海外の中央銀行もその点は評価している。ただ、限られた期間中に金融政策の力だけで特定の物価上昇率を実現することが難しいということも分かってきた」


 一方で13年の異次元緩和、14年10月の「ハロウィン緩和」などに続く、次なる緩和バズーカについては懐疑的だった。


門間 「理論的にはあり得ても、具体的にどういう手段があるのか、見当がつかない」

 限界論が浮上する中で行われる総括検証。門間氏はこの検証で二つのポイントに注目している。一つが今年1月に打ち出されたマイナス金利政策で関心が高まっている「金利」だ。


門間 「金利は低ければ低いほど、常に経済に対してプラスに効くと経済学の教科書には書いてある。ただ、日本は金利が20年間ほぼゼロに近い。これだけ長期にわたって、低金利が続くことの効果をどう考えるか。本当に教科書通りに効果が出てくるかどうか、金利の効果をしっかりと検証すべき」


 そしてもう一つが、黒田東彦日銀総裁が異次元緩和を導入する際に提唱した「期待に働きかける」政策の効果だ。


門間 「これだけ日銀が強力な金融緩和をしているのだから、これで人々の予想物価上昇率が上がるはず、というのが基本的な発想。それが本当に効いているのかどうかも検証の対象とすべき」

 一方の早川氏は、円安などの効果をもたらさなくなってしまった国債購入など「量」の効果を検証する必要性を説く。


早川 「金融緩和で長期国債の購入額が年間80兆円と、新規の国債発行額の2倍以上にまで規模を拡大したが、この規模を何年間も続けていくことが無理なのは誰の目にも明らか」

 足元では、世界の中央銀行関係者が集まる米ワイオミング州ジャクソンホールでの黒田総裁の発言が物議を醸している。


 8月27日の講演において、日銀が今年1月に導入したマイナス金利政策について、マイナス幅のさらなる深掘り余地があるとの認識を示したのだ。


 マイナス金利政策をめぐっては、大幅な減益要因となる銀行業界をはじめ、国内には懐疑的な見方が広がっている。マイナス幅の拡大についてはなおさらで、門間氏もこれに同調する。


門間 「今の金利をさらにマイナスに深掘りすることは、現時点においては、効果が大きいようには見えない。深掘りによる『金融』と『家計』へのデメリットの方が、『企業』がマイナス金利下で投資を増やして経済が拡大する効果よりも大きいと、トータルで逆効果になってしまう」


 早川氏はマイナス金利政策そのものには肯定的だが、同時に大量の国債買い入れを続けている点を問題視している。


早川 「マイナス金利政策自体は、限界が近づいている国債の大量買い入れよりも持続可能な政策であり、深掘りもできると思う」


 ただ、マイナス金利導入後、短期金利のみならず、長期金利もマイナス圏に落ち込んでしまった。イールドカーブ(利回り曲線)の平たん化(長期金利短期金利の差が縮小)が急速に進行したのだ。


早川 「一番問題なのは、長期金利が思った以上に下がっていることで、銀行が利ざやの縮小で収益を圧迫されるだけでなく、生命保険や年金の運用難を助長している。ただ、長期金利の想定以上の低下はマイナス金利のせいというより、マイナス金利を導入したにもかかわらず、毎月大量の国債を買い続けていることが要因」


 早川氏はこれを減らせば、利回り曲線の長期ゾーンが立ってくるとの解決策を示す。


 日銀は現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和の波及経路として、期待インフレ率の上昇と利回り曲線全体の押し下げによって実質金利を低下させ、国内産業の活性化につなげることで、経済成長を狙うが、実現には日本特有の問題も横たわる。


早川 「借り手サイド(企業)だけに着目すれば、短期金利だけでなく、長期金利まで下がると、借金をして投資するインセンティブが高まる。逆に(長短金利差で収益を上げる)銀行は融資のインセンティブがなくなる。どっちが大事か、これはなかなか微妙なところ。


 例えば、米国は金融市場における直接金融が基本で、明らかに借り手サイド(企業)が大事。ところが、日本や欧州のように間接金融が優位の国では、貸し手サイド(銀行)の融資姿勢も重要となるので、長期の利回りをつぶすような金融緩和は、あまり効かない可能性がある」


 日銀は自らが仕掛けた空前の金融緩和をどう総括するのか。想定外の副作用も顕在化しており、甘い結論を出すようなことがあれば、大きな禍根を残すことになる。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160904#1472985357
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160902#1472812593

#リフレ#アベノミクス