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アメリカを訪れている岸田総理大臣はバイデン大統領と会談し、日本の「反撃能力」保有を盛り込んだ新たな安全保障戦略を踏まえ、日米の戦略は軌を一にしているという認識を共有し、日米同盟のさらなる強化を図っていく方針で一致しました。

岸田総理大臣とアメリカのバイデン大統領の首脳会談は、ワシントンのホワイトハウスで日本時間の午前1時半ごろからおよそ2時間にわたって行われ、後半は食事を交えながら、意見を交わしました。

冒頭、岸田総理大臣は「今、日米両国はかつてないほど厳しい複雑な安全保障環境の中にある。地域の平和や繁栄に貢献し、国の安全を守るためにわが国は新しい国家安全保障戦略を策定した」と述べ、国家安全保障戦略に、敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」の保有や防衛費の大幅な増額を明記し、日本の安全保障政策を大きく転換したことを伝えました。

そのうえで「このことは日米同盟の抑止力、対処力を強めることにもつながる」と意義を強調しました。

会談で両首脳は、「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を深めるなどとした、日米の外務・防衛の閣僚協議いわゆる「2プラス2」の結果を歓迎しました。

そのうえで覇権主義的な動きを強める中国の動向も踏まえ、日米の安全保障戦略が軌を一にしているという認識を共有し、日米同盟の抑止力と対処力のさらなる強化を図っていく方針で一致しました。

また岸田総理大臣は、防衛力の強化のため、日本がアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得を計画していることを説明し、バイデン大統領は強い支持を表明しました。

さらにバイデン大統領からは、アメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条のもと、核兵器も含めたあらゆる能力を用いて揺るぎなく、日本を防衛していく方針が伝えられました。

また両首脳は、中国を念頭に、東シナ海南シナ海での力による一方的な現状変更の試みに強く反対するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性を共有し、問題の平和的解決を促していく方針で一致しました。

核・ミサイル活動を活発化させる北朝鮮に対しては、引き続き完全な非核化を求めていくことで一致し、日米韓3か国の協力を一層強化していくほか、拉致問題の解決に向けての連携も確認しました。

さらにロシアのウクライナ侵攻や核兵器使用の威嚇を重ねて非難し、ロシア制裁とウクライナ支援を継続していくことを確認しました。

そしてウクライナ情勢や食料・エネルギー問題などに世界が直面する中、5月に日本が議長国として開く「広島サミット」の成功に向けてG7の結束を確認しました。

さらに半導体や量子、バイオといった最先端技術の開発を含めた経済安全保障分野などでも、日米2国間の協力の強化を申し合わせました。

このほかアメリカ政府が行っている中国向けの半導体関連製品の輸出規制をめぐっても意見が交わされました。

日米両首脳は会談を受けて共同声明を発表しました。

日本の「反撃能力」保有も含めた防衛力強化策を踏まえ、日米同盟がインド太平洋地域の平和と安全の礎だと再確認し、経済安全保障でも優位性を確保するとしています。

共同声明では、インド太平洋地域での中国や北朝鮮の動向に加え、ロシアのウクライナ侵攻をあげ、世界のいかなる場所でも力や威圧による一方的な現状変更の試みに反対する立場を示すとともに、日米両国は単独および共同での能力を強化することが求められていると指摘しています。

バイデン大統領は日本の防衛力強化を称賛するとした上で、両首脳は、かつてなく強固となった日米同盟がインド太平洋地域の平和と安全、繁栄の礎であり続けることを改めて確認したとしています。

また、バイデン大統領は、核兵器を含むあらゆる能力を用いて、日米安全保障条約第5条のもとで日本の防衛に対し、アメリカが揺るぎない関与を行うと改めて表明し、両首脳は、沖縄県尖閣諸島にも条約が適用されることを確認したとしています。

そして両首脳は、日本が保有を決めた「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を強化するよう関係閣僚に指示したとしています。

核・ミサイル開発を活発化させる北朝鮮をめぐっては、国連安保理決議に従った朝鮮半島の完全な非核化への取り組みを確認するとともに、バイデン大統領は、拉致問題の即時解決に取り組むと改めて表明しています。

このほか、台湾海峡をめぐって、両国は平和と安定の維持の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的な解決を促しています。

また、ウクライナ情勢をめぐっては、ロシアの不当で残虐な侵略戦争に断固反対し、ロシアに対する制裁やウクライナへの支援を行っていくとしているほか、核兵器の使用に反対する立場を強調しています。

また声明で両首脳は、ことし5月の「G7広島サミット」について、法の支配に基づく国際秩序の堅持へのG7としての関与を示すため、緊密に連携していくとしています。

一方、経済分野をめぐっては、外務・経済閣僚による協議の枠組み、いわゆる経済版の「2プラス2」などを通じ、経済安全保障、宇宙、エネルギー安全保障について、日米の優位性を一層確保するとしています。

また、経済的威圧や非市場的な政策や慣行、それに自然災害などの脅威に対し、同志国の間でサプライチェーンの強じん性を構築するほか、気候危機に対処する地球規模の取り組みなどを加速させるとしていて、IPEF=インド太平洋経済枠組みは、これらの目標の軸になると指摘しています。

