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中東で民主化を求める運動、いわゆる「アラブの春」は、2011年3月15日、シリアでもアサド政権の打倒を目指す動きとなって全土に広がります。
アサド政権が、軍や警察を投入して弾圧すると、反政府勢力側も武器を取って抵抗。各地で衝突が激化し、内戦へと突入していきます。


そのさなか、2013年8月、世界に衝撃が走ります。反政府勢力の拠点、東グータ地区で、化学兵器を使った攻撃が行われ、子どもや女性を含む1000人前後が犠牲となったのです。


アメリカは、アサド政権が使用したとして、軍事攻撃に踏み切る構えを見せ、緊張が高まりました。
そこで動いたのが、ロシアです。ロシアは、アサド政権に化学兵器の廃棄を約束させる一方で、アメリカに軍事攻撃を思いとどまるよう説得。これによって、攻撃は回避されました。


内戦の混乱の中で台頭したのが、過激派組織IS=イスラミックステートです。急速に勢力を拡大して、隣国のイラクにまたがる広い地域を支配下に置き、イスラム国家の樹立を一方的に宣言したのです。


内戦は、アサド政権と反政府勢力、そしてISという、三つどもえの戦いに発展しました。国際社会にも大きな脅威となったISに対して、2014年9月からはアメリカが、そして翌年9月からはロシアが、それぞれ空爆に乗り出しました。


さらに地上では、アメリカから支援を受けたクルド人勢力が、ISに対する作戦を開始。去年10月には、ISが「首都」と位置づけてきたラッカを制圧し、ISを事実上の崩壊に追い込みました。


ISに対する作戦と並行して、アサド政権とロシアは、反政府勢力に対しても攻勢を強めます。2016年の12月、5か月の包囲の末、反政府勢力の最大拠点アレッポを完全に制圧。アサド政権の優位が鮮明になりました。


こうした中、去年4月、反政府勢力の拠点である北部イドリブ県で、化学兵器を使った攻撃が報告されます。就任してからおよそ3か月のアメリカのトランプ大統領は、アサド政権によるものと断定し、シリア軍の施設へのミサイル攻撃に踏み切りました。


しかし、この攻撃は、限定的なものにとどまり、アサド政権は、反政府勢力に対する攻勢をさらに強めていきました。


この7年間の内戦での死者は、35万人以上。国外に逃れた難民と国内にとどまる避難民は、合わせておよそ1200万人。
シリア内戦は「今世紀最大の人道危機」とされています。

シリアの内戦の構図を複雑にしているのが、アサド政権や反政府勢力などの後ろ盾となっている大国の思惑です。


アサド政権にとっては、アサド大統領のもとでの体制の維持と、支配地域の回復が最優先です。


シリア人権監視団によりますと、アサド政権は国土の60%近くをおさえています。
アサド政権の進撃を空爆で支援してきたロシアは、国連などを舞台にした外交でも常に後ろ盾となっており、アサド体制を維持させることで中東での影響力を強めようとしています。


また、イスラムシーア派のイランも、精鋭部隊を派遣してアサド政権を支えています。


これに対し、スンニ派サウジアラビアやトルコなどから支援を受けてきた反政府勢力側は、拠点とする地域を全体の10%程度にまで減らしています。最大の拠点の北部イドリブ県と、ほかに残る東グータ地区などは分断され、劣勢を強いられています。


一方、「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれ、ISとの戦いで主軸を担ったクルド人の勢力は、国土の25%以上を押さえています。


アメリカは、まとまりを欠く反政府勢力からクルド人勢力へと軍事支援の軸足を移し、ISが事実上崩壊したあとも、掃討戦は継続中だとして、クルド人勢力と連携を続けています。イスラエルと敵対するイランの動きをけん制する狙いもあると見られます。


トルコは、シリアのクルド人勢力に対し、トルコ国内でテロを繰り返してきた武装組織と深いつながりがあるとして、ことし1月にシリア北部に越境して大規模な軍事作戦を始めました。


治安上の脅威となり、トルコ国内で独立を求める動きも刺激しかねないと危機感を抱いているからです。同盟国であるアメリカと対立が深まるのも辞さない構えで、反政府勢力の後見人としてロシアやイランとともにシリアの内戦後を見据えた外交も活発化させています。

シリアで長引く内戦の終結に向けて、国連の安全保障理事会は、2015年に政治的な解決に向けた決議を採択しましたが、進展はほとんど見られない状況です。


国連の安保理決議では、アサド政権と反政府勢力の対話を実現し、移行期の暫定政権を樹立して、新憲法制定の手続きを進め、国連の監視の下、選挙を行って新たな政権を樹立することになっています。


しかし、アサド政権と反政府勢力の間の不信感は根深く、これまでの和平協議で直接の対話は一度も実現せず、国連の特使を仲介にした間接的な協議にとどまっています。


反政府勢力は、前提条件として、アサド大統領の退陣を強く主張しているのに対し、アサド政権側は絶対に応じられないとして協議は進展していません。


こうした中、アサド政権を支援するロシアが主導してことし1月、南部のソチで会議を開き、新しい憲法づくりに向けた双方の代表による委員会を設置することで合意しました。


アサド大統領の処遇をめぐる対立を棚上げして進展を図ろうという狙いがあると見られますが、この間も軍事的に優位な政権側は、実力で反政府勢力側の支配地域を奪い返しており、政治的な解決の機運は全く高まっていないのが実情です。

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http://d.hatena.ne.jp/d1021/20180313#1520937829