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アメリカの調査機関「ピュー・リサーチセンター」は、ことし4月から5月にかけてと今月上旬に、それぞれ成人1万人余りを対象に、新型コロナウイルスのワクチンがすぐに接種できるとした場合どうするか、インターネットを使って調査しました。

その結果、4月から5月の調査では、「おそらく接種しない」と「絶対接種しない」が合わせて27%だったのに対し、今月の調査ではこれが49%に増えたということです。

最も多い理由は「副作用の懸念」で、次に多かったのは「どの程度効果があるのかもっと知りたいから」でした。

アメリカでは以前から、ワクチンそのものの安全性や効果に否定的なグループが学校でのワクチンの義務化に反対したり、接種を拒否したりする活動を行っています。

さらに11月の大統領選挙を前に、トランプ大統領がワクチンの実用化を急ぐ姿勢を見せる一方、野党・民主党のバイデン候補らは政権が規制当局に圧力をかける可能性があるとして、安全性や効果を慎重に検証すべきだと主張していて、こうした動きは政治的な対立にとどまらず、ワクチンの安全性や効果に対する不信感につながっているという指摘が出ています。

社会心理学が専門で、アメリカの反ワクチン運動に詳しいイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のドロレス・アルバラシン教授は「ワクチン対する不信感の広がりはパンデミックに立ち向かう上で大きな問題だ。ワクチンをめぐる混乱が原因で副作用を懸念したり、情報がなかったりする人たちに対して、キャンペーンなどを通じて科学的に正しい情報を広く知ってもらう必要がある」と話しています。

アメリカでは、新型コロナウイルスのワクチンが使えるようになった場合、会社や学校などで接種を事実上、義務づけるべきか検討が始まっていますが、接種の義務化は個人の自由の侵害だとして保守層を中心に反対する人たちもいます。

東部マサチューセッツ州ボストン近郊の町では、今月26日、店舗の営業制限やマスクの義務化に反対する集会が開かれ、ワクチンの接種の義務化に反発する人も多く参加しました。

この冬、アメリカでは、新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に流行するおそれがあると言われていて、この州では新たに、子どもたちにインフルエンザワクチンの接種を事実上、義務づけることにしたのです。

新型コロナウイルスのワクチンについて聞いたところ、参加していた40代の女性は「接種は個人の選択であるべきで、義務化すべきではない。新型コロナウイルスのワクチンは安全性の確認が不十分だ」と話していました。

また、家族で参加した50代の女性は「個人的には新型コロナウイルスのワクチンは接種したくないし、子どもにも受けさせない」と話していました。

さらに別の女性は「インフルエンザで義務化を認めれば、次は新型コロナウイルスのワクチンが義務化される。政府には自分の体のことを決める権限はない」と話していました。

集会を主催した保守系政治団体の代表を務めるジョン・ヒューゴさんは「新型コロナウイルスの脅威は誇張されている」などと話し、新型コロナウイルスのワクチンの義務化には反対するとしています。

トランプ米大統領は前回の選挙戦で、「雇用に関してこれまでで最も偉大な大統領になる」と大見えを切った。

  4年後の今、同氏は第2次世界大戦以降で任期の4年間に雇用を減らした初の大統領として1期目を終えようとしている。

  新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)は記録的長期に及んだ米景気拡大を終わらせ、少なくとも1940年代以来の急激な景気後退を引き起こした。その結果、トランプ氏の就任から今年8月までで米雇用者数は470万人の純減となり、失業者は1300万人余りに上っている。ニューヨーク市とシカゴ、ヒューストンの人口を合わせた数にほぼ相当する。

  しかし、新型コロナの前でも、トランプ時代の雇用増加はオバマ前大統領の2期目とほぼ同等のペースでしかなく、2016年の選挙戦で言及した次の10年で2500万人の雇用創出というトランプ氏の約束には届いていなかった。

  10月2日には11月3日の大統領選挙前で最後の雇用統計が発表される。エコノミストは非農業部門の雇用者数85万9000人増と8.2%への失業率低下を予想している。これは失業率低下ペースの鈍化を意味し、雇用者数は新型コロナ危機前の水準を約1100万人下回ることになる。

