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核兵器禁止条約は、核兵器の使用が武力紛争の際に適用される国際法に反するとして、その開発、保有、使用などを禁じる条約で3年前の2017年7月、国連で122の国と地域が賛成して採択されました。

条約は50の国と地域の批准が発効の要件となっていて、国連の幹部はNHKの取材に対し、24日、50番目となる批准書を中米のホンジュラスが国連に提出し、受理されたことを明らかにしました。

これにより、条約は規定に基づいて90日後の来年1月22日に発効することになります。

核兵器を違法だとする条約はこれが初めてで、条約を推進してきたオーストリアなどの核を持たない国々や国際NGOICAN核兵器廃絶国際キャンペーンは、新たな核軍縮の基盤として核兵器の廃絶に向けた圧力としたい考えです。

しかし、条約には世界の核兵器の9割を保有するアメリカとロシア、さらに中国などの核保有国や、アメリカの核抑止力に依存する日本などの同盟国は参加しておらず、これらの国々には条約を順守する義務はありません。

条約の推進国や国際NGOとしては、さらに批准国を増やして核兵器廃絶に向けた国際的な世論を高めたいねらいですが、核保有国が反発するなかで今後、実効性をどう確保していくかが課題となります。

核兵器禁止条約の背景には核兵器廃絶への取り組みが一向に進まないことへの核を持たない国々の強い不満があります。

軍縮の取り組みはこれまでNPT=核拡散防止条約を基盤に進められてきました。
50年前の1970年に発効したNPTは
アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国を核保有国と認め、核軍縮の交渉を義務づける一方、
▼その他の国々の核兵器保有や拡散を禁じてきました。

しかし世界の核兵器の9割を保有する米ロの核軍縮は進まないうえ、NPTに参加していないインドとパキスタンが相次いで核実験に踏み切り、北朝鮮も条約から脱退を宣言して核兵器開発を加速させています。さらにあらゆる核実験を禁じる「CTBT=包括的核実験禁止条約」もアメリカやインド、パキスタンなどで
批准の見通しが立たず、1996年の採択から20年以上たった今も発効していません。

このため7年前の2013年以降、核兵器を持たないノルウェー、メキシコ、オーストリアはNPTや国連とは別の国際会議を相次いで開き、核兵器を法的に禁止すべきだという議論を活発化させてきました。

こうした中、核保有国と非核保有国の対立は激しくなり、2015年春のNPT再検討会議では核兵器の法的な禁止を求める国々に対し、核保有国は段階的な核軍縮を主張して、世界の核軍縮の方向性を決める合意文書を採択できない事態となりました。

そして2016年、オーストリアやメキシコなど50以上の国が共同で核兵器禁止条約の交渉の開始を求める決議案を国連総会に提出し、113の国の賛成多数で採択されました。

この時、日本は唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶を訴える一方、「核軍縮は核保有国とともに段階的に進めるべきだ」として、アメリカなどの核保有国とともに反対に回り、国内外で驚きをもって受け止められました。

その後、核兵器禁止条約の制定に向けた交渉会議が2017年3月に始まりましたが、核保有国に加え、アメリカの核抑止力に依存する日本やNATO北大西洋条約機構の大半の加盟国は交渉に参加しませんでした。

条約は国連で7月に122の国と地域の賛成で採択されました。

一方、当初から条約の制定を推進してきた国際NGOICAN核兵器廃絶国際キャンペーンは各国に直接働きかけるなど条約の実現に貢献したとしてこの年のノーベル平和賞を受賞しました。

条約は2017年9月の国連総会に合わせて各国の署名が始まるとともに、それぞれの国や地域で批准の手続きが進み、3年余りを経て発効に必要な50の国と地域の批准を満たしました。

条約の実効性が疑問視されていることに対し、批准国や国際NGOは条約の発効で核兵器を違法だとする新たな国際的な規範が出来たとして、今後、核兵器の違法性を問う国際世論の流れをつくりだし、「核兵器に汚名を着せる」ことで、核兵器を使用させず核軍縮を進めさせる圧力を強めたい考えです。

核兵器禁止条約が来年1月に発効することになったことを受け、ICAN核兵器廃絶国際キャンペーンのフィン事務局長は24日、公式サイトで「核軍縮にとって新たなページが開かれた。長年の活動は、多くの人が不可能だと言ってきたことを成し遂げた。核兵器は禁止された」とコメントしています。

国際NGOICAN核兵器廃絶国際キャンペーンの川崎哲国際運営委員は、「条約は、原爆の被害や苦しみを二度と繰り返してはいけないという被爆国の思いが形になったものだ。被爆者が高齢になる中、核兵器をなくさなければいけないという声を国際法として残す意味がある」と述べ、唯一の被爆国、日本にとって、大きな意味を持つ条約であると強調しました。

そして、日本政府が条約に参加しない姿勢を示していることについては、「大変残念で、被爆者の声を聞いてきた立場からすると本当につらいことだ。政府は、条約に参加すると、核抑止力の正当性が失われると主張しているが、被爆国である日本は、核兵器は違法であるという立場に転ずるべきだ。いきなりは難しくても、長期的には条約への参加を目指すということを明確に表現してほしい。核兵器のない世界を目指すと言っている以上、できないはずはない」と述べ、条約の発効後に開かれる締約国会議にオブザーバーとして出席し、条約への参加の姿勢を示すべきだと指摘しました。

