大阪地裁 3か月間に24人の勾留取り消し #nhk_news https://t.co/qI8XVQ0cZh
— NHKニュース (@nhk_news) April 17, 2019
容疑者や被告の身柄を拘束しておく勾留は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあることなど、要件が厳格に定められていますがおととしの全国の統計では検察の勾留請求を裁判所が許可した割合は96%に上っています。
こうした中、大阪弁護士会は去年、勾留されることが決まった人について準抗告という手続きで審査のやり直しを求める取り組みを3か月間、試験的に行いました。
大阪地方裁判所で、勾留を許可した裁判官とは別の3人の裁判官が改めて検討した結果、準抗告した36人のうち詐欺や窃盗などの疑いが持たれていた24人の勾留が取り消されたことが分かりました。
「必要性がなかった」という理由が最も多く、中には「罪を犯した疑いがない」とか「検察の書類に不備がある」と判断されたケースもあり、少なくとも10人は釈放後に不起訴となったということです。
取り組みを中心的に進めた藤原航弁護士は、「裁判所が本来は厳しい勾留の要件を緩やかに解釈して検察の請求をそのまま認めていた実態が明らかになった」と指摘しています。
犯罪への関与を疑われ、一定期間、社会から隔絶される勾留は、その人のその後の生活にも大きな影響をもたらします。
建設会社に勤めていた関東地方に住む30代の男性は去年、オレオレ詐欺グループの一員とみなされて大阪府警に逮捕され、4週間近く勾留されました。
男性は逮捕されるまで建設会社の正社員として足場の組み立てを担当し、仕事の受注や発注業務も任せられるなど職場での信頼も厚く、目標としていた独立も決まっていました。
仕事も順調な男性が逮捕されたきっかけは、足場の仕事が少ない期間に知人から紹介を受けた、1日1万円の電話かけのアルバイトを始めたことでした。
男性が指定されたマンションの部屋を訪れると2人の男から名簿を渡され「電話をかけて住所や名前の読み方などの確認だけしてほしい」と指示されました。
翌日も電話をかけていたところ、昼すぎに突然、警察の捜査員たちが入ってきて男性は訳がわからないまま逮捕されました。この部屋はオレオレ詐欺グループの拠点で、男性はグループが相手をだますのに使う情報を確認するための電話をかけさせられていたのです。
犯罪組織に加担していたとは全く知らなかった男性は、事情を説明しましたが信じてもらえず、グループの一員とみなされて勾留されることがすぐに決まりました。
それからの取り調べではいくら否認しても「認めないかぎり終わらない」などと自白を迫られ続けたといいます。
その後、大阪弁護士会が当時、取り組んでいた準抗告の申し立てによってようやく勾留が取り消されました。
勾留を許可した裁判官とは別の3人の裁判官が改めて検討した結果「罪を犯したと疑うに足る相当な理由はない」と判断されたのです。男性はその後、不起訴となり、事実上、詐欺グループとは無関係だったことが明らかになりました。
男性は職場に復帰しましたが、26日間も勾留されたことで、それまで築き上げてきた信頼を失い、決まっていた独立の話も立ち消えとなりました。
そして職場に居づらくなった男性は会社を辞めざるをえませんでした。男性は「逮捕され、勾留されたことでレッテルを貼られ、周囲の信用を失い、生活や生き方が変わってしまった。検事や裁判官は人ひとりを勾留することの重みをよく考えて判断してほしい」と話しています。
38年間、裁判官を務めた安原浩弁護士は、裁判所が勾留を許可する割合が極めて高い背景について、自身の経験も踏まえたうえで「刑事裁判では、検察の主張が認められて99%の確立で有罪になることから、裁判官が被告の供述よりも検察の証拠や説明のほうが間違いないだろうという『有罪慣れ』の状態に陥っている。このため身柄拘束についても、検察官の請求を安易に受け入れて勾留を許可する決定を出す体質があると考えられる」と話しています。