https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

日産自動車の「ポスト・ゴーン」選びはすでに始まっている。日産は社外取締役の豊田正和氏を委員長とした委員会を立ち上げ「現在の取締役の中から会長の候補を提案する」方向で絞り込みに入っている。ゴーン氏とその側近だったグレッグ・ケリー氏が逮捕された後、残る取締役は7人。この非常時に会長が務まりそうなのは、前会長の志賀俊之氏か豊田氏のどちらかだ。

 豊田氏は経産省の出身で、日産の社外取締役には今年の6月に就任した。1973年入省で、商務情報政策局長、経済産業審議官などを経て2008年の内閣官房参与を最後に退官した。事務次官にこそなっていないが、経産官僚としてはかなりの大物だ。

 退官後は日本エネルギー経済研究所の理事長を振り出しに、社外監査役社外取締役として日東電工キヤノン電子村田製作所を渡り歩いている。来年、70歳になる豊田氏の天下り人生もそろそろ「上がり」が近づいていたはずだが、その豊田氏が今年、日産に送り込まれ、この局面で「ポスト・ゴーン」を決める重要なポジションを担っているのは興味深い。会長選びに経産省の意思が反映されるのは間違いない。

 経産省が急遽、大物OBの豊田氏を日産に送り込んだのは、ルノーを介して日産に「支配」の手を伸ばそうとしていたフランス政府に対抗するためと見られる。
「ゴーン逮捕」の火種が生まれたのは2015年4月。当時、経済相だったマクロン大統領が、フランス政府のルノーでの議決権を2倍に引き上げる指示を出したときだ。このころからマクロン氏はルノーの経営に介入する意思を見せ始め、大統領になってからも「ルノー・日産の経営統合」を主張している。

 2015年の時点でゴーン氏は、仏政府によるルノーの経営への介入に反対していた。政府の影響力が高まれば、不況時に人員削減や工場閉鎖が実施しにくくなるからだ。政府の支援を受けながらリストラを先送りする経営は、「コストカッター」と呼ばれるゴーン氏のスタイルと相容れない。

 だがルノーCEOの任期が切れた昨年、ゴーン氏はマクロン大統領に歩み寄った。2022年までのCEO任期延長と引き換えに、政府の介入を受け入れた節がある。ここからゴーン氏とマクロン大統領は「ルノーと日産、三菱自動車の経営を不可逆的なレベルまで統合する」という方針で歩調を揃えた。

 これを脅威と受け止めたのが西川氏ら日産の日本人経営陣と三菱自動車経産省だ。

ルノー・日産・三菱自」統合会社の経営権をフランス政府が握るような事態になれば、極端な場合、日本にある日産や三菱自の工場を閉めてフランスにあるルノーの工場に生産を移管するようなケースも考えられる。日本の部品・素材メーカーを切り捨てて、フランスのサプライヤーの仕事を増やすこともできる。それで統合会社が強くなるかどうかは別の話だが、少なくとも足元でフランスの雇用が増え、マクロン大統領の支持率アップには貢献するだろう。自動車版「フランス・ファースト」である。

 資本の論理では日本はフランスにかなわない。日産の発行済株式の約43%を持つルノーは拒否権を持っており、一方の日産はルノーに15%出資しているが、これは議決権を持たない株であり経営にはほとんど口を出せない。

 マクロン大統領とゴーン氏が着々と「経営統合」に向かって歩みを進める中、日産の日本人経営陣や経産省は「資本の論理」を覆すための一手を探っていた。その1つが「日産によるルノー株の買い増し」ではないかと筆者は睨んでいる。

 日産による出資比率が25%を越えればルノーの日産に対する議決権が相殺され、日産は経営の自主性を確保できるからだ。資金源は「官製ファンド」である。

 2018年9月、産業革新機構(INCJ)を改組して誕生した産業革新投資機構(JIC)。産業革新機構の設置期間を大幅に延長し、2兆円の投資枠を4~5兆円に拡大する計画もある。過去にルネサスエレクトロニクスジャパンディスプレイ(JDI)に数千億円を投資し、東芝メモリを買収した日米韓連合の一翼も担う。JICの社長に就任したのは三菱UFJ銀行出身の田中正明氏。頭取にはなれなかったが海外の金融機関に幅広い人脈を持つ大物バンカーで、経産省とも近い。さらにJICの子会社になったINCJの会長は日産取締役の志賀俊之氏である。

