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日銀の植田和男総裁は19日の会見で、マイナス金利解除の時期や具体的な要件について言質を与えず、市場の警戒感は大幅に後退した。だが、植田総裁は物価目標達成への確度は少しずつ高まっているとも指摘。注目材料の一つとしてサービス価格の上昇を挙げた。来年の春闘で大幅な賃上げが実現できれば、物価高で伸び悩む動きも見える消費などにも好影響が出るとした。マイナス金利解除への条件が整いつつあることもにじませた。

筆者は来年1月解除の可能性は低下したものの、4月解除の可能性は相応にあるとみている。ただ、米利下げの時期や裏金問題で揺れる政局が大幅に混乱した場合は、4月以降に先送りされる波乱要因も残されていると指摘したい。

<低下した1月政策修正の可能性>

マイナス金利の早期解除の可能性が後退したとみて、20日の東京市場は株高・円安・債券高で反応した。確かに植田総裁は「物価と賃金の好循環については、なお見極めていく必要がある」「(好循環の確度は)総合判断にならざるを得ない」と述べて、慎重に見極める姿勢を示すとともに、いつごろに何を見て判断するかについて明確な言及を避けた。

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さらに来年1月会合でのマイナス金利解除の可能性については「1月会合までの新しい情報次第にならざるを得ないが、新しいデータはそんなに多くない」とも述べた。1月会合での解除の可能性を全く否定しているわけではないものの、筆者は可能性が大幅に低下したと感じた。

<着実に上昇するサービス価格>

だが、植田総裁は「目標達成への確度は少しずつ高まっている」と述べつつ、マイナス金利解除への条件が次第に整いつつある現象にも言及した。

その一つがサービス価格の上昇。植田総裁は「第2の力は、サービス価格が緩やかに上昇していること等から判断して、少しずつ上昇が継続しているとみている」と指摘した。第2の力とは、物価を押し上げる要因のうち、賃金と物価の好循環を示す部分を指し、日銀が注視している動きだ。

10月全国消費者物価指数(CPI)をみると、サービス価格の実勢に近い「持ち家の帰属家賃を除くサービス」は前年比3.1%まで上昇。一般サービスも同2.9%の上昇だった。1年前は1%付近かそれ以下の水準だったことを考えると、サービス価格の上昇は持続性が出てきた可能性がある。

また、植田総裁は労働需給の引き締まりや企業収益の拡大にも触れたが、12月日銀短観における雇用人員判断の大幅な不足や高水準になっている売上高経常利益率の来年度計画をみても把握できる状況となっている。

さらに実質賃金がマイナスのままでマイナス金利解除の可能性があるのかとの質問に対し、植田総裁は「先行き賃金上昇が続き、インフレ率が低下を続けて実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足元の状況は必ずしもマイナス金利解除の障害にならない」と答えた。

他方、植田総裁は「先行きの不確実性が高く、来年の賃上げを固められない先も多い。価格設定行動でも、中小企業などから販売価格転嫁は容易でないとの声もある」と指摘した。

こうした発言を総合して判断すると、3月中旬に出る大手製造業の一斉回答の結果などを待って、4月25、26日の金融政策決定会合でマイナス金利解除を決める可能性があると予想する。

<米利下げと円高

ただ、このシナリオには三つのリスクがある。一つは米利下げの可能性だ。植田総裁は、米利下げが予想される際は「米国の供給サイドが改善する中で、物価上昇率が低下し続け、所得と支出の好循環でソフトランディング期待もある。それ自体は日本にプラスの影響ある」「各国独自の情勢を踏まえ、日銀としても適切な政策運営をしていく」と述べ、日銀の金融政策の制約要因にはならないとの見解を示した。

だが、市場が日米金利差の縮小を円高要因としてみているため、米利下げが始まると、その動きを先取りするように円高方向へのシフトが急速に進む可能性がある。そこに日銀のマイナス金利政策解除が加わると、さらに円高が進むとの懸念も生じやすい。

もし、3月に米利下げが開始されると、4月の日銀会合前に円高が進む可能性も捨てきれず、日銀が政策変更を先送りする要因の一つにはなり得ると考える。

<外需の暗雲と10―12月期GDP>

二つ目は、日本の輸出企業の動向に陰りが見え、来年2月に公表予定の2023年10─12月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになるリスクだ。20日公表の11月貿易収支では、輸出が前年比マイナス0.2%と小幅に落ち込んだが、数量ベースでは同マイナス5.6%と落ち込みが目立った。特に欧州連合(EU)向けは同マイナス11.8%、中国向けが同マイナス7.5%と振るわなかった。

このまま輸出不振が継続した場合、10─12月期GDPがマイナスになる可能性もあり、直近のGDPの落ち込みは、日銀の判断に大きな影響を与える可能性がある。

<政局大混乱の波紋>

三つ目は政局の大混乱だ。東京地検特捜部が自民党清和政策研究会(安倍派)と志帥会二階派)の事務所に強制捜査に入り、裏金問題が大疑獄事件に発展しかねない情勢となっており、内閣支持率が急低下している岸田文雄首相の前途にも暗雲が垂れ込めている。

仮に来年3月末の2024年度予算案の成立を契機に、自民党内で「人心一新」の声が高まった場合、岸田首相の進退が極まる可能性もゼロとは言い切れない。そうした政局の大混乱時には、日銀が事態を静観するということが予想され、マイナス金利解除の決断は先送りされることもあり得ると筆者は考える。

来年の上半期は、日米金融政策の動向と日本の政局の行方が複雑に絡み合いながら、大きなうねりを生じさせる「大転換」の局面を迎える可能性がありそうだ。

#日銀(コラム:サービス価格上昇に注目した植田総裁、4月政策修正に3つのリスク)

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#アベノミクス#リフレ#金融政策#円安政策(西野智彦『ドキュメント異次元緩和—10年間の全記録』)

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#日銀(金融政策決定会合・231219・ 大規模金融緩和策維持)
#日銀(【記者会見】植田総裁(12月19日分))
#日銀(金融政策決定会合・231219・ 植田総裁「2%の物価安定目標が実現する確度は少しずつ高まっている」「なお見極める必要がある」「次回・来月の会合に向けては、日銀支店長会議を通じた地域経済の情報などを分析して金融政策を判断する」「新しいデータはそれほど多くない」)