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「報道されていた不動産の私的使用問題は、購入した不動産が会社名義になっているため、会社への損害を立証しなければならない特別背任は難しい。特捜部もそのことはわかっていたはずです。だから、この間、マスコミに立件できない疑惑を次々流してゴーン=悪者のイメージを流布させる一方で、日産の全面協力をえて、特別背任につながるネタを必死で探していた。しかし、結局、立件できるようなネタは見つからなかった。でも、いまさら後戻りはできない。それで、同じ虚偽記載で再逮捕したということでしょう」(全国紙司法担当記者)

 この国策捜査説には当初、具体的な根拠は全くなかったのだが、ここにきて、安倍政権と日産クーデーター、そしてゴーン逮捕をつなぐ接点が次々と浮かび上がっているのだ。

 そのひとつが、ゴーン不正追及の動きが逐一、菅義偉官房長官に伝えられていたとの見方だ。いま、さまざまなメディアで、日産内部にゴーンの不正を調査していた極秘調査チームがあったことが報道されているが、中心人物と名指しされてるのが、専務執行役員で弁護士資格も持つマレー系イギリス人のハリ・ナダ氏と同じく専務執行役員で、広報担当を務めていた川口均氏。このコンビが最初に動いて情報を集め、弁護士、検察との間で計画を詰めていったといわれている。

 ところが、そのひとりである川口氏が、菅官房長官と非常に親しい関係にあるのだ。

「日産の本社は横浜ですから、地元選出の大物政治家である菅官房長官とは会社ぐるみで関係があるんですが、川口さんは特別です。なんでも、川口さんが横浜商工会議所の副会頭になった頃から付き合いらしいですが、この数年は、頻繁に連絡をとりあって、会食や会合を重ねていた。社内では“川口さんの後ろ盾は菅さん”というのは共通認識になっていましたから。ゴーンの件も、菅さんに事前に相談していなかったとは考えにくい」(日産関係者)

 国策捜査をうかがわせる接点はまだある。日産の極秘調査チームが自民党に近い弁護士に相談をしながら、検察への告発を進めていたというのもそのひとつだ。

 この弁護士とは熊田彰英氏。特捜部出身のヤメ検だが、今年3月、森友問題の公文書改ざんで証人喚問を受けた佐川宣寿・元理財局長の補佐人として佐川氏にアドバイスをした弁護士。他にも、政治資金規正法違反に問われた小渕優子議員などを担当。“政権の守護神”“自民党御用達”といわれている弁護士だ。

「この熊田氏ともうひとり司法取引に強い弁護士が、検察との間に立って、日産幹部たちの責任が問われずに、ゴーンだけを逮捕するというスキームをつくっていったといわれています。この構図を考えると、官邸に情報が上がっていないわけがない」(全国紙政治部記者)

さらにもうひとり、安倍政権と「日産のクーデター」を結びつけるキーマンがいる。それは、今年6月から日産の社外取締役をつとめる経産省OBの豊田正和氏だ。豊田氏は、同省の事務次官に次ぐNo.2である経済産業審議官、内閣官房参与なども歴任した大物OBである。

 実は、ゴーン逮捕以降、豊田氏は社外取締役という立場であるにもかかわらず、新聞記者が取材に押しかけており、元朝日新聞編集員の山田厚史氏によれば〈今や「夜の広報担当」といった存在〉(ダイヤモンド・オンライン12月11日)になっているという。

 いったいなぜか。前述したように、豊田氏が日産の非常勤取締役に就任したのは今年6月。まさに、ルノーとの統合や海外移転を阻止するために、経産省が送り込んだ人物なのだ。

「日産はかつては経産省と非常に近く、有力天下り先だったんですが、ゴーン体制になって以降、経産省OBの受け入れていなかった。ところが、6月に豊田氏が突如、非常勤取締役に就任。その半年後に、ゴーン会長が逮捕された。これは、クーデターを前提にした人事としか考えられません。実際、ルノーとの交渉など、日産の今後の方向性は豊田氏が主導するといわれていますから」(前出・全国紙政治部記者)

