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 そのように良好だった日韓関係に慰安婦支援を標榜する挺対協(現・正義連)が水を差した。2011年12月14日、ソウルの日本大使館前に慰安婦像を設置したのだ。道路を管理するソウル市鐘路区は設置を許可せず、設置後も撤去や移動を求めたが、設置を強行した挺対協が従うことはなかった。

 このときは良好な関係維持に尽力した日韓両政府だったが、翌年、決裂することになる。

 2012年8月10日、李明博元大統領が韓国大統領としてはじめて竹島に上陸し、日韓関係に亀裂が走った。上陸計画を事前に知った日本政府は韓国政府に中止を申し入れたが退けられた。野田政権は武藤正敏駐韓国大使を即日帰国させた。

 少し前の2011年10月、日本銀行と韓国銀行は30億米ドル相当だった円-ウォン通貨スワップを300億米ドル相当に増額していた。増額部分は1年ごとの更新が見込まれていたが、関係悪化を受けて期限が到来した12年10月31日、一度も更新することなく終了し、ベースとなった円-ウォン通貨スワップも13年7月の期限とともに終了した。

 2013年2月、朴槿恵前大統領が就任し、両国民は関係改善に期待を寄せた。彼女は日韓基本条約を締結した朴正煕元大統領の娘であり、また日本贔屓で知られている。しかし、実際は違っていた。朴前大統領は13年5月の訪米以降、告げ口外交を展開し、その米国で同7月に韓国外初の慰安婦像が設置された。

 政府間がギクシャクすると民間交流も悪化の道を辿った。朴槿恵元大統領が告げ口外交をはじめた頃、観光業を中心に関係改善を求める声が広がったが、徐々に小さくなっていった。爆買いの中国人旅行者が急増し、訪韓日本人が減ってもそれ以上に中国人がお金を落とすようになったのだ。

 14年7月には日本人ご用達だったロッテホテルが、在韓日本大使館主催の自衛隊創設60周年記念レセプションを前日になってキャンセルした。一方的な通告を受けた日本大使館は、会場を日本大使公邸に移して事なきを得たのだが……。

 一方、「中国人民解放軍建軍87周年記念レセプション」は、その2週間後に予定通りロッテホテルで行われた。ロッテホテルの宿泊客は2013年まで日本人が45%を占めていたが、2014年は25.7%に減り、15%だった中国人は30%近くまで倍増する。

 翌15年に入ると、日韓の葛藤は国際舞台に場所を移した。

 福島原発の事故を受けて各国は日本産食品の輸入を制限したが、時間が経つに連れて制限を緩和し、あるいは解除する国が増えていった。そのなかで、韓国は輸入制限を強化した。

 日本政府は15年5月、韓国の輸入制限強化を世界貿易機関WTOに提訴した。それに対し、韓国はユネスコの諮問機関「イコモス」が勧告した軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を阻止する運動を開始した。

 雪解けの気配が見え始めたのは15年11月だった。同月1日に3年半ぶりとなる日中韓首脳会談がソウルで行われ、翌2日に安倍首相と朴前大統領が日韓首脳会談を行なった。

 日中韓首脳会談は2008年の日本を皮切りに各国持ち回りで行われてきたが、2012年に中国北京で開催された後、日韓関係と日中関係が悪化して中断していた。日韓の首脳会談は2014年3月26日に当時の米オバマ大統領が主催した日米韓首脳会談以来だった。

 同2015年12月、日韓両政府は慰安婦問題で合意し、翌16年8月、日本政府は合意に基づいて10億円を送金した。韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」は合意した時点で存命だった46人に1人当たり1億ウォン(約970万円)を支給し、合意以前に死去した199人の遺族に2000万ウォン程度を支給することを決めた。11月には日韓秘密軍事情報保護協定GSOMIAを締結するなど関係改善の兆しが見え始めた矢先、ふたたび慰安婦団体が妨害したのである。

 合意から丸一年となる2016年12月28日、釜山の市民団体が日本総領事館前の歩道に慰安婦像を設置。日本政府は慰安婦合意に反するとして撤去を求めた。道路を管理する釜山市東区はすぐに像を撤去したが、30日には一転して設置を許可。日本政府は対抗措置として長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事を一時帰国させた。

 本来は韓国政府が対応すべきところだが、直前の16年12月9日に朴槿恵前大統領が国会の弾劾議決を受けており、首相に相当する黄教安国務総理が代行していた。大統領に権限が集中する韓国で国務総理の権限は限られ、政府は機能不全に陥っていたのだ。

 在韓大使の不在は3か月近く続き、その間、大使館は臨時代理を務める鈴木公使のもと、メール等で長嶺大使の指示を仰ぎながら大使不在の長期化に対応する体制を整えた。当時、筆者は鈴木公使と趣味仲間だったが、会うたびに疲れていく様子が見て取れた。

 17年3月10日、韓国憲法裁判所が朴前大統領の罷免を決め、5月10日、文在寅政権が誕生した。文在寅大統領は、朴槿恵前政権を断罪する流れで慰安婦合意の破棄を掲げたが、それ以外に反日姿勢を見せることはなかった。