  数字はトランプ大統領民主党大統領候補のバイデン前副大統領が、米経済を再生させる次期大統領としてどちらが適任かを議論する際の材料になるだろう。

  雇用の質の問題もある。17年1月-20年2月までに創出された民間部門の雇用の41%は娯楽、接客、教育、医療などの職だったが、これらの分野の週給は平均で1000ドル(約10万6000円)足らずと低い。

  米民間部門の雇用の質を示す指数はオバマ2期目の大半の期間で着実に上昇したが、トランプ時代に入って低下し、19年4月には過去最低を記録した。

原題:
Trump’s Jobs Record Fell Short of Promises Even Before the Virus(抜粋)

トランプ大統領1期目のそれぞれの評価は

トランプ大統領
「私ほど3年半の間に多くのことをやってきた大統領はいない。新型コロナウイルスの感染が広がるまで経済の状況は最もよく、失業率は最も低かった。また、宇宙軍の創設などアメリカ軍の再建に取り組んだ」と述べ、大きな成果をあげたと強調。
そのうえで「前政権ではちゃんとした医療保険制度がなかったため、30万人以上が死亡した」などと前オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏を批判した。

【バイデン氏】
「この大統領のもとではわれわれは弱体化し、貧しくなり、分断され、より暴力的になってしまう。私はかつて副大統領として経済を立て直したが、トランプ氏は再び不況をもたらした」と反論。
さらに「私はロシアのプーチン大統領に対して彼のやり方は受け入れないとはっきり伝えたが、トランプ氏は何も言えない、プーチンの犬になっている」と述べ、現政権の外交姿勢を痛烈に批判した。
所得税疑惑” トランプ大統領否定「数百万ドル払った」
トランプ大統領は、大統領選挙で当選した2016年と就任した年の2017年は国への所得税の納税額がいずれも750ドル、日本円でおよそ7万9000円だったと報じられている。

トランプ大統領
「数百万ドル払った。すぐに分かるだろう」と疑惑を否定。

【バイデン氏】
「彼が納めた税金は学校の教師より少ない。史上最悪の大統領だ」などと非難した。

経済政策は

トランプ大統領
「われわれは史上最高の経済を築いたが、中国からの感染症のために経済活動を止めざるを得なかった。経済活動の再開後、1000万人余りの雇用が戻っており、誰も見たことのないような回復をしているが、バイデン氏は再び経済活動を止め、国を破壊してしまうだろう」と、みずからの政策の効果を強調。

【バイデン氏】
トランプ大統領は金融市場しか見ておらず、新型コロナウイルスによる死者が急増しているのに経済活動を再開させると言い張っている。ウイルスの危機を何とかしなければ経済を回復させることはできない」
「私の経済政策は700万人の雇用の創出と1兆ドルの経済効果が見込める」とアピール。
さらにトランプ大統領が行った法人税率の引き下げについて
法人税率は21%でなく、28%であるべきだ。主要な500社の中には多額の稼ぎをあげながら全く税金を支払っていない企業が多くある」と述べた。

トランプ大統領
「バイデン氏の政策が実行されれば、アメリカから半分の企業が出て行き、見たことのないような景気後退に陥るだろう。私は製造業で70万人の雇用を回復させた」

連邦最高裁判所判事について

アメリカ社会に大きな影響を与える連邦最高裁判事トランプ大統領は亡くなったリベラル派の判事の後任に保守派の判事を指名した。議会上院で承認されれば判事9人のうち6人を保守派が占めることになるが、野党・民主党は選挙結果を待つべきだと批判している。

トランプ大統領
「新たに指名したバレット氏はすばらしい人物だ。われわれは前回の選挙に勝ったので、彼女を選ぶ権利がある」

【バイデン氏】
「国民は最高裁判事を選ぶにあたり意見を述べる権利がある。選挙は国民の声を反映する機会だが、今回はすでに投票を済ませた人も多くいる。選挙結果を待つべきだ」
新型コロナウイルスへの対応
アメリカ国内では新型コロナウイルスへの感染でおよそ700万人が感染し、20万人を超える人が亡くなっている。

【バイデン氏】
「大統領は新型コロナ対策で何の計画も持っていない。2月にはこのウイルスが深刻な危機で、命に関わる病気だと知っていたのに私たちに言わなかった。私は3月に計画を作り、7月にも人々が外出し、ビジネスを守り、学校を再開させるために何をすべきかの対策を示した」

