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8日のニューヨーク外国為替市場では、東京市場やロンドン市場で円安ドル高が進んだ流れを引き継いで円を売ってドルを買う動きが一段と強まり、円相場は一時、1ドル=134円台半ばまで値下がりしました。

これは2002年2月以来、20年4か月ぶりの円安ドル高水準です。

円安が進む背景には、アメリカの中央銀行にあたるFRB連邦準備制度理事会が利上げを進める姿勢を示す中、大規模な金融緩和を続ける姿勢を示す日本との金利差の拡大が改めて意識されていることがあります。

市場関係者は「原油天然ガスの価格が高騰し、日本からエネルギーを買うための円売りドル買いが増えるとの見方が出ていることも円安の加速につながっている」と話しています。

また、円相場は、ヨーロッパ中央銀行が7月にも利上げに踏み切るとの観測を背景に、ユーロに対しても一時、1ユーロ=144円台まで大きく値下がりし、2015年1月以来、7年5か月ぶりの円安ユーロ高水準となりました。

岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画や初の「骨太の方針」は、財政再建に向けたトーンを弱め、成長重視のアベノミクスへの回帰も指摘される内容となった。日本銀行の金融政策に関する方針に変化はなく、来年4月の黒田東彦総裁の任期満了まで1年を切る中で財政支援の様相が一段と強まりそうだ。

  「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢の枠組みを堅持する」。7日に閣議決定した岸田首相の看板政策である新しい資本主義の実行計画では、アベノミクスの継承がうたわれた。首相が就任後に言及した金融所得課税強化や自社株買い規制といった持論は今回の実行計画には盛り込まれなかった。

  政権下で初となる「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」でも、当面のマクロ経済運営に関し「経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」と明記した上で、新たに「持続的・安定的」との表現を加えた。現在の物価上昇はエネルギー価格が主因であり、持続的・安定的な物価目標の達成にはならないとの日銀の主張と足並みをそろえている。

  財政健全化目標で掲げてきた基礎的財政収支プライマリーバランスについても、昨年まで明記してきた「25年度」とする黒字化達成期限が抜け落ちた。「現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」と、期限設定が機動的な財政出動の足かせになるとも読める記述まで入った。

  自民党西田昌司政調会長代理はインタビューで、政治が「積極財政の方向にかじを切っている」と評価。デフレから脱却するまで必要な財政を出動すべきだと主張した。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、骨太に2%の物価安定目標が引き続き明記されたことで「日本銀行トップ人事を経た後に2%目標が放棄される可能性はほぼ消えた」とみる。財政拡張色が強まる下で、「金利負担軽減のために欠かせない低金利を維持する観点から、2%目標の維持は必要という見方も可能かもしれない」と指摘した。

13年半ぶりの高い伸び

  円安進行や米欧の中央銀行がインフレ対応で金融引き締めに転じたことにより、市場では緩和修正の思惑がくすぶっていた。7月末に任期が切れる審議委員2人の後任人事で積極的な緩和を重視するリフレ派を排除したことを、アベノミクスと一線を画す象徴的な出来事とみる市場関係者も多かった。岸田首相の金融政策に対するスタンスも底流で意識されていた可能性がある。

  ただ新資本主義の実行計画や骨太の方針では、金融政策については安倍晋三元首相や菅義偉前首相の路線を踏襲。岸田色は目立っていない。

  匿名で取材に応じた自民党の重鎮は、官邸の方針に対して党側からかなり修正が入ったと解説する。 

  5月にロンドンで行った講演での「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」という言葉も「バイ・マイ・アベノミクス」(アベノミクスは買いだ)と訴えた安倍元首相を思い起こさせた。政調会長時代や総裁選での発言から財政再建と金融正常化への思いが強いと目された岸田首相だが、就任後すぐに共同声明に従って連携することを確認し、政策の継続性を重視する姿勢を見せている。

  岸田首相が金融正常化へ動くとの疑心暗鬼が市場で消えないのは、参院選後は衆院を解散しない限り3年間は大きな国政選挙の予定がなく、岸田首相が独自色を打ち出しやすくなるためだ。

  2%目標実現に向けた政策連携を盛り込んだ13年1月の政府・日銀による共同声明から10年近くが経過した。エネルギー主因ながらも物価と国民のインフレ期待も上昇しており、来年4月の日銀総裁人事は、金融政策の変更の一つのきっかけとなり得る。

  大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「国民がエネルギーや食料品の価格が上がって困ると言っている中では、おのずと処方箋も違ってくるはずだ」と指摘。参院選後も消費者物価の上昇率は2%程度で推移すると予想し「今夏の景気判断で、資源インフレの長期化を認めざるを得ない状況となった場合には、政府と日銀は物価に対する考え方や対応策について議論することを期待したい」と話した。

  また海外金利の上昇に連れて日本の長期金利も上がった場合、日銀が長短金利操作(YCC)で抑え込めなくなるシナリオを挙げる声も出ている。

  東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「YCCで必死に買い支えているが、どこかでこれ以上買い支えられないという限界が来る」との見方を示す。日銀が指し値オペで許容する長期金利利回りの上限0.25%が徐々に引き上げられ、目標自体も制御できなくなる可能性もあるという。

4月の全国消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比プラス2.1%だったが、生活実感により近い「持ち家の帰属家賃除く総合」は同3.0%だった。今後、賃金や消費の伸びが3%を上回らないと実質値はマイナスを続け、物価上昇の打撃の大きさを多くの国民に知らしめることになるだろう。

他方、新型コロナウイルスの感染拡大によって消費を抑えられ溜まった貯蓄である「強制貯蓄」は約50兆円に膨れ上がったとされる。これが消費を後押しし、今後の個人消費は前年比プラスが続くとの見方もある。果たしてマイナスとプラスの効果のどちらが大きくなるのか。筆者は、最近の日本社会の構造変化や進む円安を考慮すると、物価上昇のマイナス効果が大きくなると予想する。