 JICの表看板は「ベンチャー投資」だが、INCJの資金の過半がルネサスやJDIといった日本の電機産業の再編・再建に注ぎ込まれたことを考えれば、日産・三菱自の経営権をルノーから取り戻すことにJICの資金が使われても不思議はない。資金を拠出するJICには田中、受け取る日産には豊田と志賀がいる。そしてJICと日産の背後にいるのが経産省という見立てである。

 マクロン大統領とゴーン氏の「連携」に警戒感を強めた日産の日本人経営陣と経産省は、要所の人事で布石を打って「日産奪還」の布陣を整えた上で、ゴーン氏の追い落としに出た。当然、フランス側は反撃に出るだろうし、有価証券報告書の虚偽記載だけでゴーン氏を仕留められるとは思えないので、日本側はまだ「隠し球」を持っているかもしれない。事態の推移は予断を許さないが、これがゴーン氏個人のスキャンダルでないことだけは間違いなさそうだ。

G20サミットに出席するためアルゼンチンを訪れている、安倍総理大臣は、フランス側からの要請で、日本時間1日午前0時20分ごろから約15分間、サミットの会場でマクロン大統領と会談しました。

この中で、安倍総理大臣は「日本とフランスの産業協力の象徴である日産、ルノー、三菱の提携については、民間の当事者間で決めるものだ」として、今後の提携の在り方について、政府が関与すべきものではないという考えを示しました。

そして、両首脳は、日産、ルノー三菱自動車工業のグループ3社の提携について、安定的な関係を維持していくことが重要だという認識で一致しました。

また、同行している野上官房副長官は、記者団に対し、日産自動車の前の会長、カルロス・ゴーン容疑者が金融商品取引法違反の疑いで逮捕されたことについて、首脳どうしの詳細なやり取りは差し控えるとしたうえで、「検察当局は独立した存在で、個人の基本的人権の保障を前提として、捜査は適正に行われていると認識している」と述べました。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2018/11/30/200430(仏メディア ゴーン前会長の勾留延長 批判的に伝える)

日産は退任後の報酬のための金を積み立てておらず、会長在任中に発覚しないようにしていた可能性がある。

 ゴーン前会長は退職後に約半分の報酬を受け取る形にしていたことを認めつつ「受け取ることは確定しておらず、報告書への記載義務はなかった」と説明しているという。この説明からすれば、積み立てをしていなかったことは「支払いの未確定」を意味することにつながるとの見方もある。

 ゴーン前会長と側近の前代表取締役、グレッグ・ケリー容疑者(62)は2010~14年度の5年分の前会長の役員報酬計約50億円を有価証券報告書に記載しなかった疑いで逮捕された。

 関係者によると、2人は、年1億円以上の報酬を得た役員が有価証券報告書に氏名や金額を記載しなければならない「個別開示制度」が09年度に始まったことを機に、年約20億円だった前会長の報酬のうち約10億円を退任後に受け取る仕組みを作ったとされる。

 ゴーン前会長らは、この仕組みを確認する合意文書を毎年、英語で作成。文書には、日産が退任後の前会長に「未払い報酬」を支払うなどと記され、金額や作成日も記されていたという。

 文書の存在は前会長とケリー前代表取締役のほか、少数の側近幹部しか知らず、文書の一部には前会長のサインもあったとされる。

 日産自動車カルロス・ゴーン会長(当時)の逮捕は、日本の刑事司法の後進性を全世界に向けて発信することになりそうだ。東京地検特捜部は、久しぶりの大金星に浮かれるのではなく、人権意識の高いフランスを始めとした西欧諸国を納得させることのできる犯罪の立証が求められる。外交問題に発展しかねない大事件だけに、失敗すれば、森本宏特捜部長は言うに及ばず、稲田伸夫検事総長引責辞任は避けられないだろう。