トランプ大統領
「バイデン氏の言うことを聞いていたら国境が開かれたままになり、もっと多くの人々が亡くなっていただろう。専門家も民主党の知事たちも私がすばらしい仕事をしたと言っている。私たちはマスクなどを確保し、ワクチンが得られるまであと数週間だ。バイデン氏にはこのようなことはできなかっただろう」

ワクチンについて

【バイデン氏】
「私たちは大統領ではなく科学者を信頼している。製薬会社は、ワクチンの提供は来年のはじめか、半ば以降になると言っている」

さらに激しいやり取りが

【バイデン氏】
「大統領がもっと賢くないかぎりさらに多くの人が命を落とす」

トランプ大統領
「いま『賢い』と言ったのか?私に対して二度とそのことばを使わないでくれ。あなたは何ひとつ賢くないし、47年の政治活動の間、何も成し遂げていない」

人種問題の対応は

黒人男性が白人の警察官による取り締まりで死亡した事件などを受けて選挙の争点の1つにもなっている人種差別問題についても取り上げられた。

【バイデン氏】
トランプ大統領ホワイトハウスの前で行われた平和的な抗議デモに対し、警官隊を出動させ催涙ガスまで使った。あらゆる手段で憎悪を生み出し、人種差別的な分断を引き起こそうとしている」と批判。

トランプ大統領
オバマ前大統領の時代にも黒人が死亡する事件が相次いでいたと主張し「オバマ前大統領の政権下で大きな分断があった。いま、私が見ている以上に暴力的だった」と述べたうえで、「法と秩序」にのっとって問題の対応にあたっていると強調した。

また、黒人に対する差別が構造的に残っていると指摘されている警察の改革について

トランプ大統領
「バイデン氏は予算の削減について言及している。彼は法の執行機関からまったく支持されていない」と批判。

【バイデン氏】
予算の削減について真っ向から否定したうえで「ほとんどの警察官は立派だが、そうではない人もいるので、何かが起きた時には説明責任を求めたい。さらには透明性を確保できるよう、体制を変えていきたい。われわれは皆同じアメリカ人であり、団結することで人種差別を乗り越えることができる」と述べ、警察や人権団体などと協力して改革に取り組んでいく姿勢を示した。

オバマケア”について

オバマ前大統領が導入した医療保険制度、いわゆる「オバマケア」についても激しい議論が交わされた。
オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏が、新型コロナウイルスの感染が依然として深刻な状況であることを受けて拡充を訴えるとトランプ大統領が割り込む。

【バイデン氏】
オバマケアを拡大すべきだ」

トランプ大統領
「それは社会主義者の保険制度だ」
バイデン氏と民主党が左寄りだという主張で揺さぶりをかけた。

オバマケア」をめぐっては、トランプ大統領のもとで連邦最高裁判所の保守化が進めば廃止されるおそれがあると指摘されているが、討論会でトランプ大統領は司会から「オバマケア」に代わる政策について問われた。

トランプ大統領
「医薬品の価格を下げるよう友好国と取り組んでいる。これはどの大統領も取り組んでこなかったことだ」

【バイデン氏】
「彼が言っていることはすべてうそだ。大勢の人からオバマケアの恩恵を取り上げようとしている」と厳しく批判。

トランプ大統領
オバマケアは保険料が高すぎてよくない。われわれは個人の加入の義務をなくした」と実績を強調。

【バイデン氏】
「彼は医療保険制度について何も計画を持っておらず、何も考えていない」と改めて批判した。

環境政策

トランプ大統領
アメリカはいま二酸化炭素の排出量がこれまでで最も少ないが、私は経済を壊していない。これに対して『パリ協定』はひどいものだ」と述べ、アメリカ経済を守るためにも地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱は必然だと主張した。

また西部カリフォルニア州などで起きている山火事と地球温暖化との関連を指摘され
「それは森林管理の問題だ。ヨーロッパでは森林を管理し、維持しているがカリフォルニア州では毎年、広大な土地が焼けている」
と述べ、温暖化とは切り離して考えるべきだと主張した。

