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TPP=環太平洋パートナーシップ協定は、参加11か国のうち6か国以上が国内手続きを終えたことで発効条件が満たされ、日本時間の30日午前0時に発効しました。

TPPは、域内の人口が5億人、世界のGDP=国内総生産の13%を占める巨大な自由経済圏で、協定の発効により域内の幅広い分野の投資やサービスのルールが統一されたほか、農産品や工業品の輸入にかかる関税も原則として段階的に撤廃されます。

政府は、アメリカのトランプ政権が保護主義的な政策を進めるなか、TPP協定の発効は自由で公正なルールを世界に広げる重要な一歩だとして、今後、参加国の拡大に率先して取り組む方針で、来月19日に日本で開催する閣僚級の会合で具体的な議論を開始したい考えです。

また、来年2月にEU=ヨーロッパ連合とのEPA=経済連携協定が発効することも踏まえ、中国やインドを含む16か国が参加するRCEP=東アジア地域包括的経済連携についても、来年中の妥結を目指し、ルールに基づく開かれた自由貿易体制を強化していきたい考えです。

日本など11か国が参加するTPPが発効したことについて、経団連の中西会長は「経済界としても協定の積極的な活用を促し、日本企業の事業の拡大や経済の活性化につなげていく。今後は残り4か国が速やかに国内手続きを終えることを期待する」というコメントを出しました。

11か国によるTPPが発効したことで、農林水産品など幅広い品目で、関税が撤廃されたり削減されたりします。

このうち日本が輸入する農林水産物は、82.9%の品目で関税が撤廃され、「コメ」は関税を維持しますが、オーストラリアに対して年間で最大8400トンの輸入枠を新たに設けます。

「牛肉」は、これまでの38.5%の関税が27.5%に下がり、15年後の2033年までに段階的に9%まで引き下げます。

「豚肉」は、価格の安い肉にかけている1キロ当たり最大482円の関税を段階的に削減し、9年後の2027年に50円に引き下げます。

「乳製品」では、バターと脱脂粉乳についてTPP参加国を対象に生乳に換算して最大7万トンの新たな輸入枠を設けるほか、チーズは「チェダー」「ゴーダ」などの29.8%の関税を15年後の2033年に撤廃します。

一方、工業製品はすべての品目で関税が撤廃されます。

革製のかばんやハンドバッグなど皮革製品の関税は、10年後の2028年に撤廃されます。

さらに石油製品は、軽油や灯油などの関税が即時撤廃されました。

日本がTPP参加国に輸出する品目では、「日本酒」についてカナダやオーストラリアがかけている関税が即時撤廃されたほか、「牛肉」も、メキシコやチリなどがかけている関税が即時か遅くとも10年後までに撤廃されます。

このほか、輸出される工業製品では最終的に全品目の99.9%で関税が撤廃されます。

国別でみますと、カナダに対しては、乗用車にかかる6.1%の関税が4年後の2022年に撤廃されるほか、オーストラリアに対しては、バス、トラックの新車にかかる5%の関税が即時撤廃されました。

また、1月からTPPの効力が発生するベトナムに対しては、日本からの輸出が多い排気量が3000ccを超える乗用車にかかっているおよそ70%の関税が、9年後の2027年に撤廃されます。

30日の発効で、日本のほか、メキシコやカナダ、オーストラリアなど、6か国で協定の効力が発生しました。

一方、国内手続きが遅れたベトナムは1月14日に発効しますが、マレーシアやペルーなど4か国は発効する時期の見通しが立っていません。

このため今後は、残る参加国がすみやかに手続きを終え、全面的な発効につなげられるかが課題となります。

さらにTPPをめぐっては現在の11か国以外にも、タイやコロンビア、それにEUを離脱する見通しのイギリスなど複数の国や地域が参加する意向を示しています。

こうした中、参加国は1月、閣僚らが集まるTPP委員会を開催し、新規加盟の手続きなどについて議論する見通しです。

当初交渉の中心的な役割を果たしていたアメリカがTPPから離脱した中、今後、参加国を増やし、自由貿易の枠組みを広げることができるかも焦点となります。

オーストラリアはことし10月に国内手続きを終えていて、TPP協定の発効によって主力輸出品の農産物に対する関税の引き下げなどで恩恵を受けることになります。

オーストラリアはすでにTPP協定に参加している多くの国と個別に自由貿易協定を結んでいるものの、今回の発効によって貿易や投資の機会がさらに増え、雇用も増えると期待しています。

とりわけ日本との貿易では、牛肉や小麦それに大麦、乳製品の輸出の増加を見込んでいます。

オーストラリア政府はTPP協定について、2030年までに最大で年間156億オーストラリアドル日本円で1兆2000億円余りの経済的利益につながるとみています。

TPP協定の事務局を務めるニュージーランドは、乳製品や食肉など農産物の輸出拡大に期待していて、とりわけ2国間で自由貿易協定を結んでいない日本やカナダなどとの貿易が促進されることを見込んでいます。

このうち日本とは、牛肉の関税がこれまでの38.5%から段階的に9%に引き下げられるほか、主力産品の1つキウイフルーツで6.4%だった関税がすぐに撤廃されるなど、利益が大きいとしています。

ニュージーランド政府はTPP協定により、最終的には推定で年間およそ2億2200万ニュージーランドドル、日本円にしておよそ165億円分の関税を節約できるとしています。

キウイ農家の男性は「ニュージーランドは海外市場から遠く、関税でも苦労します。平等な条件になればみんなにとってよいことで、すばらしいと思います」と期待感を示しています。