 文大統領は7月7日、G20が行われたドイツ・ハンブルクで安倍首相と首脳会談を行い、2009年を最後に中断していた日韓首脳が相互に相手国を訪問するシャトル外交を復活させることで合意するなど雪解けムードが復活した。

 そして、民間交流も活発化した。2017年の訪日韓国人は700万人を超え、訪韓日本人と訪日韓国人の合計は945万人となった。日韓往来1000万人時代が目前に迫ったのだが、文在寅はやはり問題人だった。

 陽徳(ヤンドク)の国際温泉リゾート事業は、もともと、北朝鮮が外貨稼ぎの一環として行っている「美人局」の女性が端緒になったといわれています。喜び組に所属する「キム某」という女性が接待対象の外国人実業家から、金正恩の興味を引きそうな温泉観光リゾート計画の提案を受け、そのことを上層部に報告したのです。

 その上層部は「中央党9局」という部署。「国際温泉マニアグループ会長」といういかにも怪しげな肩書きを名乗る外国人実業家は、北朝鮮平安南道という郡にある最高泉質の温泉地に国際的な基準を満たす温泉リゾートを作れば、自分たちが温泉好きの富裕層を呼び込む」と提案。中央党9局は件の実業家に会い、プランの実現性と収益構造を多角的に検討し、彼の身元確認まで済ませたとのことです。

 事業提案は、9局の管理組織である中央党を経て、最終的に金正恩に報告されました。金正恩はかねてリゾート開発としては「元山カルマ観光特区」に集中投資してきたのですが、結果は芳しくなく、虎の子である手持ちの米ドルも底をつこうとしていました。

 追加投資に対して消極的であった金正恩を側近たちは「必ず大ヒットする」と根気強く説得。崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員会委員長までもが強く主張したため、しぶしぶゴーサインを出しました。

 とはいえ、あまりにも巨額の資金が必要なため、下手をすれば金正恩の外貨金庫は完全に干上がってしまう危険性もあります。国際基準を満たすために投じた額は2億ドル近かったそうですから。

 最終的に国際温泉リゾートの建設地を陽徳郡の石湯(ソクタン)温泉に定めました。近隣の元山カルマ観光特区と連携すれば、大きなシナジー効果を生むという算段があったのでしょう。2019年12月7日、金の卵を産むはずという野望の下、陽徳国際温泉リゾートを竣工しました。

 しかしながら、不幸にもそれは金正恩にとって金の卵を産むガチョウではなかったようです。国際基準を満たす温泉リゾートを建設したものの、海外からの観光客を誘致すると豪語していた外国人実業家からは突然連絡が途絶え、彼らは行方をくらませてしまいました。

 本来なら2019年12月から、毎月数百人規模でまずは海外の温泉マニアを招待してアピールすることになっていたそうです。連絡が途絶えた国外の実業家を捜す一方で、リゾート施設を遊ばせておくわけにもいかず、国内のテレビで宣伝すると共に、半強制的に利用客を集め始めました。

 結局、2020年1月10日、国際温泉リゾートはオープンしましたが、1日に数百人が来るはずだった外国人観光客は、ただの一人もいません。異常事態を把握した金正恩は、中央党と中央検察所に指示を出して合同調査団を組み、海外パートナーであった外国人実業家に対する徹底した調査を行いました。

 そして、調査報告を聞いた金正恩は怒り狂ったそうです。彼らは国外の実業家を装った情報機関メンバーであり、金正恩の外貨金庫の米ドルを無駄に使わせて空にするのが目的であったことが明らかになりました。

 中央検察所は、中央党9局に所属する女性工作員「キム某」を2週間以上に亘って調査したと発表しました。彼女だけでなく、少しでもプロジェクトに関わりがあった者はすべて当局に拘束されたとのことです。

 合同調査団は、調査過程で、陽徳温泉リゾートの建設において金正恩の革命資金(と言っても要するに違法行為で作った金庫の米ドル)が適正に使われたかも調査しました。その中で、スキー場などの施設だけでなく、広範囲に亘って水増し価格が適用され、工事が行われていたことが発覚しました。

 加えて、建設指揮部の幹部と建設部隊の将校らが巨額の金を着服した事実も明らかになっています。金正恩の革命資金の着服は罪状をさらに重くします。主導した5人は、家族も含めみな政治犯収容所に入れられました。党の革命資金に目をつけ、横領した者たちの運命がどうなるのか、見せしめにしたということです。

 2月29日には党政治局会議を開き、李万建(イ・マンゴン)と朴泰善(パク・テソン)の両副委員長らは不正と腐敗の罪名で解任・更迭、崔竜海最高人民会議常任委員会委員長には厳重警告を与えるなど、今回はかなり大規模な粛清であったといいえます。

 調査は現在も進行中ですが、今後どれだけ多くの側近たちが粛清対象になるかはわかりません。ひとつ確かなのは、外貨への執着と貪欲さを放棄しない限り、金正恩は今後も自ら災いを招くことになるということでしょう。

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