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アメリカでは黒人男性が警察官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、警察の対応は人種差別的だとして各地で抗議デモが続いています。

こうした中、全米各地で過去にさかのぼって歴史上の人物を人種差別だと批判する動きが広がっています。

このうち南部アラバマ州で先月末、デモの参加者が南北戦争当時、奴隷制度の存続を主張していた南部連合の司令官の像を引き倒しました。

また9日には南部フロリダ州ジャクソンビルで、市長の指示で南部連合の記念碑が撤去されました。

さらに同じ9日、南部バージニア州では抗議デモの参加者たちが15世紀にアメリカ大陸に到達した探検家のコロンブスの像を「人種差別を見逃さない」として池に投げ込み、アメリカメディアが大きく取り上げています。

また10日にも東部マサチューセッツ州ボストンで、コロンブスの像の頭部が何者かに持ち去られ、アメリカでは抗議デモが続くにつれて人種差別や人権侵害に関する批判や反発が歴史上の人物にも向けられるようになっています。

アメリカのモータースポーツで最も高い人気を誇る自動車レース「NASCAR(ナスカー)」は、南北戦争当時、奴隷制の存続を主張した南軍の旗について、レースを含むすべてのイベントで使用を禁止することを決めました。

これはナスカーの統括団体が10日、声明を発表して明らかにしました。

それによりますと、「ナスカーのイベントに南軍旗が存在することは、すべてのファンが分け隔てなく楽しめる環境を提供するというわれわれの責任に反する」として、今後、関連するすべてのイベントや敷地内での使用を禁止するとしました。

ナスカーアメリカで最も高い人気を誇る自動車レースで、会場ではこれまで南軍の旗も多く掲げられていましたが、アメリカのメディアによりますと、黒人の有力選手が会場への旗の持ち込みを禁止するよう統括団体に求めていました。

南軍の旗をめぐっては、地域の伝統だと考える人がいる一方で、人種差別の象徴だという批判も強く、一連の抗議デモが続く中で先週にはアメリ海兵隊が掲揚しないことを決めています。

風と共に去りぬ」は南北戦争に揺れるアメリカ南部を舞台に主人公スカーレットの人生を描いた映画で、1939年に公開され、アカデミー賞を獲得するなど不朽の名作とされています。

アメリカの動画配信サービス「HBO Max」は9日、「作品は、残念ながら、当時のアメリカ社会の風潮だった民族や人種に対する偏見が含まれている」としてこの映画の配信を停止したと発表しました。

アメリカでは、黒人男性が白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件をきっかけに各地で抗議デモが広がり、有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは「全米で広がる人種差別への抗議デモをうけてエンターテインメント業界にも内容を再考する兆しが出ている」と指摘しています。

「HBO Max」は作品の配信を再開する場合は歴史的な考察や差別的な描写への非難を合わせて掲載したうえで、オリジナルのまま伝えるとしていて「何か手を加えれば偏見の存在自体を否定してしまうことになる」とコメントしています。

アメリカではこのほか、警察の働きぶりを描いたリアリティ番組の放送が中止になるなど事件をきっかけに偏見や差別の問題に神経をとがらせる動きが広がっています。

アメリカでは人種差別への抗議活動が広がるなか、南北戦争当時、奴隷制を支持した南軍の将軍の名前に由来したアメリカ軍施設の名称を変えるべきだという声が広がっていて、アメリカ陸軍は8日、「議論を始める用意がある」という声明を出しました。

これを受けてトランプ大統領は10日、名称変更を求める声が出ている施設に言及したうえで、アメリカはこれらの神聖な施設で英雄たちを訓練して送り出し、2度の世界大戦で勝利した。私の政権では伝説的な基地の名称の変更など検討する余地もない」と強調しました。

トランプ大統領としては大統領選挙もにらみ保守層に訴えるねらいがあるとみられますが、アメリカでは南軍の将軍の銅像や記念碑を撤去するなど人種差別の歴史をさかのぼって抗議の声をあげる動きも広がっていて、トランプ大統領の姿勢には反発も出そうです。

トランプ大統領は10日、ホワイトハウスにみずからへの支持を表明する黒人の団体の幹部や著名人を招いて会合を開きました。

この場でトランプ大統領は、経済を活性化させ刑事司法制度改革を進めてきたと主張したうえで「われわれは黒人のコミュニティーのために多くのことを成し遂げた」と述べました。

アメリカでは黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、人種差別に抗議する声が広がる中、一時、軍を投入する構えも示したトランプ大統領の言動には「人種差別の問題に向き合っていない」などという批判が相次いでいます。

こうした中、人種差別をめぐる問題は、5か月後に迫った大統領選挙の争点にも浮上していて、トランプ大統領の今回の会合には、黒人に寄り添う姿勢を示して事態の鎮静化を図りたいという思惑もうかがえます。

一方、トランプ大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてことし3月以降、見合わせていた大規模な支持者集会を、来週19日に南部オクラホマ州で開く考えを明らかにしました。

世論調査では野党・民主党のバイデン前副大統領がリードしていて、トランプ大統領としては集会を機に巻き返しを図る考えとみられます。

一方、秋の大統領選挙で野党・民主党の候補者指名が確定しているバイデン前副大統領は10日夜、全米有数の人権団体「全米黒人地位向上協会」のインターネット上の集会に参加し、「今こそ警察改革を実行すべき歴史の転換期だ」と述べて、警察組織の改革の必要性を訴えました。

またバイデン氏は3年前、バージニア州で白人至上主義などを掲げるグループとこれに抗議するグループが衝突した事件をめぐる当時のトランプ大統領の発言に言及し、「大統領は双方によい人たちがいたと言ったがとんでもないことだ」と述べて非難しました。

そのうえで、「大統領は当選以来、この国を分断させようとしてきた。人種差別を助長するような行動をしている」として、トランプ大統領の政治姿勢を厳しく批判しました。

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