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ナイジェリア出身の弁護士、オビオマ・アデセワ・オコンクウォ氏は、コスタリカで開催されるデジタル権利会議「ライツコン」に登壇することが決まり、念のため数カ月前には入国ビザ(査証)申請書類の提出を済ませていた。

しかし、開催日程が近づいても渡航書類が交付される気配はなかった。オコンクウォ氏はやむを得ず出張を取りやめ、オンライン参加に切り替えるよう、デジタル人権擁護団体「アクセス・ナウ」のイベント主催者に連絡した。

アクセス・ナウは声明で、300人以上の参加者がビザの問題で会議に直接出席することができなかったと発表している。

同団体幹部でケニア出身のナンジャラ・ニャボラ氏によれば、多くの黒人や褐色人種の参加者が最長で3時間、コスタリカの入国管理局に拘束されたという。その後、複数人が強制送還されたと、ニャボラ氏はツイッターの投稿で明かした。

気候変動から経済システム、紛争に至るまで、さまざまな課題の解決を目的とした国際会議が開かれているが、南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」諸国の人々の参加は開催国のビザ取得が障壁となることが多い。こうした待遇への怒りから、ビザ発給の不平等さや国境管理を巡る議論が再燃している。

「世界規模のサミットを開催するのであれば、通常はビザを却下されてしまう国から訪れる人々への配慮が必要だ」

オコンクウォ氏は、表現の自由を守るナイジェリアの団体「メディア・ライツ・アジェンダ(MRA)」で法務を担当している。

  「他の大陸から出席した弁護士らから、デジタル上の権利について学びたかったと強く思っている。私はそのような議論の場から締め出されてしまった」

オコンクウォ氏が申請したビザは結局、却下されたという。

米ニューヨークに本部を置く国際団体のアクセス・ナウによれば、コスタリカ政府は会議出席者に対して入国時にビザを発給することで合意していたものの、入国管理当局がこの対応を実践しなかったという。

アクセス・ナウは影響を受けたすべての人に謝罪し、本件から学び、改善につなげると約束した。

「参加者が存在が見えるようにすること、彼らの声が重要であることを、会議の場で確実にする責任がある」とライツコンのニッキ・グラッドストーン代表はトムソン・ロイター財団にメールでコメントを寄せた。

「参加者が直面し得る障壁を予測し、軽減できるようサポートすることが私たちの責務だ」

グラッドストーン氏はイベントについて、よりアクセスがしやすくなるよう努め、毎年異なる国で開催していると述べた。今回の開催地にコスタリカを選択した理由については、これまで中米で会議を実施したことが無かったからだとした。

コスタリカ政府にもコメントを求めたが、即座に返答は得られなかった。

<「公正なビザ」を巡る闘い>

貧困国の国民ほどビザ取得が難しくなるようなルールにより、途上国出身者が大きな国際会議に参加することが妨げられていると批判する声も上がっている。

ウガンダの気候変動活動家ハミラ・コブシンゲ氏は、国際会議に出席するためのビザ申請には多くの場合、推薦状が必要だと話す。「グローバルノース(北半球を中心とした先進国)」からの旅行者の多くは必要がない手続きだ、と言う。

コブシンゲ氏は、努力もむなしく、ドイツで6月に行われた「ボン気候変動会議」と、ニューヨークで3月に開催された「2023年国連水会議」に参加するためのビザは発給されなかったと明かした。申請書類がビザの発給基準を満たしていないと伝えられたという。

「アフリカ大陸中の仲間のビザが却下された」  コブシンゲ氏は、活動家たちが「公正なビザ」を得るための闘いに時間を取られ、本来の活動に集中できずにいると付け加えた。

国務省の報道官は「国連本部を構える国として、責任を真摯に受け止めている」と述べた。

「個人が米国のビザを申請した場合、いかなる場合も領事館員が事実確認を行い、申請者がビザ発給に適当かどうか、米国の法律に基づいて判断している」と報道官はメールで応じた。

ドイツ外務省と在ウガンダ・ドイツ大使館にもコメントを求めたが、返答は得られなかった。

コブシンゲ氏は、草の根活動を行う人々のアクセスを制限することで、最も影響を受ける人々からの意見を十分聴かずに主要な決定が下されてしまう恐れがあると指摘する。

アフリカは、気候変動に伴う被害を偏って受けている。また、甚大な被害を受けた途上国への順応・復興資金を保障する国際的な取り組みも不十分だ。

「グローバルノースは、最も影響を受ける人々を抜きにして、気候変動危機への解決策を見つけようとしているようだ」とコブシンゲ氏。

「反対する人が少なく、彼らがやりたいことを押し進めることができる」

多くの国でインクルージョン(包摂)についての議論が広まる契機となった「ブラック・ライブズ・マター」運動を受け、2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では多様性の欠如が批判された。短文投稿サイトのツイッター上では「#cop26sowhite(COP26は白すぎる)」というハッシュタグがトレンドに上った。

ボン会議やCOPの開催準備に携わる国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は、コメントの要請に応じなかった。

アフリカ疾病予防管理センター(CDC)のアーメド・オグウェル・オーマ所長代行は昨年、世界保健サミット(WHS)に出席するためにドイツに入国しようとした際、入国管理局から不法滞在する意図があるとの疑いをかけられたという。オーマ氏はツイッターにこのように投稿した。

「私がWHSに出席できるかどうかは、いまや不確かなものだ。アフリカの祖国にいる方が、より幸せで安全だと感じている。招待されても、不当に扱われる」

最終的にオーマ氏は入国を許可された。ドイツの保健相はツイッターの投稿で、当局が空港で手違いが起きた原因を調査していると表明した。

<不在ということ>

活動家や政策アナリストらは、運営側が国際会議の開催国を決定する際、各国の査証政策も念頭に置くべきだと指摘している。

オコンクウォ氏は、ビザが比較的取得しやすく、貧困国の出身者に差別的な対応をしない国で開催されるべきだと話す。

アクセスナウは、慈善団体や市民社会団体らと共同で出した公開書簡で、人権擁護者や活動家、ジャーナリストらへの「柔軟で寛大な」ビザ発行政策を採用するよう各国の政府に強く要請している。

シンクタンクODIで政策・ガバナンス(統治)プログラムの代表を務めるキャサリン・ヌワジャク・ダウー氏は、グローバルサウス出身の参加者がハイレベルな協議に物理的に出席できるようにすることが、決定事項が可能な限り多くの人の意見を代弁するものであると保障する上で極めて重要だと話す。

「本当の『政治』は会場で行われている。会場の廊下や非公式な歓談の場が、強固な関係が築かれている場だ。会議にいないということは、そうした場所にもいない、ということだ」

#グローバルサウス(ビザの壁)

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