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 被疑者・被告人に憲法上保障された権利ではあるが、実際に請求され実施されるケースは非常に少ない(全勾留状発付件数の1%にも満たない)。

 一般的に、勾留理由開示公判が開かれても、勾留事実が読み上げられ、「逃亡のおそれがある」「罪証隠滅のおそれがある」などと、勾留の理由が抽象的に示されるだけで、被疑者、弁護人側にとって、あまりメリットがない。そのため、通常の事件では、弁護人が、勾留理由開示請求という手続があることを意識し、それを請求するかどうかを、被疑者との接見で相談すらしない場合も多いと考えられ、それが請求件数が少ない理由だと思われる。

 では、数少ない勾留理由開示公判の請求というのは、どのような事件で、どのような目的で行われるのか。

 かつての過激派の公安事件がそうであるように、逮捕当初から、被疑者、弁護人が逮捕・勾留事実について、無罪を主張して検察と全面的に争っていく方針が確定している場合、特に、政治家等有名人の事件で、逮捕直後からのマスコミの「有罪視報道」によって、被疑者が有罪であり、極悪人であるかのようなイメージが拡散されている場合、勾留理由開示公判で、被疑者が、支持者・支援者やマスコミの前で、自分が無実であることを明確に主張することには、大きなメリットがある。

 勾留理由開示公判は、「接見禁止によって家族との面会ができない状況に置かれている被疑者を公判廷に立たせることで、傍聴席に来た家族に元気な姿を見せる」という目的で行われる場合もある。しかし、一方で、被疑者は、公開の法廷に、手錠・腰縄という姿で登場することになるため、「犯罪の疑いで身柄を拘束されている者」という強いイメージを持たれてしまうのが、社会的地位のある人間にとって耐え難いということがある。家族に対しても、そのような姿をさらしたくないと考える者もいる。

 そういうこともあり、これまで、特に、社会的地位のある者が逮捕勾留されることが多い特捜部の事件では、ほとんど行われた例がなかった。

 そういう意味では、今回、ゴーン氏が、勾留理由開示請求を行い、公判に出廷することになったのは、手錠・腰縄姿で公開の法廷に出ることで、「国際的な経営者」のイメージが傷つけられるというデメリットがあっても、自己の主張を堂々と述べ、無実を主張することのメリットが、それを上回るとの判断があったであろう。

 ゴーン氏としては相当な覚悟を持って決断したはずだ。

 ゴーン氏が、開示公判で述べることは、それまでの検察側の見方ばかりを報じてきたマスコミとしては、「対等報道」の観点(検察側と、被告人弁護人側の主張を、対等に扱うこと)からも、相当詳細に紹介することになるはずだ。新聞・ネット記事では全文掲載されるであろう。

 そのように考えると、ゴーン氏が、勾留理由開示公判の場で、自らの主張を堂々と述べることの意義は非常に大きいと言えよう。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2019/01/04/200430(ゴーン前会長みずから出廷の意向 勾留理由開示を求める)