 しかも、豊田氏は、安倍首相の側近中の側近で、やはり経産省出身の今井尚哉首相秘書官とも近い関係にあるという。

経産省時代は大きな接点はありませんが、今井氏が資源エネルギー庁次長をつとめていたとき、豊田氏はシンクタンク日本エネルギー経済研究所理事長として、今井氏の原発再稼働路線を全面バックアップしていた。今回のゴーン逮捕も、この今井=豊田ラインの連携プレーが大きな役割を果たしたということじゃないでしょうか。直接、検察を動かしたというのはないと思いますが、日産の海外移転を防ぎ、自分たちの影響力を復活させたい経産省が、日産のクーデター組を焚きつけた可能性はおおいにある。そして、こうした経産省や官邸の動きを察知した検察が、強引に捜査に及んだということじゃないでしょうか」(前出・全国紙政治部記者)

日産の代表取締役会長だったカルロス・ゴーン氏が、東京地検特捜部に突然逮捕され、3日後に開かれた臨時取締役会で解職された「日産・ゴーン事件」、起訴事実が、「退任後に別の契約で報酬を受領する合意」を有価証券報告書に記載しなかったという、犯罪に当たるかすら疑問な「罪状」にとどまることがほぼ確実となり、ゴーン氏を解職する「クーデター」を仕掛けた西川廣人社長ら日産経営陣の方が窮地に追い込まれつつある。

一方で、大阪地検特捜部の証拠改ざん問題など、一連の不祥事で、検察改革を迫られ、「引き返す勇気を持つこと」を強調した検察だったが、今回の事件での「大暴走」で「引き返す気」など微塵もないことを露呈した。検察独自の判断でゴーン氏を逮捕・起訴した以上、今後も、なりふり構わず、いかなる手段を使ってでも、有罪判決を得ようと「驀進(ばくしん)」を続けるであろう。

そうした中で、避けて通ることができないのは、今回の事件を、「日本社会」として、そして、「日本人」として問い直してみることである。

90年代末、日産は、それまでの「ぬるま湯」的な企業体質の結果、経営危機に陥り、倒産寸前の状況まで追い込まれた。メインバンクも救済を拒否、経産省からも見放され、世界の主要な自動車メーカーとの提携・統合を模索するも、手を挙げる企業はなく、万策尽きた状況の中、日産に救いの手を差し伸べたのがルノーであった。

ルノーが、大株主のフランス政府からの資金も含めて8000憶円を出資し、日産は倒産を免れた。そして、ルノーから日産の経営者として送り込まれたゴーン氏が、大胆な経営改革でV字回復を遂げ、それ以降、概ね順調に、日産の業績は拡大し、直近の年度では、最終利益7500億円を計上するに至っている。

こうした中で、今回の「クーデター」が起き、ゴーン氏を代表取締役会長の座から引きずり下ろした西川社長は、ゴーン氏について、逮捕直後の会見で、「初期、非常に大きな改革を行った実績は紛れもない事実だと思う。その後については功罪両方ある」などと述べたのである。

あたかも日産という会社が、ルノーから融資を受け、それと同時に、ゴーン氏を経営者として雇って経営を委ねたというのであれば、まだわかる。しかし、そうではない。ルノーは、自らリスクを負って、倒産寸前の日産に巨額の「出資」をし、43%超の株式を取得し、親会社としてゴーン氏を経営者に送り込んだのである。日産社内には「ルノーからの8000億円は、もう返した」という声があるようだが、それは「融資」の場合の話であろう。出資者に対して言うことではない。

こういう日産側の行いは、日本社会では「恩知らず」と言って軽蔑されてきたのではなかろうか。

もう一つ、今回の事件をめぐっては、ゴーン氏の「高額報酬」批判に結び付けようとする論調が目立った。高額報酬を得ていた「強欲・ゴーン」から日産の経営者の地位を奪うことは無条件に正しいことであり、そのためには、検察の権力を使うことも是認されるという考え方だ。

私は、ゴーン氏を擁護しているわけではないし、「高額報酬」を評価する立場にもない。私が論じてきたのは、ゴーン氏について犯罪が成立するのか、それが、ゴーン氏のような立場の人を突然逮捕することを正当化できる悪質・重大なものと言えるのか、ということと、それをめぐる日産現経営陣の行動の正当性の問題であり、ゴーン氏が日産から得ていた高額報酬の是非とは全く別の問題だ。

ところが、ゴーン氏を逮捕した検察やそれを画策した日産経営陣を批判している私を、「ゴーン氏の高額報酬を擁護している」かのように批判する人がいる。ゴーン氏の報酬が、一般的な日本の大企業の経営者の報酬と比較して高額であったことが今回の事件に関連づけられ、それが問題の根本であるかのように考えられている。