また、キウイの輸出を手がける会社の担当者は「関税撤廃により日本市場でのニュージーランド産キウイの競争力が高まります。地方の人々はキウイ産業に生活や仕事を頼っているので、海外市場でもっと成功できれば農家だけではなく、広く社会にも利益をもたらします」と話しています。

TPP協定の参加国のうち、11月、7番目に国内手続きを完了したベトナムでは、主要産業の1つの繊維業界を中心に輸出が増えるという期待があります。

最大の輸出相手国であるアメリカの離脱によってメリットは小さくなったものの、ベトナムの政府系シンクタンクは、2国間の自由貿易協定を結んでいないカナダやメキシコなどへの輸出拡大のほか、すでに協定を結んでいる日本やオーストラリアなどとの間でも貿易の促進や投資の拡大が見込めるとしています。

ただ、ベトナムの繊維業界の中には、服などに使用する生地の多くが中国から輸入されるなど、関税を引き下げる際の条件となる「原産地規則」への対応が不十分な企業もあり、課題となっています。

ベトナム商工省の高官は「将来、TPP協定の参加国が増えればベトナムにとっての恩恵はさらに大きくなる」と話し、アメリカを含めた今後の参加国拡大にも期待を示しています。

TPP協定の発効で関税が引き下げられるため、アメリカのトランプ政権は、牛肉などの日本への輸出が不利になるとして、来年始まる日米の2国間の貿易協定交渉では、関税の削減や撤廃を求めるなど厳しい要求を突きつける見通しです。

日本は、11か国が合意したTPP協定で、牛肉の場合、現在の38.5%の関税を段階的に引き下げ、協定の発効から16年目には9%に削減することになっています。

このためアメリカの牛肉業界は、TPP協定の恩恵を受けるオーストラリア産の牛肉との間で厳しい競争を強いられるとして、不満をつのらせています。

こうした声を受けてトランプ政権は、日本との2国間の貿易協定交渉で、日本がTPP協定で譲歩した内容を上回る関税の削減や撤廃を求めるものとみられます。

このほか自動車分野の交渉も焦点となっていて、アメリカの自動車業界の労働組合は日本からアメリカに輸出する車の台数に数量規制を設けることや、日本が輸出を有利にするため通貨安に誘導する為替操作を防ぐ条項の導入を求めています。

これらはアメリカが離脱したTPP協定の合意にはありませんでしたが、トランプ政権は日本に対して個別に要求を突きつける見通しで、厳しい交渉が予想されます。

TPP協定には、南米からチリとペルーの2か国が参加し、日本など、アジア地域と農産物などの取り引きが活発になると期待が高まっています。

このうちチリは、日本などアジア向けに鉱物資源に加えて、海産物の輸出が増えることを期待しています。

ペルーも、アスパラガスや、南米原産とされる穀物でタンパク質やミネラルが豊富な「キヌア」などの農産物についてアジア向けの輸出拡大を期待しています。

チリとペルーはともに太平洋の沿岸部に位置しており、TPP協定に参加することで南米のほかの国とアジアをつなぐ中継貿易の拠点になることを目指しています。

一方、チリとペルーではこれまでのところ国内手続きが完了していないためそれぞれの国内手続きが終わってから60日後に正式なメンバーとしてTPP協定に加わることになります。

TPP協定に参加する11か国のうち、これまでに国内手続きが終わっていないのは、マレーシア、ブルネイ、ペルー、チリの4か国です。

このうちマレーシアでは、交渉を推進してきた前政権に対し、ことし5月の選挙で政権交代を実現したマハティール首相が「マレーシアのような小さな国が経済大国と平等に競争できる環境が必要だ」などと述べ、慎重な姿勢を示しています。

具体的には、協定への参加によって拡大が期待されていた電子部品やパーム油などの主要な輸出品目について、アメリカの交渉離脱で期待外れに終わるのではないかと懐疑的な見方が出ています。

また、製造業や建設業などで劣悪な労働環境が社会問題となるなか、マレーシア政府は法律を見直し国際的な労働基準を適用する必要があるため、これまでのところ国内手続きが完了する見通しは立っていません。

TPP協定への参加にはタイをはじめ、イギリスやコロンビアなども意欲や関心を示し、参加国を拡大したい日本も期待を寄せています。

このうちタイは当初、自国に不利な項目があるとしてTPP協定への参加に慎重な姿勢を示していましたが、その後方針を転換し、ことし5月にはソムキット副首相が日本の茂木経済再生担当大臣に直接、参加の意欲を伝えました。

その背景には、TPP協定に参加するベトナムやマレーシアといったほかのASEAN諸国に比べて、輸出競争力や投資の呼び込みで不利になりかねないという危機感があります。

製造業では参加を支持する企業が多く、自動車のシートなどの生地を手がけるメーカーの社長は「タイと個別に自由貿易協定を結んでいないメキシコやカナダへの輸出が増えると期待している。TPP協定に参加しなければ、輸出を伸ばすチャンスを失い、海外からの投資呼び込みでも競争力を失うと思う」と話しています。

ただ、参加に向けては国内の調整も課題で、就業者の40%近くを占める農業などでは、TPP協定は大手種子メーカーの知的財産権を手厚く保護しているため、不利益が及ぶとして反対の動きもあります。

タイでは来年2月に総選挙が行われる見通しで、国内に反対意見もある中、政府は参加表明の時期を慎重に見極めようとしています。

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