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安倍総理大臣は17日、台風19号で甚大な被害を受けた福島県宮城県を訪れ、大量の水が市街地に流れ込んだ現場や避難所の小学校などを視察しました。

このあと、安倍総理大臣は宮城県丸森町で記者団に対し、「災害のすさまじい爪痕を目の当たりにし、避難所では被災者の皆様から大変つらい気持ちや不安な思い、困難な状況について話をうかがった。政府としては、引き続き、行方不明者の捜索やライフラインの復旧などに全力を尽くしていく」と述べました。

そのうえで、「被災者の皆様の人権を守り、生活再建に向けた動きをしっかりと後押ししていく」と述べ、今回の災害を、被災者に行政上の特例措置が適用される「特定非常災害」に指定する考えを明らかにしました。

「特定非常災害」に指定されれば、運転免許証の更新時期を過ぎても有効期間を延長できるほか、債務超過に陥った場合でも一定期間、破産手続きが開始されずに済むようになります。

「特定非常災害」には、これまで阪神・淡路大震災新潟県中越地震東日本大震災熊本地震のほか去年の西日本豪雨が指定されていて、今回で6例目となります。

官房長官は午後の記者会見で、特定非常災害の指定について、「被災者の皆さんが一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻すことができるように、指定に向けて速やかに準備していきたい」と述べました。

また、菅官房長官は、群馬県八ッ場ダムが水害の発生防止に果たした役割について、「今回の台風では利根川周辺でも記録的な大雨になったが、八ッ場ダムに加えて既存ダムも活用し、雨水をためたことにより、下流の越水を回避することができたと思う。特に八ッ場ダムは洪水調整用に使える容量が極めて大きく、災害を防ぐために極めて大きな効果があった」と述べました。

「特定非常災害」とは被害の規模が大きく日常生活や業務などに大きな支障が出ているため、国が法律に基づいて被災者の権利や利益を保護する必要があると判断した災害を指定します。

「特定非常災害」に指定されると、一定期間、行政が定めた許認可の期間が延長されるなどの特例措置が取られます。

具体的には以下のとおりです。対象となるものや地域、延長される期間はそれぞれ異なるので注意が必要です。

自動車の運転免許証の有効期間や建設業の許可などの期限を延長することができます。最大6か月の延長期間内にかぎり運転や業務を続けることができます。

会計報告書など法律によって義務づけられている行政への届け出が一定期間、免除されます。免除期間は最大4か月で、この間に届け出れば行政上・刑事上の責任を問われません。

災害によって債務超過に陥った場合でも一定期間、破産手続きが開始されずに済みます。

被災した地域に住所があるか、あるいは災害によってその地域から移転せざるを得なかった相続人を対象に、相続するか放棄するかを考えるための期間が延長されます。

被災した人や事業所などが災害に関連した民事調停を起こす際の申し立て手数料が免除されます。

民間の信用調査会社、東京商工リサーチは16日までに上場企業が公表した台風19号の事業への影響をまとめました。

それによりますと、一時的な店舗の休業などを含めると何らかの影響があったのは40社です。このうち34社は、建物や生産設備が浸水したり壊れたりする被害を受け、事業に影響が出ているとしています。また、12社は、水にぬれるなど製品が被害を受けたり、工場の操業停止や物流網の混乱で出荷に支障が出たりしているとしています。

自動車メーカーのSUBARUは取引先の部品メーカーが被災して部品を調達できなくなったため、16日の午後から群馬県にある車の生産工場の操業を停止しています。

ラップフィルムなどの日用品を製造するオカモトは、福島県いわき市にある工場のほぼ全体が浸水し操業を停止しています。在庫の商品も被害を受けたということです。

信用調査会社では、「物流の停滞や部品の供給不足が長期化すると部品の調達網、いわゆるサプライチェーンを通じて全国的に影響が波及することも懸念される」としています。

今回の台風19号では、福島県を中心に企業の工場の被災が相次いでいるほか、こうした企業から部品が調達できなくなったことで、直接被災していないメーカーにも影響が広がっています。

パナソニックは、電子部品の基板の材料を生産する福島県郡山市の工場が浸水したため、操業を見合わせています。

この工場で生産している製品は自動車やモバイル機器など、幅広い用途に使われているということで、会社は、被害状況の確認や復旧作業を急ぐとともに、出荷への影響も調べています。

今回の台風では、直接被災していないメーカーにも部品の調達網、いわゆるサプライチェーンを通じて影響が広がっていて、フォークリフトを生産する豊田自動織機は部品の調達ができなくなったことから、愛知県高浜市の工場で16日から生産を停止しています。

少なくとも18日までは操業を止めるということです。

さらに、自動車メーカー、SUBARUも、取引先の部品メーカーが被災して部品が調達できなくなったため、16日から群馬県にある車の生産工場の操業を停止しています。

会社は今月25日の操業再開を目指しています。

台風19号では、上信越自動車道の一部の区間で通行止めが続いているほか、JR貨物の列車にも運休が多く出ていて、メーカー各社は、自社のサプライチェーンへの影響を慎重に見定めています。

国土交通省によりますと、台風19号による豪雨で浸水した面積は、およそ2万3000ヘクタールに及び、去年7月の西日本豪雨のおよそ1万8500ヘクタールを超えたということです。

今回の豪雨では、河川の決壊についても、去年の西日本豪雨の25河川37か所を大きく上回っています。