今回の事件を、そのようにとらえて良いのか。それは、我々「日本人の品格」にも関わる問題だ。

今回の事件では、高額報酬への「羨望」「不公平感」という庶民的感情を巧みに操って、「ゴーン批判」が増幅されたことで、西川氏ら日産経営陣が、検察の権限を恃んでゴーン氏を日産の代表取締役会長の座から引きずり下ろした「クーデター」が正当化され、それに呼応するように、マスコミと日本社会を挙げての「ゴーン叩き」が行われた。

そこには、日本社会の一つの「負の側面」があるように思われる。

このようなやり方は、古くは日本社会でも、「闇討ち」「寝首を掻く」などという言葉で表現され、「卑怯な計略」とされてきた。しかし、武力で劣る側が、圧倒的に優位な敵を倒す方法として「奇襲戦法」が肯定されることもあり(織田信長の「桶狭間の戦い」など)、太平洋戦争の開戦の際に、大戦果を挙げて賞賛された「真珠湾攻撃」もまさに「奇襲攻撃」であった。

しかし、宣戦布告もしないままの「奇襲」は、卑怯なやり方として、相手方から大きな反発を受ける。実際に、真珠湾攻撃の「奇襲」が米国民の激しい怒りを買い、在米日本人に対する不当な扱いや、その後の戦争での日本への民間人をも対象とする攻撃の理由とされたことも事実だ。

今回、ゴーン氏に重用されて社長の地位につき、自らも直近の期では5億円近くもの高額報酬を得ていた日産社長の西川氏が、ゴーン氏に対して行ったのが、まさに「闇討ち」であった。しかし、それは「検察の正義」という“錦の御旗”に支えられて正当化され、マスコミは、「ゴーン氏高額報酬=強欲」と決めつけ、検察・日産側のリークによる「ゴーン叩き」報道に埋め尽くされた。

20年前、ルノーが巨額の出資をして倒産の危機に瀕した日産を救い、ゴーン氏が大胆な経営改革で同社を再生させたことは「過去のこと」とされ、「強欲な外国人経営者が日本人社員・取引先から不当に収奪している」との見方ばかりが強調される。かつては「名経営者ゴーン」にすり寄り、取材していたはずのジャーナリストが、「ケチ」「せこい」などとこき下す。そこには、強者や富める者が一度その地位から転落すると、社会全体で、水に落ちた犬に石を投げるという、これまでも繰り返されてきた日本社会の「卑しさ」の一面が現れたように思える。

今回の「日産・ゴーン氏事件」を、犯罪の成否、法的責任などとは別に、「恩知らず」、「闇討ち」、「卑しさ」という面から、「日本人の品格」が問われる問題として考えてみる必要がある。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2018/12/15/200430(ゴーン前会長の後任 17日の取締役会での選任見送る方針 日産)

これは、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が16日、伝えたものです。

それによりますと、ルノーでゴーン氏の代行として経営トップに立っているボロレCOO=最高執行責任者が、今月14日付けで日産自動車の西川社長に書簡を送り、この中で「できるかぎり迅速に」株主総会を開催するよう求めました。

書簡は、「今回の事件はルノーのみならず日産との安定した提携関係に著しいリスクを生じさせている」としたうえで、「開かれた透明性のある議論が行われる場として、株主総会が最も適している」としているということです。

報道によりますと、ルノーからの要請に対して日産側から回答は寄せられていないということですが、日産の43%以上の株式を保有するルノーが、大株主として日産の経営への関与を強めようとしているのではないかという見方も出ています。

日本取引所グループの清田CEOは17日、開いた定例の会見で、日産について、「これまでの内部管理体制などに、どんな問題があるのか関心を持っている。日産には投資家への情報開示とともに、私たちへの情報提供を求めている」と述べ、事実関係の確認のため、詳しい情報の提供を会社側に求めていることを明らかにしました。

一方、何らかの処分を検討しているか問われたのに対しては、「情報を精査したうえで、措置が必要かどうかが浮かんでくるだろう」と述べるにとどめました。

日産は、今回の事件を受けて過去の有価証券報告書決算短信の内容を精査して訂正する方針を示していて、今後、日本取引所グループとしても、対応を検討する見通しです。