そのうえで、「人権問題や奴隷制度なども長い時間を経て変えてきた歴史があり、75年前にできた核兵器が未来永ごう残り続けるというのは根拠がない。核兵器禁止条約は核兵器の時代を終わらせて、新たな時代を作り出すきっかけになるものだ。どれだけ多くの国や人々が古い考え方から新しい考え方に移るか、それを遅らせるも早めるのも私たち次第だ」と述べました。

核兵器禁止条約の採択で主導的な役割を果たしてきたオーストリアのクルツ首相は24日、みずからのツイッターで、「これによって、条約は90日で発効する。核兵器のない世界というわれわれの目標に近づく、重要な一歩を踏み出した!」と歓迎しました。

核兵器禁止条約を批准した国と地域が条約の発効に必要な50に達したことについて、広島の被爆者でつくる広島県被団協=広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長は「条約の発効によって直ちに核兵器の廃絶が進むわけではないとはいえ核兵器の禁止・廃絶を具体化する大いなる一歩であることは間違いない」としたうえで、「核兵器保有国と核の傘の下にある国々が条約に参加するよう引き続き力を尽くしたい。とりわけ日本政府には原爆を体験した被爆者が望んでいることを踏まえて条約への参加をぜひ考えてもらいたい」などとコメントしています。

広島県被団協=広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長代行は「ニューヨークからの1報をいただき驚きと感動でいっぱいです。大国の政治家には広島や長崎を訪れて核兵器の恐ろしさを肌で感じて批准に応じていただくような政策を考えていただきたいし、これからも諦めることなく声を出し続けていきたい」とコメントしています。

長年、世界各国で自身の被爆体験を語り、核兵器廃絶を訴え続けてきたカナダ在住の広島の被爆者、サーロー節子さんは、「批准が50に達したことを聞いて、
喜びで体が震え、ことばが出なかった。これから90日後には核兵器が違法になるということになり、広島で体験した悪夢を思うと、75年たってやっと祈りが通じた気持ちだ。これまで核兵器廃絶の活動をする中で、常に広島で亡くなった人たちと一緒にいるという思いで活動をしてきたが、やっとここまでこぎ着けたという報告をした」と述べました。

そして、「核兵器禁止条約が発効することによって、核兵器廃絶を目指す活動は
新しい章に入ると思うが、完全に廃絶できるまで活動を続けなくてはいけないと
思っている。核兵器がこの世から完全になくなるときには、私たちはこの世にはいないと思うが、条約の発効は貴重な一歩で、私も命のある限り、活動を続ける覚悟だ。同じ思いを持った人たちが世界中で活動を続けてくれると信じている」と述べました。

さらに、日本政府が条約に参加しない方針を示していることについては「日本は、広島と長崎で唯一、核攻撃の被害を経験した国だ。国同士の同盟について考える前に、人間として、広島や長崎で大量の殺りくがあったことを考えてほしい。日本政府は、人類に対する責任を考えてほしい」と述べ、条約への参加を求めました。

半世紀以上にわたって核兵器廃絶を訴えてきた、広島の被爆者の阿部静子さん(93)は「この日を長い間心待ちにしていたので、大変うれしいです。原爆が落ちた当時、まるで地獄のような、逃げ惑う人々の姿をいまでも覚えています。長年、核兵器廃絶を訴える運動をしてきましたが、それは荒海に向かって叫ぶような日々でした。核兵器保有している国は、『持っているから安心だ』という考え方を変えて、廃絶に向かって動き出してほしいです」と話しました。

そのうえで、日本政府の対応について、「原爆の悲惨さをつぶさに知っている日本政府が条約に参加していないのは被爆者として本当に残念だ。アメリカへの気遣いと条約に参加するかどうかは別の問題ではないか。核保有国と非保有国の橋渡し役を務めるために、しっかりと条約に参加したうえで核兵器廃絶に向けて、各国を導いてほしい」と話していました。

世界各国に核兵器禁止条約への批准を求める署名活動を行ってきた『ヒバクシャ国際署名をすすめる長崎県民の会』の田中重光共同代表はNHKの電話取材に対し、「核兵器を禁止する国際規範の形ができたということで大変喜ばしい。被爆者が訴えてきた核廃絶が実現に向かっている。今後は日本が被爆国として枠組みに積極的に参加をしてほしい」と話しました。

原水爆禁止日本国民会議の議長の川野浩一さんはNHKの電話取材に対し、「核兵器禁止条約が発効されることは大変嬉しい。被爆者だけでなく国際NGOや世界の国・地域が頑張ってくれたことに感謝したい」と述べました。

川野さんは、4年前から長崎県内で核兵器禁止条約に関する署名活動を行っている『ヒバクシャ国際署名をすすめる長崎県民の会』の立ち上げに関わりました。

川野さんは「署名活動の立ち上げで中心になった被爆者5人のうち私を除く4人がすでに亡くなってしまった。日本政府には世界の先頭に立って核兵器廃絶に向けて世界を引っ張ってほしい」と話しました。