【バイデン氏】
自分が大統領になったらまずパリ協定からの離脱を取りやめるとしたうえで「私は再生可能エネルギーのコスト削減に努め、石炭や石油と同じぐらい安くした。アメリカにこれ以上、火力発電所を作らせず再生可能エネルギーへの移行を進める」と主張。
そのうえで、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることなどを目指す「バイデン計画」を推し進め、雇用を新たに創出することで温暖化対策と経済活動の両立をはかると強調した。

郵便投票の是非めぐって

トランプ大統領は今回の選挙で大幅に増加する見通しの郵便投票が不正につながると主張している。これについて司会者が次の大統領の正当性をどう担保するか質問した。

【バイデン氏】
「郵便投票が不正につながる根拠はない。あなたの1票で結果が決まる。期日前投票をできるならば、そうしましょう。対面での投票ができるならそうしましょう。彼(トランプ大統領)に投票を止めさせることはできないので、一番よい方法で投票してほしい」と呼びかけた。

トランプ大統領
「トランプと書かれた票が小川やごみ箱に捨てられているのが見つかっている。票を売る配達員もいるようだ。かつてない不正が起きるだろう。郵便投票では投票日の11月3日以降に届く票も有効になるところがあり、何か月も結果が出ないかもしれない」と主張した。

また、司会者が法廷闘争の可能性を質問すると

トランプ大統領
「あってほしくないが、最高裁判所が票を確認することを期待している。公正な選挙であれば受け入れるが、多くが不正な票であれば受け入れることはできない」と述べ、不正の疑いがあれば選挙結果を受け入れない可能性を示唆した。

【バイデン氏】
「法廷闘争に発展することを心配している。票の集計が終わり、勝者が決まったら、それで選挙は終わりだ。私は選挙結果を受け入れるし、彼も受け入れるべきだ」と述べた。

アメリカメディアの評価は

今回の討論会についてアメリカのメディアはトランプ大統領が討論会のルールを守らずバイデン氏の発言にたびたび割り込む一方、バイデン氏も時に乱暴な物言いをしたとして、一様に「混とんとしてとっちらかっていた」とか「史上最低の討論会だった」などと評価しています。

一方、勝敗についてはバイデン氏がわずかにトランプ大統領を上回ったという分析が目立っています。

このうち有力紙ワシントン・ポストは「トランプ大統領が自爆し、討論会も台なしにし、バイデン氏が勝利した」と評価しています。

ニューヨーク・タイムズは「トランプ大統領はまだ投票先を決めかねている有権者に対して自らの指導力を証明しようと努力せず、バイデン氏は大統領としてあるまじき態度だとトランプ氏を批判した」とする一方、勝者は明示しませんでした。

ウォール・ストリート・ジャーナルは「バイデン氏はもともと討論会のパフォーマンスを期待されていなかったが予想以上に説得力があり、トランプ大統領の攻撃に反撃する場面もあった」と指摘しました。

ABCニュースは有名キャスターが「40年間、大統領候補者による討論会を見ている経験からいって、今回は史上最低の討論会だった」と表現しました。

また別の記者は「両者ともが負けた討論会だったが、本当の敗者はこの討論会の場を使って選挙戦の方向を変えなければならなかったトランプ大統領だろう」と分析しました。

CNNは討論会を視聴した568人の有権者を対象に電話で回答を聞き取った世論調査結果を公表し「有権者の60%がバイデン氏が優勢だったと回答し、トランプ大統領が優勢だったと考えた有権者は28%だった」と伝えています。

ただ前回、2016年の大統領選挙の討論会では1回目のあとの同様の世論調査民主党クリントン氏が優勢だったと評価した人は62%で、共和党の候補者だったトランプ氏が優勢だと回答した人は27%にとどまり、その後の討論会でもトランプ氏はクリントン氏を上回ることはできませんでしたが、選挙では勝利しています。

一方、トランプ大統領が好んで視聴する番組の司会者で「大統領の側近」とまで言われているFOXニュースのショーン・ハニティ-氏は「弱く混乱したバイデン氏が、トランプ大統領によって圧倒されていた」とコメントしました。

アメリカ大統領選挙に向けたトランプ大統領とバイデン前副大統領の初めてのテレビ討論会は29日、中西部オハイオ州で行われ、両氏は90分余りにわたって激しい論戦を交わしました。