<4月の賃金と消費、実質はマイナス>

4月分の賃金と消費のデータをみて、一部のエコノミストの間では驚きの声が上った。4月毎月勤労統計によると、実質賃金は前年比マイナス1.2%と4カ月ぶりの減少となった。4月家計調査では、2人以上世帯の実質消費支出が同マイナス1.7%。

これは、帰属家賃を除くCPIの総合が前年比プラス3.0%に跳ね上がったためだ。帰属家賃は持ち家の人が借家人と同様に家賃を払ったと仮定した場合の額で、帰属家賃を除くCPI総合は、消費者の肌で感じる「実感」に近いとされる。

黒田東彦日銀総裁が6日の講演で、家計が値上げを許容しているとの趣旨の発言をしたことに対し、SNS上で批判する声が広範に上がった背景には、この実質賃金と実質消費のマイナスの存在がかなり影響していた可能性がある。

この先も一定期間にわたって帰属家賃を除くCPI総合が3%で推移した場合、賃金の伸びや消費の伸びが3%を超えないと、実質ではマイナスが継続することになる。

黒田総裁は8日の衆院財務金融委員会で、6日の発言に関し「全く適切でなかった」として「発言は撤回する」と述べ、家計が「苦渋の選択として値上げを受け入れているのは十分承知している」と説明した。この点は、実質の賃金と消費がマイナスである現状と整合性があると思われる。

<強制貯蓄取り崩しで期待される消費拡大>

他方、日銀が試算している2021年末に強制貯蓄が50兆円に上っている点を踏まえ、今年央以降の個人消費がサービス消費も含めて拡大し、日本経済全体も回復基調が鮮明になると予測する民間エコノミストが多い。

コロナ禍が沈静化し、旅行や宿泊、飲食、その他のレジャーなど対面型消費が目立って回復して来るとの見立てが、大きな材料になっているようだ。

このため物価高による消費押し下げと、強制貯蓄の使用やコロナ関連規制の緩和による押し上げのどちらが強くなるのか、様々な意見が交錯している。

<年収400万円以下、給与所得者の55%>

筆者は、以下に掲げる2つの理由で押し下げ効果が大きくなると予想している。

1つ目の理由は、経済・社会構造の変化によって、物価上昇への耐久力が低下してきている点だ。国税庁民間給与実態統計調査によると、2020年の年間平均給与は前年比マイナス0.8%の433万1000円。この平均を下回る400万円以下の階層は、給与所得者5245万人の55.1%を占める。

この階層では、3%の物価上昇のマイナス効果の直撃を受け、実質消費のマイナス幅が全体よりもさらに大きくなっている可能性がある。

また、年金受給権者は4040万人と国民全体の約3割を占め、今年4月から年金額が減額されていることも見逃せない。日用品の購入を中心に消費者の節約志向が再び、顕在化する可能性もある。

<米国ではクレジットカード使用額急増>

一方で、高齢者の中には高額の預貯金を保有している人も少なくなく、強制貯蓄のプラス効果を発揮し、消費を増やすことに大きく貢献することが予想される。ただ、富裕層は人数で比較すると少数派であり、消費を増やしたとしても節約志向の人々の数に飲み込まれ、消費全体は停滞する可能性が高いと筆者は予想する。

富裕層の強制貯蓄の活用と平均年収以下の階層の消費の動向で注目されるのが、米国におけるクレジットカード利用状況だ。米連邦準備理事会(FRB)が7日発表した4月の消費者信用残高は、前月比380億7000万ドル増と大幅な伸びをみせている。米国のCPI上昇率は40年ぶりの高水準に達し、賃金上昇率を上回るインフレが進む中、貯蓄に頼れない層が活発なクレジットカード利用に向かったとみられている。

富裕層とそうでない階層とは、全く異なった消費行動を取るということがうかがわれるが、日本でも強制貯蓄とは無関係な階層は、物価上昇の影響から家計を守るため、より防衛的な行動に出ると予想する。

<加速する円安、溜まる物価高のマグマ>

消費が停滞する2つ目の理由は、円安の進展である。9日の東京市場でも一時、ドル/円は134円台に乗せ、市場関係者の間ではいったん135円を付けるとの声も多くなっている。

円安の進展は、輸入物価を押し上げ、企業物価全体を引き上げるパワーを持つ。言い換えれば、物価の川上である企業物価の段階に輸入物価上昇という水流が流れ込み続け、下流の消費者物価を押し上げる潜在的な力をため込んでいることになる。

20年間に及ぶデフレで「値上げはマイナス」と刷り込まれていた企業も、同業他社の値上げを見て次々に値上げしており、帝国データバンクの調査では、国内105社の食品メーカーが実施分も含め年内に1万0789品目、平均13%の値上げを実施する。

「物価上昇は一時的」ではなく、値上げのマグマは蓄積される一方となっている感がある。国民の所得分布階層が変化し、給与所得者の半数以上が年収400万円以下という現状を見ると、消費全体が目立って増加し、それが日本の国内総生産(GDP)の拡大につながるという楽観的な未来像は描きづらくなっている。

政府がまず、やるべきことはボーナスの支給額を決めていない企業に対し、ボーナス増額を促すことだろう。特に1ドル135円間近の円安で潤っている輸出型企業には強く働きかけるべきだ。

また、岸田文雄首相が打ち出す新しい資本主義の中では、金融資産を持たない所得階層の人々の消費が増えるような支援策を打ち出すべきだろう。「分厚い中間層」は、すでに消滅していることを前提にした政策対応が必要だ。

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#アベノミクス#リフレ#金融政策#円安政