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アンナ・ボーシェフスカヤ ワシントン近東政策研究所 フェロー

1932年の王国誕生以降、サウジアラビアソビエト・ロシアは、中東におけるほぼすべての戦争や対立をめぐってことごとく別の立場をとってきた。しかし、2000年5月にロシアの権力者となったプーチンは、米サウジ関係の緊張をうまく利用しようと、2007年にリヤドを訪問した。プーチンはリヤドとの経済関係を強化し、アメリカと中東同盟国の関係に楔を打ち込みたいと考えている。停滞するロシア経済が外国投資を必要としていることも理解している。一方サウジは、「経済的インセンティブを与えることで、ロシアがイランに距離を置くように仕向けられる」と考え、シリア問題をめぐっても、ロシアとの関係を通じて一定の機会を確保したいと考えている。今後の展開は予断を許さないが、少なくとも、プーチンはサウジの国王や皇太子以上に多くのカードをもっている。


トビー・マティーセン オックスフォード大学 シニアリサーチフェロー(中東外交)

最近の政治的パージによって、ビン・サルマン皇太子は政治的ライバルを追い落としただけでなく、これまでアブドラ一族が支配してきた国家警備隊を含む、サウジの軍事組織の全てをいまや直接・間接に支配している。彼は、周辺地域が抱える問題の多くはテヘランが背後で操っているとみなし、イランに対してより強硬な路線をとっている。この現状は危険に満ちている。イラン脅威論を利用して国内のナショナリズムを煽りたてるビン・サルマンが、いまやサウジの権力を一手に担おうとしているからだ。テヘランに対する強硬路線をとるビン・サルマンをイスラエルが支持し、彼がサウジにおける自らの権力基盤を固めるなか、ワシントンからテルアビブ、リヤド、そしてアブダビをつなぐ、対イランの新たな枢軸が形成されつつある。


ニコラス・クローリー フロントライン・アドバイザリー創設者
ルーク・ベンシー セキュリティ・マネジメント・インターナショナル マネジング・ディレクター

リヤドを経済・社会変革に駆り立てているのは、原油安ではなく、むしろ、ユースバルジに象徴される人口増大問題だ。たとえ原油価格が上昇しても、今後の人口増を考慮すれば、家計収入の80%が公的部門の給与とさまざまな補助金に依存している現在の経済モデルは維持できなくなる。だからこそ、リヤドは行動計画「ビジョン2030」を実行しようと試みている。これは、改革が引き起こす政治・経済・社会的大混乱のなかで、かつてない規模の若者たちが成人していくことを意味する。経済改革の設計者(政府)と社会的安定の擁護者(治安当局)は、緊密に連携しながら、この国の文化的アイデンティティの中核部分を慎重に再調整していかなければならない。激しい抵抗に直面するのは避けられないが、改革に失敗すれば、サウジは、現在のいかなる脅威よりもはるかに危険な、国内の全面的な不安定化という事態に直面することになる。


汚職摘発を理由に拘束されたサウジアラビアの王族の1人、ムトイブ王子が釈放された。当局者の1人が明らかにした。10億ドル(約1100億円)余りと考えられる額を支払って決着する合意が成立したという。


  この当局者が匿名を条件に語ったところでは、故アブドラ前国王の子息であるムトイブ王子の釈放は28日に行われた。リヤドのリッツ・カールトン・ホテルに拘束されている王族・元閣僚らのうち、少なくとも他の3人とも決着で合意したという。


  当局者によると、サウジ当局は数人の釈放を決め、少なくとも5人の訴追手続きを進める方針。ムトイブ王子は4日にサルマン国王によって国家警備相を解任された。


原題:Saudi Prince Released After $1 Billion Settlement, Official Says(抜粋)


サウジアラビアでは、政財界に影響力のある多数の王族や実業家らが汚職の疑いなどで当局に次々と拘束され、関係する銀行口座が凍結されました。


欧米の複数のメディアは、拘束された王族のうち、治安機関の1つ、国家警備隊のトップを務めてきたムトイブ王子が、容疑を認めたうえ、汚職で得た1000億円以上の資産の没収に応じ、釈放されたと伝えました。


ロイター通信によりますと、ムトイブ王子はみずからの会社に装備品を発注して利益を得るなど不正に関与したことを認めたということです。


ムトイブ王子はアブドラ前国王の息子で、かつて皇太子候補の1人と注目され、事件を主導しているムハンマド皇太子の王位継承に向けた抵抗勢力とされてきたため、今回の拘束劇が汚職の捜査という名目の粛清ではないかという指摘も出ていました。


サウジアラビア政府としては、ムトイブ王子を釈放することで粛清との指摘を回避し、汚職の一掃という捜査の正当性を強調したい狙いがあるものと見られます。


一方、拘束された実業家らの処遇は依然明らかになっておらず、金融関係者からは外国からの投資の冷え込みを懸念する声も出ています。