先端半導体国産化へ 「Rapidus(ラピダス)」新工場 起工式 #nhk_news https://t.co/k5x2DlKJsC
— NHKニュース (@nhk_news) September 1, 2023
「Rapidus」新工場 北海道で起工
Rapidusは、自動運転やAI=人工知能など大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない先端半導体の国産化を目指し、トヨタ自動車やNTT、ソニーグループなどが出資して去年、設立されました。
北海道千歳市にある新工場の建設予定地で9月1日、起工式が行われ、小池淳義社長や西村経済産業大臣、北海道の鈴木知事など関係者が出席し、くわ入れをして工事の安全を祈願しました。
この会社は、世界で実用化されていない回路の幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産化を目指しています。
新工場では2025年に試作ラインを作り、2027年ごろの量産化を目指していて、国もこれまでに3300億円の支援を行うことを決めています。
一方、韓国のサムスンや台湾のTSMCも2ナノメートル以下の先端半導体の実用化を目指していて、開発のスピードが競争の鍵となります。
また、量産化にあたっては、精密な製造装置への投資などに巨額の費用が必要なうえ、開発や製造のノウハウを持つ技術者などの確保や育成が課題となっていて、会社は欧米の企業や研究機関と連携しながら、実現を目指す方針です。
Rapidusの小池淳義社長は、「いま、まさに千載一遇の機会だと考えている。きょうの起工式では、心を新たにして全力を尽くしていくことを改めて誓った次第だ。国際的な連携を進めて世界中から優秀な人たちを集めたい」などと述べ、欧米の研究機関や企業などと連携しながら、人材の確保に努め、会社の成長につなげていくと強調しました。
また、西村経済産業大臣は「経済産業省としても、関係者との連携を一層強化しながら必要な支援を着実に実施をしたい」として、引き続き、先端半導体の実用化に向けて、必要な支援を行っていくと強調しました。
海外の研究機関などから支援の方針
起工式にあわせて西村経済産業大臣は、半導体関連の欧米の研究機関や装置メーカーの幹部らと相次いで会談しました。
研究機関からは、技術者の受け入れなど具体的な支援を行いたいとする方針が示されました。
西村経済産業大臣は新工場の起工式に先立ち、北海道千歳市で、会社と提携関係にあるベルギーの半導体関連の研究機関の「imec(アイメック)」や、半導体製造装置メーカーのオランダの「ASML」、アメリカの「ラムリサーチ」の幹部らと相次いで会談しました。
会談の中で、先端半導体の開発に欠かせない、回路の幅をできるだけ細くする技術に強みを持つimecからは、来年からRapidusの技術者を本格的に受け入れたり、北海道に技術者を支援する拠点を設けたりするなどの方針が示されたということです。
また、ラムリサーチからは先端半導体の製造装置のメンテナンスなどを行うサポート拠点を北海道に設ける考えが明らかにされました。
千歳市 関連企業受け入れへ専門部署立ち上げ
「Rapidus」の工場が建設される千歳市では、ことし4月、関連する業務に対応するための専門部署「次世代半導体拠点推進室」を立ち上げました。
兼務を含めると30人以上の市役所職員が業務にあたり、工場建設に伴う上下水道や道路などのインフラ整備のほか、市内へ進出を検討している半導体関連企業の受け入れ態勢の構築などに取り組んでいます。
この部署では、今後の工事の進捗(しんちょく)にあわせて職員の増員も検討していて、29日も職員たちは、慌ただしく電話を取ったりパソコンで資料を作成したりしていました。
千歳市の次世代半導体拠点推進室の森周一 室長は、「ことし2月にRapidusの進出が表明されてから、千歳市に工場や事務所を置きたいという企業からの問い合わせが100件以上来ている。一時期は、電話が鳴りやまないほどだった」と話しています。
その上で、多くの企業が千歳市に進出することになれば、工場の建設用地や、従業員用の住宅が不足するという認識を示したうえで、「サプライヤーや関連企業などあわせて5000社に対して、年内には進出の意向調査を行いニーズを把握したい。それを踏まえて、工業団地や住宅地をどれだけ拡大するかの見込みを立てたい」と述べ、企業の受け入れ態勢の整備を急ぐ考えを示しました。
地元高専 採用に期待