 しかし、直接の逮捕容疑が、1億円以上の役員報酬有価証券報告書に記載しなければならない開示を偽っていたという点には首をかしげたくなる。

 有価証券報告書とは、会社の財務諸表や設備、資産の内容などについて監査法人の監査を受けた後、内閣総理大臣に提出する資料。損益計算書貸借対照表など詳細な財務諸表が記され、主には株や社債を売買する投資家が当該企業の財務内容を分析するために使われる。この財務諸表を偽って、実際よりも企業業績をよく見せる粉飾決算は後を絶たず、最近では東芝が長年にわたってパソコン部門などで粉飾していたことが明らかになっている。

 ところが東京地検特捜部は、東芝の明白な粉飾決算については強制捜査に踏み切らなかった。

 一方、日産のゴーン氏とグレッグ・ケリー代表取締役(当時)の2人が問われたのはそうした粉飾ではなく、役員報酬欄の虚偽記載である。

 大手監査法人幹部によると、監査法人がチェックするのは主に損益計算書貸借対照表の財務諸表であって、役員報酬欄については会社側の申告のまま掲載されることが少なくないという。だからゴーン氏が弁護士を立てて争う姿勢を示すと、監査法人側はもめごとを嫌がってあっさり引き下がってしまうわけである。

 しかも、役員報酬の記述を決めた会社法施行規則の121条、124条を読む限り、当該事業年度に受ける見込みの報酬とあるだけで、退職後に支払われる報酬の記載の義務があるとは読み取りにくい(ただし条文とは別の記載事例とする書式には「退職慰労金」の欄がある)。非常に大ざっぱな規定のため、言い逃れをしようと思えばできそうだ。

 役員報酬内閣府令では「会社から受け取る財産上の利益」としているだけで、たとえば会社から住宅の提供を受け、家賃を会社に負担してもらった場合、報酬に入るのかどうか、わかりにくい。この虚偽記載だけでゴーン氏のような大物経済人の逮捕にまで突き進むのは、危うさを感じてしまう。

 容疑を否認し、徹底抗戦しようとすると、延々と束縛する「人質司法」。日本の刑事司法の後進性を示す象徴的な手法である。ふつうの日本人でも前近代性を感じるやり方だけに、人権意識の高い西欧から「やっぱり日本はアジアの後進国」と思われかねない。

 そんな刑事司法後進国の日本においてゴーン氏が頼ったのは、これまた古い捜査手法で知られる元特捜部長の大鶴基成弁護士だった。

 ライブドア事件村上ファンド事件を手がけたことで知られるが、当時、両事件を取材した私は、最初から結論ありきの乱暴な捜査にビックリしたことがある。あらかじめシナリオをつくり、それに合致する証拠や供述で補強していくので、真実とはかなり異なるストーリーができてしまうのである。

 大鶴氏は大分県佐伯市出身でラサール高校から東大に進学。ラサール、東大の同級生は「冗談も言わない。ひたすら勉強。俺の隣の席だったけれど個人的なことは一切言わないで朝から晩まで勉強、勉強、また勉強。都会にはいなかっただろうね。当時の段階で田舎でもかなり珍しかったタイプ」と言い、別の同級生も「まじめで成績優秀、隙のないタイプ。そういう人生を送ってきた人ですよ」と評する。いわゆるガリ勉タイプの人だ。

 パッと見は検事っぽくなく、地味。官舎に夜回りに行った際には、顔なじみの司法クラブの記者ではない私が押しかけたせいか、かなり動揺した感じだった。「ずいぶん気の小さそうな人だな」というのが私の受けた第一印象。痩せて、かなりくたびれたベルトを締め、「取材にはきちんと対応しますから」と言っていたが、結局、「一切取材には応じられない」というお手紙が届いただけだった。「おとなしい子」と叔母。従兄弟も「昔から気が小さく心配ばかりしていた」と言っていたが、なるほど、その通りの印象だった。