このほか、ロシアによる世界的なエネルギー・食料安全保障の毀損を含め、みずからの経済力を用いて他者を利用するすべての主体を非難するとともに、中国に対し、新型コロナの感染拡大について、十分かつ透明性の高い疫学的データやウイルスのゲノム配列データを報告するよう求めています。

さらに、インド太平洋の利益のため日米豪印4か国が国際保健、サイバーセキュリティー、海洋状況の把握などについて具体的な取り組みを推進するほか安全保障面で日米韓の3国間協力を強化するなどとしています。

そして声明は最後に、両首脳は最も緊密な同盟国として、言葉だけでなく行動を通じて平和と繁栄を実現する決意を新たにしたなどとして締めくくっています。

アメリカのバイデン大統領は日米首脳会談の冒頭、岸田総理大臣の訪問を歓迎し「いまほどアメリカと日本が近い関係にあったことはない。日本の防衛費の歴史的な増額や新たな国家安全保障戦略を踏まえてわれわれは日米同盟を現代化している」と述べました。

そのうえで「アメリカは日米同盟、とりわけ日本の防衛に対して、完全かつ、最大限の責務を果たすことをはっきりさせておきたい」と述べました。

また、「IPEF=インド太平洋経済枠組みを含めた経済やテクノロジーの分野での緊密な連携や、プーチン大統領に対するウクライナでの戦争についての責任追及などで日本が強いリーダーシップを発揮していることに感謝する」と述べました。

さらに「日本で開かれるG7=主要7か国の首脳会合などでアメリカと日本が共有する目標や価値観に向けてさらに前進することを楽しみにしている」と述べて日米関係のさらなる発展に期待を示しました。

またバイデン大統領は日米首脳会談を受けてツイッターに、両首脳がホワイトハウスで並んで笑顔で歩く写真を投稿し「両国やインド太平洋地域、そして世界の平和と安全保障、繁栄を進めるためにいかに協力していくかを岸田総理大臣と議論できたことをうれしく思っている」と書き込みました。

岸田総理大臣は訪問先のアメリカで講演し、ウクライナ情勢などを踏まえ、日本の安全保障政策を大きく転換したことを説明し、日米の戦略は方向性が完全に一致するとして、経済安全保障などでも協力を推進する考えを示しました。

講演はワシントンにあるジョンズ・ホプキンス大学で日本の安全保障などをテーマに行われました。

この中で岸田総理大臣は「昨年、私は外交・安全保障政策で2つの大きな決断を行った」と述べ、ロシアのウクライナ侵攻などを踏まえ、厳しい制裁措置を含め、ロシアへの対応を変えたことや「反撃能力」の保有を決め、日本の安全保障政策を大きく転換したことを説明しました。

このうち安全保障政策の転換について「アメリカや世界に対する日本の強い覚悟を明確に示すもので、インド太平洋地域全体の安全保障にもひ益し、歴史上最も重要な決定の1つであると確信している」と強調しました。

そのうえで、政策転換で日本の平和国家のあり方が変わるわけではなく、強化された防衛力を裏付けに、現実的な外交を強化していく方針を示しました。

またことし5月の「G7広島サミット」について「ロシアが行っている武力侵略も核兵器による威嚇なども断固として拒否してウクライナを力強く支持し、自由で開かれた国際秩序を守り抜くG7の意志を歴史に残る重みをもって示したい」と述べました。

一方、中国への対応も重要課題にあげ「国際秩序に関するビジョンや主張には、われわれと異なり、決して受け入れることのできない要素がある」と指摘しました。

そのうえで、中国にはルールに反するような形で国際秩序を変えることはしない戦略的な判断をしてもらう必要があるとして、首脳間の対話などを通じて「建設的かつ安定的な関係」の構築を図っていく考えを示しました。

そして一連の課題への対応をめぐり「すべてについて日米同盟はアンカーとなる。アメリカとの協力分野を一層広げ、強化していきたい」と述べ、経済安全保障や宇宙分野などで日米協力を推進していく考えを示しました。

日米両政府は、宇宙空間での協力を迅速に進められるようにするための協定に署名しました。署名式に立ち会った岸田総理大臣は「強固な日米同盟の協力分野が一層広がることを強く期待する」と述べました。

「日・米宇宙協力に関する枠組み協定」の署名は、アメリカ・ワシントンのNASAアメリカ航空宇宙局の本部で、林外務大臣アメリカのブリンケン国務長官の間で交わされました。

協定は宇宙に関する知的財産の扱いや宇宙空間で事故が起きた際の対応など、関連するルールをあらかじめ取り決めておくもので今後、日米双方で正式な締結に向けた手続きが進められます。

宇宙空間での活動や開発をめぐって、日本はアメリカが主導して月面に宇宙飛行士を送り、探査を行うことを目指す「アルテミス計画」に参加するなど日米間の協力を強化しています。

署名に立ち会った岸田総理大臣は「日米の宇宙協力は『アルテミス計画』により新たな時代に突入した。協定を通じて両国の協力が力強く推進されるとともに、これまでになく強固になっている日米同盟の協力分野が一層広がることを強く期待する」と述べました。

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