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 被告の小林氏はもともと、2015年に他界した北の湖理事長に重用された人物だった。2016年、八角理事長体制となった協会は小林氏との契約を解除。さらに翌2017年になって小林氏の在職中に背任行為があったとして、協会が損害賠償を求める訴訟を起こしている。今回の公判はその最終口頭弁論だ。

「協会側が小林氏の背任行為だと主張している主要な案件は2つあり、ひとつが両国国技館の改修工事を巡り施工業者から8000万円を受け取っていた問題、もうひとつは力士が登場するパチンコ台の契約を巡って仲介業者から1700万円が渡った問題だ。信用毀損による損害なども含め、当初1億6500万円だった損害賠償請求額は、提訴後に増額されて5億1000万円まで膨れあがった」(協会関係者)

 つまりは北の湖理事長時代の組織の腐敗を八角理事長が追及するという構図の巨額賠償訴訟なのである。この日は八角理事長と小林氏本人が出廷。関係者の注目が集まった。

 そして、北の湖理事長体制においても協会ナンバー2の事業部長などの要職にあった八角理事長が、実際には小林氏の言いなりであったと本人が認めるという衝撃的な主張が繰り広げられたのだ。

「当時、国技館改修工事を巡る資金の流れやパチンコ裏金疑惑を問題視したのが、理事だった元横綱千代の富士九重親方だった。しかし、北の湖理事長体制下では“裏金はすぐに返した”といった小林氏の主張が通って追及は叶わず、直後の2014年1月末の理事選で九重親方は落選。小林氏の言い分を信じた北の湖理事長が、九重親方が自分の地位を脅かそうとしていると考えて、票を回さずに失脚させたとされている」(前出・協会関係者)

 東京地裁の証言台に立った八角理事長は、そうした協会組織の歪な実態を認める告白を続けた。

「(小林氏は)チケット(の差配)や国技館改修工事に干渉してきた。協会内部でストップがかけられなかった。北の湖理事長と近いため、(追及すれば)変な噂を流されることになる」

 当時の九重親方の失脚についても、小林氏が国技館改修工事の代金から裏金を捻出する計画を持ちかけ、九重親方がそれに応じなかったために、「千代の富士さんは、小林に悪口を言われて(理事選で)足を引っ張られた」と説明。協会の理事選出に、1人の顧問が大きな影響力を持っていたと主張したのだ。

 その後、自らが改修工事を取り仕切る役職に就いてからも、「(工事を)拒否して足を引っ張ったら(小林氏に)悪い噂を流される」「必要ない工事を止められず、苦しくて精神的に参った。不整脈で病院に運ばれたこともある」と、要職にありながらその地位を追われる恐怖に駆られていたことを明かしている。

 さらには、裏金疑惑のあったパチンコ台の契約についても「締結は小林がやって、協会には説明がなかった」「私は(事業部長として)公印は押していない」として、公益財団法人たる協会の公印が、適切に管理できていない実態まで証言した。

 その後の裁判官からの質問にも「(小林氏の悪評を流すと)選挙や役員改選で不利になる」「(北の湖理事長に対して)はっきりダメとは言えなかった」「下手に言うと協会内の立場が危うくなる」などの主張を繰り返した。

 最後に八角理事長は「私は理事長として6年間、公明正大に運営してきましたが、小林が私腹を肥やしていて残念です。今後はこのようなことがないようにしたい」と宣言したが、裏金疑惑の当時からナンバー2の立場にあったという自覚は感じられなかった。

 八角理事長や協会幹部は、その様子を苦々しい表情で見つめていた。

 それもそのはずだ。この裁判における対立構図は、ここ数年の協会内での激しい内紛にもつながってくるのだ。

北の湖理事長の死後、後ろ盾を失った小林氏は、八角理事長への接近を試みたが、不信感が強く、懐柔は難しかった。そこで今度は貴乃花親方を担ぎ上げて理事長にしようと画策したのです。貴乃花親方はモンゴル力士の暴行事件をきっかけに協会執行部と激しく対立し、2018年に追われるように協会を退職したが、小林氏と接近したことを快く思わない親方衆は多く、協会内で孤立した一因だった」(ベテラン記者)

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