「Rapidus」では、500人から600人の技術者を含めて、1000人規模が新たな拠点などで勤務する見通しで、半導体関連の人材の確保や育成が課題の1つとなっています。
こうした中、期待を寄せているのが、建設予定地の北海道千歳市に近い苫小牧工業高等専門学校です。
苫小牧高専では、10月には、すべての1年生を対象に半導体の基礎について学ぶ授業を実施するほか、今後、半導体関連企業との連携を強化し、企業の担当者を学校に呼ぶなど現場の様子を学ぶ機会を増やしていきたいとしています。
苫小牧高専の小林幸徳校長は、理工系の人材が道外に流出している現状があるとした上で、「Rapidusのような最先端の工場では、待遇面でもこれまでの道内基準よりよい形が期待できる。道外就職を考えていた学生も道内就職が視野に入るため、学生たちの要望に応えるような就職先が増えてくると思うし、Rapidusだけでなくほかの企業の進出にも期待したい」と話しています。
その上で、「Rapidusからは、工業高校と高専、それに大学から数十人単位で採用を考えていきたいという話をいただいている。特に1、2年生を中心に多くの学生を対象とする授業の中で、半導体とはどういうものであるかとか、半導体産業が北海道に進出してくる意義などについて紹介していきたい」と述べ、半導体関連の人材育成を一層強化する考えを示しました。
日本が官民一体で先端半導体の国産化を目指しているのは、経済安全保障上、半導体製品の安定確保の重要性が高まっているからです。
とくに先端半導体は重要な物資として、世界各国で自国での開発や生産を強化する動きが広がり、日本政府としても海外に調達を依存する状況となれば、ひとたび紛争などが起きて調達が困難になった場合に日本経済に深刻なダメージがおよびかねないという懸念があります。
このため、Rapidusを設立し、国の全面的な支援のもと、回路の幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産を目指すことにしています。
こうした先端半導体は自動運転やAI=人工知能、スマートシティーなど未来の社会に必要不可欠とされ、今後、需要は飛躍的に高まるとみられています。
激化する世界の“半導体競争” 出遅れる日本
一方、先端半導体の技術開発で日本は大きく出遅れています。
半導体は、AIやEV=電気自動車向けの需要の拡大で、業界関係者の間では2030年ごろには1兆ドル規模の市場に成長すると予想されています。
現在、主流となっている回路の幅が5ナノメートルから16ナノメートル程度のロジック半導体の開発では、台湾のTSMCや韓国のサムスン電子、アメリカのインテルなどが先行しています。
工場をみずから持つ半導体の生産では、台湾のTSMC、韓国のサムスン電子が世界をリードし、回路の幅をナノと呼ばれる1ミリメートルの100万分の1単位で細くする「微細化」によって半導体の性能を高める開発競争を続けています。
こうした最先端の半導体は、生産技術の開発だけでなく、最新鋭の設備でいかに早く大量生産を実現するかという競争となり、TSMCやサムスンは、毎年、日本円にして数兆円規模の設備投資を行っています。
その結果、両社は3ナノメートルの先端半導体をすでに量産し、さらに回路の幅が細い2ナノメートルの先端半導体の量産も2025年に始める計画です。
一方、「Rapidus」も2ナノメートル以下の先端半導体の量産化を2027年ごろに実現することを目指しています。
ただ、市場への投入が遅れることで競争力を保てるかは不透明だとして、先行きに厳しい見方を示す専門家もいます。
さらに、国内外で顧客を開拓できるかどうかも課題です。
先端半導体の分野は、TSMCやサムスン電子だけでなく、アメリカのインテルも自社生産を進めていく計画を打ち出しています。
いわゆるビッグプレーヤーが市場を席けんしつつあるなかで、Rapidusは特注の半導体に特化した少量多品種の半導体生産を目指していますが、生産技術の向上だけでなく、事業として成り立つための十分な顧客の開拓をどこまでできるかも大きな課題です。
かつて日本の半導体産業は高い競争力を誇っていましたが、その後、力をつけた韓国や台湾など海外メーカーとの競争に敗れて最先端の開発から撤退する中で、生産技術や必要な人材が不足しています。
このため、Rapidusは欧米の企業や研究機関と連携しながらすでに周回遅れともいわれる海外メーカーとの差を少しでも埋めていきたいとしています。
さらに半導体産業は、巨額の設備投資を継続的に行う必要があるうえ、景気の動向によって需要や価格が乱高下します。
