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#テレビ

 同年3月に彼女が婚約とともに引退を発表したとき、人気絶頂のさなかとあって、世間からは惜しむ声が上がった。他方で、フェミニズム運動を推進する女性たちからは、引退して家庭に入ることを「堕落」と決めつけた抗議の手紙も寄せられたという(※1)。

 それというのも、彼女の歌う「馬鹿にしないでよ」(「プレイバックPart2」)、「はっきりカタをつけてよ」(「絶体絶命」)、「いい加減にして、私あなたのママじゃない」(「ロックンロール・ウィドウ」)といった詞(いずれも作詞は阿木燿子)から、山口百恵=闘う女あるいは激しい女というイメージができていたからだ。

 しかし、あとから振り返るなら、山口百恵の引退は、芸能界やマスコミといったシステムから解放されて「自分らしく」あるいは「人間らしく」生きる道を選んだ結果であったといえる。その証拠に、彼女は引退から4年後、自伝『蒼い時』のプロデューサーである残間里江子を相手にこんなことを話していた。

《私、昔から喝采ってとても不確かなものだと思っていたから、不確かさに支えられて生きていたあのころに比べれば、結婚してからの生活はとても確かで、人間についても、できごとにしても、結婚後知ったことのほうが何倍も印象深いの。つまるところ、あの七年半は今に到達するための通過地点というだけで、あの年月の中の私は何でもないことだったんじゃないかって気がしているの。今、ここにこうしていること、人間が生きてる意味ってそれだけだと思うのよね》

 彼女のこうした選択は1977年に「普通の女の子に戻りたい」と宣言して翌年解散にいたった3人組のアイドルグループ・キャンディーズとも共通し、また、フェミニズムが目指すものともさほど隔たりはないはずだ。

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#エンタメ

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