このなかで大きな争点となっている新型コロナウイルス対策を巡りバイデン氏がトランプ大統領について「彼は何もしなかった。いまだに計画がない」と述べて対応が不十分だと批判したのに対し、トランプ大統領は「ワクチンが得られるまであと数週間だ。あなただったらできなかっただろう」と反論しました。

また大統領選挙の結果を受け入れるかどうかについてバイデン氏は「私は勝っても負けても結果を受け入れる」と述べましたが、トランプ大統領は郵便投票に言及し「大惨事だ。結果は何か月たってもわからないかもしれない」として明言を避け、法廷闘争の可能性も示唆しました。

討論会ではトランプ大統領が何度もバイデン氏や司会者の発言を遮って一方的に持論を主張し、司会者が「質問をさせてください」とか「ルールを守ってください」と制止する場面もありました。

一方のバイデン氏もトランプ大統領を「うそつき」とか「最悪の大統領」と述べるなど非難や中傷の応酬となり討論はたびたび中断しました。

今回の勝者について一部のメディアは直後の世論調査でバイデン氏を評価する有権者が多かったと伝えましたが、ABCテレビは勝敗の前に「討論と言えない」とか「これまでで最もひどい討論会だった」としたほか、FOXニュースも「疲れるけなしあいだった」と表現し、討論の様相への否定的な評価が目立っています。

投票日まで1か月余りとなるなか両候補は来月15日と22日にも討論会で対決する予定ですが、世論調査でリードするバイデン氏が勢いをつけるのか、それともトランプ大統領が巻き返すのかが焦点です。

アメリカの社会問題に詳しい慶應義塾大学渡辺靖教授は、今回の討論会を振り返り、バイデン氏が優勢だったと分析しました。

理由について、渡辺教授は、「バイデン氏が当選した場合、これまでで最も高齢での大統領就任となるため、その健康状態が1つの注目点だったがきょうの討論会で不安を払拭できたのではないかと思う。トランプ大統領に途中で話を遮られてもバイデン氏は失笑してかわしたり、反論すべきところは反論したりして、総じてうまく対応していた。また、途中でトランプ大統領のことをあえてこの人、この男と呼んでカウンターパンチを出す部分もあり、弱々しいバイデン、寝ぼけたジョーというイメージを払拭できた」と述べました。

一方、トランプ大統領については、「やつぎばやに話を遮ったり個人攻撃を仕掛けたりと、余裕がない感じがした。議論を錯乱する戦略だったかもしれないが、そこまで強いカウンターパンチは作れなかった。バイデン氏が言い間違うなど、反論できないシーンを作りたかったが、バイデン氏の受け答えが予想以上にしっかりしていた」と指摘して、支持率でバイデン氏にリードされているトランプ大統領は、巻き返しにつながるような場面は作れなかったという認識を示しました。

さらに、討論会全体について、「本来、討論会は、政策論議の場だが、感情のもつれが全面に出ていて、アメリカの現状の分断を示唆しているように見えた。これまで両者が主張したことの繰り返しで、そこから深く論戦を繰り広げる場面はなかった。予想された範囲でのコメントが多く、流れを大きく変えることはなかった」と指摘しました。

また、バイデン氏の目線が頻繁にカメラに向けられていたと指摘し、そのねらいについて、「有権者により強く訴えようとしていた。トランプ支持者からすると、トランプと目を合わさないバイデン氏の弱さと感じる可能性があるが、バイデン支持者からすると、トランプの挑発にのらず、あくまで有権者のほうをみていた指導者と好意的に受け止めたと思う」と話しました。

アメリカ大統領選挙の演説や討論会を研究している明治大学鈴木健教授は今回の討論会を振り返り、トランプ大統領が優勢だったと評価しました。

理由について、鈴木教授は「どちらを支持するか決めていない人は、テレビを見終わったときの印象で最終的に決めることが多い。トランプ大統領の場合は、後半で経済の実績を強調したり、バイデン氏を激しく攻撃したりと多少、強引でも結果的に相手を押しているという印象を視聴者に与えることができた」と指摘しました。