政府はこれまでにRapidusに対して3300億円の支援を決めたほか、今後も必要な支援に取り組むとしていますが、国と企業が業績が大きく変動する半導体産業を支え続けることができるかも大きな課題です。
専門家 “人材不足が大きな課題”
半導体業界に詳しい、イギリスの調査会社「オムディア」の南川明シニアコンサルティングディレクターは、Rapidusが目指す先端半導体の量産化にあたっては人材不足が大きな課題だと指摘しています。
日本の半導体メーカーの現状について南川シニアコンサルティングディレクターは「この20年間で日本の半導体メーカーはずっと売り上げとシェアを落とし、縮小していってしまった。そうしたなかで優秀なエンジニアがどんどん会社を去り、海外の半導体メーカーに移るといったことが20年以上続いてきた。日本の技術は世界と10年以上の差があり、2ナノの半導体を日本の技術者や会社だけで実現することは無理で、人材不足が1番の課題だ」と述べました。
その上で、RapidusがアメリカのIT大手「IBM」やベルギーの研究機関の「imec」と連携していることを踏まえ、「残されている課題は多くそれらをすべてクリアしなければならないが、世界的な優秀な人材と協力することで、後れを取った技術をキャッチアップできるチームだと思う。日本には最先端を知っている技術者がほとんどいないため、とにかく学べるものは貪欲に学ぶことが最初のフェーズでは非常に重要だ」と指摘しています。
Rapidusの人材戦略
Rapidusが先端半導体の実用化を目指すうえで課題となっているのが、半導体関連の技術者などの確保と育成です。
Rapidusは、去年の設立以降、半導体の技術者を中心におよそ210人を採用していますが、会社が目指す回路の幅が2ナノメートル以下の先端半導体の開発に必要な知識や技術を持つ人材は日本国内では限られているのが現状です。
すでに日本メーカーが「ロジック半導体」と呼ばれる高度な演算処理を可能にする半導体の開発や製造から撤退し、開発ノウハウを持つ技術者が海外メーカーに転職するなど、人材の基盤が失われつつあることが背景にあります。
このため、会社では、かつて日本の電機メーカーでロジック半導体の開発に携わるなどした50代のベテランの技術者を中心に積極的に採用してきました。
そのうえで、提携関係にあるアメリカのIT企業、「IBM」の研究所にすでに60人ほどを派遣し、先端半導体の研究開発に必要な技術を身につけさせているということです。
しかし、実用化に向けては、今後、200人程度まで派遣者を拡大させなければならないうえ、新工場の本格稼働には開発に携わる技術者を含めて全体でおよそ1000人の従業員を確保する必要があるということです。
Rapidus人事部の新堂由紀子シニアマネージャーは、「人材の確保は会社としても非常に重要な課題だと考えている。若い人や経験が浅い人も採用して、会社で教育して、専門の技術を身につけさせることも検討していきたい」と話しています。
入社した技術者は
ことし7月に入社したばかりの技術者、岡本晋太郎さん(41)は、大学院を修了後、国内の半導体メーカーに入社しました。入社後は、スマートフォンなどに使われる「ロジック半導体」と呼ばれる高度な演算処理が可能な半導体の研究開発に取り組みました。
しかし、10年ほど前、勤めていた企業がロジック半導体からの撤退を決めたことをきっかけに別のメーカーに転職し、この分野の研究開発からは遠ざかっていました。
今回、岡本さんはみずからが取り組んできた研究開発が生かせると考えてRapidusへの入社を決めたということで、岡本さんは近く、アメリカのIBMの研究所に派遣される予定です。
岡本さんは、「ロジック半導体に思い入れがあったが、研究に関わることができず寂しいと思っていました。日本でもさらに回路の幅が微細な先端半導体の開発ができるとわかり、千載一遇のチャンスだと感じました」と話しています。
そのうえで、「簡単ではないということはわかっていますが、今までの蓄積がない訳ではないので仲間と一緒に量産の成功につなげていきたい」と意欲を示しています。
#先端半導体(「Rapidus」新工場・起工式)
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— 平嶋夏海🏍🧸 (@nacchan_h0528) September 1, 2023
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