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ノルウェーオスロにある選考委員会は、日本時間の9日午後6時すぎ、ことしのノーベル平和賞に国連のWFP=世界食糧計画を選んだと発表しました。

WFPは、ローマに本部を置き、1961年に設立された食糧などの人道支援を目的に創設された国連の機関です。

WFPは去年、88の国と地域の1億人近くに対して、緊急物資の配布や栄養状態の改善のための取り組みを行いました。

ノーベル賞の選考委員会によりますと、紛争が続き食糧事情が困難なイエメンやコンゴ民主共和国、それにナイジェリアなどでは、ことし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も加わり、飢えに苦しむ人の数が急増しており、
WFPは活動を強化しているということです。

国連は、世界で飢えに苦しむ人の人数を、2030年までにゼロにする目標を掲げていますが、現在もおよそ7億人は食べ物の確保が困難で、WFPは各国政府や民間団体が一丸となって取り組まなければ目標は達成できないと訴えています。

国連機関のノーベル平和賞の受賞は、これまで
▽UNHCR=国連難民高等弁務官事務所や、
UNICEF=国連児童基金
ILO=国際労働機関などが受賞していますが、
▽WFP=世界食糧計画の受賞は初めてです。

ことしのノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画が選ばれた瞬間、WFPのトムソン・フィリ報道官はスイスのジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で記者会見中でした。

国連の関係者からメモを渡され受賞したことを告げられると、フィリ報道官は「とても誇りに思います。ノーベル平和賞の候補にあがったことだけでも十分だと思っていました。私自身、ジュネーブに来る前には南スーダンで仕事をしていました。WFPのすばらしいチームの一員であることをとても誇りに思っています」と述べ、喜びをあらわにしていました。

WFPは、ノーベル平和賞に選ばれたことを受けて、ツイッターにメッセージを投稿し「2020年のノーベル平和賞に選んで頂き、深く感謝したい。平和と、飢餓ゼロが結びついていることを、世界に強く思い起こさせてくれる」とコメントし、世界から飢えをなくす取り組みの重要性を改めて訴えました。

選考委員会は授賞理由の中で「国際的な連帯と多国間協調の必要性はかつてないほど求められている」としたうえで、WFPについて「飢餓との闘いに努め、紛争の影響下にある地域で和平のための状況改善に向けて貢献し、さらに、戦争や紛争の武器として飢餓が利用されることを防ぐための推進力の役割を果たした」と評価しています。

そして、新型コロナウイルスの感染拡大によって、飢餓に苦しむ人が世界中で急増していると指摘し、「WFPは『ワクチンができる日まで、食料こそが混とんに立ち向かう最もいいワクチンだ』とし、世界的な大流行の中でその取り組みを強化するため、めざましい努力をしてきた」としています。

さらに、「ことしの授賞によって、飢餓に苦しんだり、その脅威にさらされたりしている何百万もの人たちに世界中の目が向いてほしい。WFPは食料の安全保障を平和の手段とするための多国間協調の中で重要な役割を果たし、アルフレッド・ノーベルの遺志にある国家間の友愛を発展させるために日々、貢献している」としたうえで、「人類全体の利益のためのその努力は、世界のすべての国が支持し、支援すべきものだ」と結んでいます。

ことしのノーベル平和賞に選ばれたWFP=世界食糧計画は、アフリカや中東など各地の紛争地で、危険で困難な状況にいる人々に食料を届け、「命をつなぐ」活動を続けてきました。

世界では2000年代に入り、民族や宗教の違いを背景にした内戦や武力衝突が各地で増え、戦闘が市街地などに拡大し戦火に巻き込まれる一般市民が急増していて、国外に逃れた難民や国内で避難する人たちに緊急の人道支援を行うWFPの役割は重要さを増しています。

WFPの活動は、アフリカのソマリアコンゴ民主共和国の東部など、戦闘が続いて国家機能が失われている危険な地域でも行われています。

スタッフがテロや戦闘に巻き込まれたり、食料を運ぶトラックが襲撃されたりするなど、その活動は、まさに命がけになることもあります。

また、近年は、気候変動の影響で農業生産が打撃を受けているアフリカのサハラ砂漠の南側のサヘル地域の国々での活動にも力を入れ、このうちブルキナファソでは、農地の改良なども支援しています。

世界で十分な食事を取ることができず飢餓に苦しむ人は世界人口の9%近くにあたる6億9000万人近くに上ります。

地域別にはアジアが最も多く、3億8000万人を超えているほか、アフリカも2億5000万人を超えています。

国連の報告書によりますと、2000年代の中頃に8億人を超えていた世界の飢餓人口は、新興国での経済成長や農業生産の拡大などもあって減少傾向にありましたが、2014年以降、再び増加に転じています。

その大きな原因が各地で続く武力紛争で、アフリカの南スーダンや中東のイエメンなど内戦や戦闘が続いてきた国では、子どもを含む多くの市民が十分な食事をとることができなくなっています。

また、気候変動の影響も深刻で、アフリカのサハラ砂漠の南にあるサヘルと呼ばれる地域の国々では、干ばつや豪雨によって農業生産が打撃を受け、食料不足に拍車をかけています。

国連では、2030年までに世界から飢餓を一掃する目標を掲げていますが、このままでは人類が飢餓との闘いに打ち勝つのは困難だとして、各国に対策と支援を強化を呼びかけています。