一方でバイデン氏については、「ゆっくりとした話し方で、相手の攻撃を笑ってやり過ごすなど、冷静な印象を与える戦略はよかったと思う。前半は政権の新型コロナウイルス対策を批判して、トランプ大統領が論理的に説明できない場面があるなど、バイデン氏が優勢に進めたが、後半はややアピールに欠けるところがあったのではないか」と評価しています。

そのうえで、「大統領選挙は祭りのようなもので、有権者を熱狂させられる人が当選する傾向にある。また、アメリカでは現在、新型ウイルスの感染拡大により悪化した失業率が改善しつつある状況なので、どちらを支持するか決めていない有権者にとって、新しい大統領を選ぶことはリスクをとることになる。バイデン氏が有権者に対して自分のほうが経済を改善できるとアピールできないかぎり、今後もトランプ大統領が有利なまま進むのではないか」と分析しています。

アメリカの現代政治が専門の上智大学の前嶋和弘教授は、今回の討論会を振り返り、双方が自分たちへの支持固めに終始して政策論争が深まらず、勝ち負けがつかなかったと評価しました。

理由について、前嶋教授は、「さまざまな政策について話されたが、相手の言ったことに対してすぐに反論していて政策論争が深まらず、全体的に何が話されていたか覚えていない。ただ、議論は全くかみ合っていなかったものの、自分たちの支持者に対しては個々の政策をアピールしたという意味で甲乙付けがたい」と述べました。

そして、討論会の性質がこれまでとは変わってきていると指摘し、「かつての討論会はまだ誰を支持するか決めていない人に向けて政策論争をする場だったが、いまは自分の支持者へのアピールに終始し、分極化の時代だと感じた。反対側へのメッセージはほとんど何もないので、無党派の人も心が揺れないという感じだと思う」と述べました。

そのうえで、「2回目、3回目の討論会では答えにくい質問に対しても答えざるをえない場面がでてくるはずなので、もう少し議論は深まるはずだ。残りの討論会に加え、オンラインや戸別訪問などの地道な戦略で無党派層がどれだけ動くのか、また、大統領選挙の勝敗を左右するとされる『激戦州』の中でまだ迷っている人がどちらを支持するかがポイントになる」と述べ、今後の討論会でどこまで深い議論ができるかがカギとなるという考えを示しました。

討論会では人種差別問題でも議論が交わされましたが、アメリカのメディアはその際、トランプ大統領が白人至上主義を明確に非難しなかったと大きく報じています。

トランプ大統領は討論会で司会者から「白人至上主義者や武装集団のメンバーを今夜この場で非難し、暴力的な行為に加担しないように言う準備はありますか?」と問われました。

これに対してトランプ大統領は「もちろん」と言いながらも議論の矛先をかえるような発言を繰り返しました。

このため司会者と民主党のバイデン候補が改めて明言するよう求めたのに対し、トランプ大統領は「具体的にどの団体を名指しすればいいか?」と聞き、バイデン氏があるグループに言及するとこのグループに呼びかけるように「後ろに下がり、待機せよ」と述べました。

メディアや市民団体によるとこのグループは白人至上主義を掲げ全米各地で続く人種差別への抗議デモに銃などで武装して対抗する行動をとり、問題視されているということです。

トランプ大統領の一連の発言について、複数のメディアは名指しされたグループのメンバーらが白人至上主義と暴力的な行為を暗に支持したと受け止めただろうとしたうえで「トランプ大統領は白人至上主義者を明確に非難しなかった」と批判的に伝えています。

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米大統領選候補者による第1回討論会を前に、民主党候補のバイデン前副大統領が討論会でひそかにイヤホンを装着する計画だとのうわさがソーシャルメディアなどインターネット上で拡散している。バイデン陣営は否定した。

  このうわさはフェイスブックツイッターで多数に共有されたほか、陰謀論を広める右派サイト「QAnon(キューアノン)」が広めている。右派メディアのFOXニュースやブライトバートも取り上げた。

  トランプ陣営の広報ディレクター、ティム・マートー氏は29日の声明で、バイデン氏の側近は討論前の電子イヤホンのチェックに数日前に同意していたが、この日になって突如、見解を翻したと述べた。バイデン陣営は注意をそらすようなものにすぎないとし、疑惑を否定した。

原題:Earpiece Furor Jolts Social Media Before Debate: Campaign Update(抜粋)

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