 しかし、捜査現場ではそれが一変するのだという。上司だった元高検検事長「自分の弱さを隠すため、権力を笠に着て乱暴な取り調べをする。本人に面と向かって何度も注意したが改まらなかった」と言っていた。後に陸山会事件の虚偽捜査報告書で市民団体から告発されることになったのも、むべなるかな、である。刑事司法後進国の日本を代表する検察官だったと言えよう。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2018/11/30/200150(須網隆夫早稲田大学教授「司法試験合格で法律家になれるという歪んだ考え」)

 〈百円紙幣模造事件〉では対応に当たった警察官が被告人に注意を促していたのですが、かりに「この程度は模造紙幣ではないから、適法だ」とアドヴァイスを行っていたとしたら、それを聞いた被告人はもとより、一般人もまたそれが法的に禁止されている「模造紙幣」だと認識できないでしょうし、その場合は故意はなかったとして処理されるべきだと思われます。しかし、警察官が「この程度なら形式的には条文に該当するが、処罰されることはない」と説明していたならば、模造紙幣製造罪の故意は認められることになりますが、結果的に刑事責任を問うべきかどうかはかなり微妙な判断になってくるように思われます。

 このように考えると、ゴーン容疑者らの場合は、ケリー容疑者が金融庁に対して行った質問の具体的な内容と、金融庁からの回答の具体的な中身が問題になってきます。この点の詳細は不明ですので断定的なことはいえませんが、全体の報酬額を含めて作成について問い合わせをしていたとすれば、その金額の大きさから判断すると、金融庁が、有価証券報告書の虚偽記載罪に形式的に該当する(つまり、故意はある)が刑事責任を問われるおそれはないと回答したとは考えにくく、端的に「虚偽記載には当たらない」と回答したのではないかと推測されます。だとすれば、彼らが「記載義務を認識していた」とする特捜部の主張には無理があるように思われますし、有価証券報告書虚偽記載罪の故意を認めることじたいが、かなり難しくなってくるのではないかと思います。

blog.goo.ne.jp

東京地検特捜部は、ゴーン前会長が実際の報酬との差額を退任後に受け取ることが確定していたとみて調べていますが、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が、1億円以上の役員報酬の開示が義務づけられた平成22年以降、退任後に支払う報酬を具体的に記した合意文書を毎年作成していたことが関係者への取材でわかりました。

また日産の会長を退任する時期について複数のシナリオを想定した文書も日産内部で作成され、支払う報酬の額や名目などが具体的に検討されていたということです。

退任時期についての検討は遅くとも4年ほど前から始まり、日産の会長とグループの統括会社「ルノー・日産BV」の会長を同時に退任するシナリオや、日産の会長を退任した2年後に統括会社の会長を退任するシナリオなどが検討されていたということです。

特捜部はこうした文書が前会長の退任後の報酬が確定していたことを示す証拠の1つとみて調べているものとみられます。

一方、関係者によりますとケリー前代表取締役は「文書はゴーン前会長を日産につなぎとめるために作成したが、退任後の報酬は正式に決まっていなかった」などと主張しゴーン前会長とともに容疑を否認しているということです。

 受託収賄罪などで有罪が確定した鈴木宗男衆院議員は否認を続けた結果、437日間勾留された。一方、村上ファンド事件の村上世彰(よしあき)氏は容疑を認め、起訴の3日後に保釈された。

 ゴーン容疑者とケリー容疑者はともに容疑を否認しており、このまま起訴に至れば「証拠隠滅の恐れがある」として起訴後も勾留が長期化する可能性がある。

 11月29日に開かれた東京地検の定例記者会見では、「勾留が必要な根拠は何か」などと欧米メディアの記者から勾留を疑問視する質問が相次いだが、久木元(くきもと)伸・次席検事は「国ごとにそれぞれの制度がある。自分の国と違うからと簡単に批判するのはいかがなものか」と反論した。

 検察関係者は「日産社内で圧倒的な権限を持ち、口裏合わせなどの証拠隠滅の恐れも国外逃亡の恐れも十分ある。世界的な経営者だからといって特別扱いとはならず、勾留の長期化は避けられないだろう」との見方を示している。