核兵器禁止条約は核兵器を違法として開発、保有、使用を禁じた初めての条約で、24日、50の国と地域の批准という発効の要件を満たし、来年1月22日に発効することになりました。

これに対して国連安全保障理事会常任理事国で核保有国のアメリカ、ロシア、中国など5か国は、条約は安全保障情勢を考慮しておらず、核軍縮は段階的に進めるべきだと反対していて、核兵器禁止条約を支持する国々との溝が改めて浮き彫りになっています。

こうした中、国際社会では唯一の戦争被爆国として核兵器の廃絶を訴えてきた日本に橋渡しの役割を期待する声が上がっていて、国連で軍縮を担当する中満泉事務次長はNHKの取材に対して「唯一の戦争被爆国として核軍縮の努力を倍増し、分断の構造を埋めていく橋渡しをしてほしい」と話しています。

国連は条約の発効後に開く締約国の会議に、条約を署名、批准していない国にもオブザーバーとして参加するよう呼びかけていて、日本の参加にも期待を示しています。

これについて、中満氏と同じポストを歴任した元外交官の阿部信泰さんはNHKの取材に対し「日本はすぐに参加できなくても、会場の外で会議の参加国と話し合いの場を持つことはできるのではないか。条約への署名も将来的には参加するという意思を表明する行為になり、できないことはない」と述べて、オブザーバー参加のほか、条約の参加国との非公式の協議などを通して橋渡し役を担うこともできるという考えを示しました。

国連安全保障理事会常任理事国で核保有国のアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国は、核兵器禁止条約には一致して反対する姿勢を示しています。

5か国はおととし10月、国連総会で軍縮を扱う第1委員会で共同声明を発表し、「核兵器禁止条約に改めて反対する。核兵器のない世界を実現するには、国際的な安全保障情勢を考慮した段階的なプロセスが最善だと考える」と強調しました。

この中で5か国は、核兵器の廃絶に向けた取り組みは、今のNPT=核拡散防止条約を基盤とした枠組みで進めるべきだとしたうえで、「核兵器禁止条約はNPTに矛盾し、これを害する危険がある」と主張しています。

NPTは5か国を「核兵器国」と認める代わりに、核軍縮のための誠実な交渉を義務づけていて、声明では「われわれは核軍縮をめぐる交渉に引き続き取り組み、すべての国の安全を損なうことなく、核兵器なき世界という目標を支持していく」としています。

一方で核兵器禁止条約に関しては「国際的な安全保障の流れや課題を無視しており、国家間の信頼や透明性の醸成に何ら寄与しない」とするとともに、「核軍縮や不拡散をめぐる分断を生みだし、さらなる進展を困難にする可能性さえある。1発の兵器も消し去ることはできないだろう」と非難しています。

そのうえで「われわれは条約を支持せず、署名も批准もしない。条約がわれわれを縛ることはなく、われわれはこの条約が新たな規範をつくり、国際法の発展に寄与するというあらゆる主張を拒否する」として、各国に条約への支持を見直すよう求めています。

核兵器禁止条約の発効が決まったことを受けて、広島市では被爆者などが原爆ドームの前で集会を開き、日本政府に条約への参加を訴えていくことを確認しました。

広島市原爆ドームの前には広島県内の7つの被爆者団体のほか、湯崎知事と松井市長、それに市民などおよそ200人が集まりました。

参加者は条約を批准した50の国と地域の旗を掲げ、条約の発効が決まったことを喜びました。

集会では、日本被団協の全国理事で広島県被団協の箕牧智之理事長代行が「この日が待ち遠しかった。日本が入っていないのは残念だが50の国と地域の皆さんに感謝したい」と述べました。

もう1つの広島県被団協の佐久間邦彦理事長は「これまで核兵器廃絶を求めて署名を行ってきたが、条約の発効から廃絶に向かうようさらに活動を続けたい」と述べました。

そして、NGO核兵器廃絶を目指すヒロシマの会」の森瀧春子共同代表は「この地は多くの被爆者が亡くなった場所だ。きょうは多くの苦しみからうまれた核兵器禁止条約を喜びたい。核兵器は1つたりとも許すことはできないので、これからも戦っていきたい」と決意を述べました。

参加者たちは「唯一の戦争被爆国日本も批准を」などと書かれた横断幕を掲げ、日本政府に対し条約への参加を訴えていくことを確認しました。

核兵器禁止条約の発効が決まったことについて、アメリカが太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で被爆した高知県の漁船の元乗組員の遺族、下本節子さん(69)は「これまでも批准する国や地域が増えていくのをチェックしていましたが、核兵器保有はもちろん実験も禁止している条約がついに発効となったことは大きな一歩で、うれしく思います」と話しました。

そのうえで、「核を禁止する国際的な機運が高まることで、批准していない日本も変わるかもしれませんし、被爆者の遺族である私も当事者として発信を続けていきたいです」と話していました。

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