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金融庁は金融機関の有価証券運用について、海外金利リスクとともに、国内金利が上昇した際のリスクも注視していることを明らかにした。モニタリング体制を従来の2チームから3チームに拡充し、約152兆円に上る国債などの保有リスクに関して、一部地方銀行も大手行並みに厳しく検証を進めている。

  金融庁の屋敷利紀審議官はインタビューで、国債などの円建て債券は「多くの金融機関が大量に保有しているため、注意して見る必要がある」と指摘。「地域銀行を含めた銀行が、一時的にせよ多額の有価証券関係損失の計上を余儀なくされれば、個別金融機関に対する信認低下につながりかねない」と話した。

  大手行や主要地銀は、国内金利の長期低迷を背景に購入を進めた外国債券が海外金利の急上昇で含み損を抱える。一方で超低金利を維持してきた日本銀行による金融政策修正・変更の観測も浮上しており、銀行が大量に保有する日本国債金利・価格変動リスクが高まる可能性もある。

金利リスクは高水準

  屋敷氏は運用のスキルや中身よりも「リスクテークに見合った実効的な運用体制やリスク管理体制がしっかりと構築されているか、有価証券運用に対するリスクガバナンスが十分発揮されているか」などを検証する方針。日銀の金融政策にかかわらずモニタリングしているという。

  日銀は10月の金融システムリポートで、金融機関の円金利リスク量は2002年度以降のピーク水準にあると分析。地域金融機関を中心とした保有債券の平均残存期間(デュレーション)の長期化が要因で、海外金利変動の影響を受け円金利リスクが拡大する可能性にも注意が必要としている。

  屋敷氏はデュレーションが長くなるほど、価格変動リスクは拡大し、金利が上昇した場合の損失発生の可能性も高まると説明。その上で「金利感応度が大きい金融機関は、よりしっかりと対応していく必要がある」とし、地銀などによる運用リスク管理の重要性を指摘した。

  仮に国内金利が上昇すれば、銀行にとっては本業の融資業務で貸出金利ざやが拡大するほか、有価証券運用でも一部の債券で利息収入の増加につながるなど、収益面のプラス要素は大きいとも付け加えた。

外債は含み損・逆ざや

  大手銀行グループについて屋敷氏は、「全体で見るとバランスが取れている」との認識を示した。有価証券運用を含む市場関連業務や融資、証券ビジネスなどの事業分散により、「地銀とは異なる」とみている。

  一方、9月末時点で外債保有に伴う含み損は大手3メガグループが合計で4兆円弱(3月末は約1兆7000億円)。SMBC日興証券佐藤雅彦シニアアナリストによると、上場地銀が約1兆5000億円(3月末は約2000億円)に拡大。海外金利の上昇で外貨調達のコストが運用利回りを上回る逆ざやも発生している。

  屋敷氏は逆ざやとなっている債券は、「保有しているだけで経営体力をむしばむ」と強調。含み損を抱えている状態も含め、銀行などの経営陣は「いったいどのように対応していくつもりなのか、説明できるようにしておく必要がある」と述べた。

BNPパリバ証券の中空麻奈・グローバルマーケット統括本部副会長は、ロイターのインタビューに応じ、政府・日銀の共同声明(アコード)を見直すべきだと述べた。「海外の金利動向を加味した金融政策運営」と記すことで、これまでの大規模な金融緩和とは違う路線を採ることを示す必要があるとした。

同証券でチーフクレジットストラテジストを務める中空氏は、インフレ圧力の高まりを受けて欧米の中央銀行が急速に利上げする中、「日本はコロナの終息とは言えない中でも金利は上にも下にも動き得るという情報発信をしておくべきだった」と振り返った。

政府・日銀のアコードは2013年に策定され、2%の物価目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」とした。今年4月以降、物価上昇率は2%を上回る状況が続いているが、物価目標の「持続的・安定的な達成」には至っていないとして日銀は大規模緩和を継続してきた。

中空氏は、とにかく2%を目指すというよりは、少し余裕を感じる文言に変えていくのが望ましいと話し「情勢に応じて金利を上げもするし下げもするということを発信しなければならない。少なくとも、大幅な金融緩和をやめるというメッセージを伝えることが必要」と語った。中空氏は、欧米は景気の悪化で来年の終わりか再来年の冒頭には利下げすると予想している。

債券市場では、社債や地方債の利回りの国債金利に対する上乗せ幅(スプレッド)が拡大し、日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の下、10年金利の上限を0.25%としていることによる副作用との指摘が市場で出ている。

スプレッド拡大について、中空氏は「日銀の金融政策の副作用とは思っていない」と指摘。「総裁が代わる時でないと政策は変わらないとの予測が市場参加者の間でコンセンサスのようになりつつある」と話し、スプレッド拡大は日銀の政策修正に関する思惑が背景にあるとした。

中空氏は「(経済情勢を踏まえれば日銀は)実際には金利を上げるのは難しいだろう」とし、「日銀から現状の金融政策を維持するという意思表示があれば、タイト化(スプレッドの縮小)に向かうだろう」と話した。

<日銀の気候変動対応、「指針作りを」>

中空氏はチーフESGストラテジストも兼任する。気候変動リスクと物価については「ロシアによるウクライナ侵攻によってもたらされたコストプッシュ型のインフレはピークアウトが近づいているが、構造的に気候変動対応に伴うコストアップで『グリーンフレーション』は起こってしまう」と述べ、気候変動対応のための新しいインフラや設備の整備、サプライチェーン(供給網)の見直しはインフレ圧力になるとの見方を示した。

日銀が昨年12月に始めた気候変動対応オペについては「日銀の動きは政府より早かったと認識している」と評価した。「ECB(欧州中央銀行)の社債購入プログラムのように、日銀の判断で環境に配慮した企業の社債を優先的に買い入れることは難しい」とする一方、「気候変動対応として、どういう取り組みが望ましいと思っているのか指針を示す必要があるのではないか」と述べた。日銀の気候変動オペでは、市場中立性の観点から日銀は個別の融資案件をチェックせず、何が気候変動に資するかの判断は金融機関に委ねている。

アジアの中で日本が気候変動対応をリードしていくために、中空氏は「アジアの排出権取引市場の根幹を日本で創設できないか」と提案した。優良な技術を持った日本企業を支援する基金を作り、海外投資家から資金を募るのも一案だとした。排出権市場を巡っては中国の都市が先行しており「日本も遅れをとってはならないのではないか」と語った。

#アベノミクス#リフレ#金融政策#円安政