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毎年50万人余りが受験する今の大学入試センター試験は来年が最後となり、再来年1月からは「大学入学共通テスト」が始まります。

このうち英語は書く力と話す力を新たに測定するため、7つの民間事業者による検定試験が導入されます。

再来年1月の受験生は来年4月から12月にかけて、これら民間試験を2回にわたって受け、そのスコアが受験する大学に提供される仕組みです。

試験開始まで1年を切り、今週、民間事業者が試験の日程や会場などの概要を相次いで公表するなど、準備が進められています。

文部科学省は民間試験の採点について、受験生が在籍する高校の教職員を除くこと以外、条件をつけていませんが、取材すると、海外の委託業者や学生のアルバイトも採点者として認めていました。

そのため採点の質の確保や信頼性に懸念を示す専門家や学校関係者もいます。

英語の民間試験の利用方法をめぐって、大学の対応も分かれています。

大手進学塾のまとめでは、82ある国立大学のうち、民間試験を合否判定に利用する大学は筑波大学広島大学など38校、出願資格などとして利用するものの合否判定には使わない大学は39校です。

このうち東京大学京都大学など8校は出願資格としての提出を任意としています。

一切利用しない大学は北海道大学東北大学など3校。

まだ具体的な方針を公表していない大学が2校となっています。

文部科学省は「各大学の方針は尊重するが民間試験を活用する方向で検討してもらいたい」としています。

7つの民間事業者による検定試験の具体的なスケジュールは、第1回となる再来年1月に共通テストを受ける人たちの場合は、来年4月から12月の間に、これら民間試験のうち希望したものを2回受けます。

そのスコアは大学入試センターを通じて受験する大学に提供され、各大学の判断で出願資格や合否判定に使われます。

民間試験の実施から4年間、つまり2024年1月までは従来どおり大学入試センターによる英語の試験も実施されますが、2025年以降については未定だということです。

入試制度に詳しい東京大学高大接続研究開発センターの南風原朝和・前センター長は「どこの国のどんなレベルの人が採点するのかがブラックボックスとなっていて、採点の公平性や質の確保の観点で懸念がある。国は民間事業者に対して受験料は下げて採点などの質は上げるよう求めているが、それは矛盾している。大学によって活用に差があるのはこれらの試験を信用していないことの表れで、それぞれの大学が影響を小さくする方法を考えているのが実情だ。民間に任せることの弊害として国が実態を確認し、対策を考える必要がある」と話しています。

西日本の高校で英語を教えている教員は去年、生徒が受けたある民間試験の採点に疑問を持ちました。

「地域をきれいにするためにできることは何だと思うか、1つ取り上げて理由を書きなさい」という英作文の問題で、生徒の解答用紙には「I think to inportant」としか書かれておらず、文法や単語のつづりも間違っていました。

この教員は、過去に民間試験の採点に関わった経験があり、自身ならば「0点」にすると言いますが、業者から返ってきたスコアは160点満点中41点だったということです。

この試験の採点はアジアなど複数の国の業者に委託するなどして行われているといいます。

この教員は「自分の能力を測定するだけの検定試験なら、生徒のやる気を損なわないため、多少甘い採点もあり、かもしれない。しかし、入試に使われると思うと、満点の4分の1もの点が付いているのは疑問だ。本番でもきちんと採点が行われるか不安があるし、ある試験の採点がやさしいと評判になったらそこに受験生が殺到して結果的に公平な評価にならず問題だ」と話しています。

民間試験を実施する7つの事業者は、採点者の基準やその公表方針が、それぞれ大きく異なっています。

▽「ケンブリッジ英語検定」は、大卒以上で英語教育に関する資格を保持し、英語の指導歴が3年以上などとしています。

▽「TOEFL iBT」は、大卒以上で英語の指導経験があるなどとしています。

▽「IELTS」は、大卒以上で英語教育に関する資格を保持し、英語の指導歴が3年以上などとしています。

▽「TOEIC」は、大卒以上で英語教育に関する資格を保持し、一定期間の指導経験があることなどとしています。

ベネッセコーポレーションが実施する「GTEC」は、海外の英語を話す人で、採用試験に合格した者、などとしています。

▽「英検」、「TEAP」、「TEAP CBT」は、いずれも日本英語検定協会が実施していますが、採点者は国内・海外を問わないが、応募資格などは「機密事項」につき公表できないとしています。

採点以外にも課題が指摘されています。

1つは異なる試験によるスコアをどこまで公平に平準化できるかです。

この手段として国は、国際的にも使われている「CEFR」という指標を用いるとしています。

しかし、目的や手法も異なる試験のスコアをどこまで公平に評価できるのか、問題視する意見が根強くあります。

また、試験によって受験料がまちまちで、6000円ほどから高いものでは2万5000円を超えるものもあります。

大学入試センターに提出できるスコアは2回ですが、練習で試験を受けることも可能です。

このため、家庭の経済状況や地域によって受験機会に格差が生じることも懸念されています。