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昭和41年に今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定していた袴田巌さん(80)について、3年前、静岡地方裁判所は、犯人のものとされる衣類に残された血痕のDNAの型が袴田さんと一致しなかったという鑑定結果などを基に、再審を認める決定を出しました。


衣類のDNA鑑定をめぐっては、検察側の専門家は「判定できない」としましたが、弁護側の専門家が独自の手法でDNAを抽出して鑑定結果を出したため、検察が手法を検証するよう求め、東京高等裁判所は、別の法医学の専門家に検証するための実験を依頼していました。


これについて、鑑定の手法に疑問があるとする報告がまとまり、東京高裁に提出されたことが関係者への取材でわかりました。今回の報告は、高裁の判断に影響する可能性がありますが、弁護側はこれまで「実験用のサンプルは全く違うもので、検証実験は意味がない」と主張していて、今後、強く反論するものと見られます。

今回の検証実験は、DNA鑑定が正しいかどうかの前提となる、抽出方法の信頼性を確かめるため、裁判所の判断で行われました。


DNA鑑定では、現場の近くで見つかったシャツに付着していた犯人のものと見られる血液が調べられました。事件から長い時間がすぎ、DNAが劣化しているうえ、シャツに触れた捜査関係者などの汗やつばが付着しているおそれもあり、検察側の専門家は「判定できない」としましたが、弁護側の専門家は、血液の細胞だけを選別してDNAを抽出できたとして、「袴田さんと一致しない」と結論づけました。しかし、検察が「この手法は信頼できない」と主張したことから、東京高等裁判所は、同じ手法でDNAを抽出できるかどうか、別の専門家に検証を依頼しました。


検証には、20年ほど前に作られた研究用の古い血痕のサンプルなどが使われ、関係者によりますと、血液の細胞だけを選別できるという手法には疑問があるとする報告がまとまったということです。一方、袴田さんの弁護団は「証拠のシャツと実験用のサンプルは全く違うもので、検証実験は意味がない」と批判していて、実験が妥当なものだったかどうかがさらに争われる見通しです。

今後は、DNA鑑定の検証実験に加えて、捜査段階の自白などさまざまな証拠を踏まえて再審=裁判のやり直しが改めて判断されることになります。


このうち、自白については、袴田巌さんが、実際には関わっていないことを認めるよう捜査官に強要されたかどうかが争われています。おととし開示された、当時の警察の取り調べの様子を録音したテープには、袴田さんがトイレに行きたいと申し出たのに対して、警察官が「便器もらってきて。ここでやらせればいいから」と言って拒否したうえに、「間違いないんだろ?袴田。返事をしなきゃだめじゃないか」などと自白を迫る様子が記録されていました。


袴田さんが自白したのはこの取り調べの2日後だったということで、弁護団は「拷問的な取り調べで、うその自白を強要された」と主張しています。


また、事件の1年余りあとで現場近くのみそ工場のタンクの中から見つかった、犯人のものとされる5点の衣類が袴田さんのものかどうかも争われています。弁護団は、みそに漬かっていたとすると色が不自然だと主張していて、3年前の再審を認めた決定でも不自然さが指摘されました。


今後、東京高等裁判所は、こうした証拠も総合的に評価したうえで最終的に判断することになります。