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米国では大手小売り各社が値下げに動き、個人消費の減速を物語る新たなデータが出てきた。これにより連邦準備理事会(FRB)は、物価上昇率が下振れしているとの自信を強め、新型コロナウイルスパンデミック以降ずっと続いていた付加価値における企業利益の割合拡大傾向に歯止めがかかるかもしれない。

4月は実質ベースの個人消費可処分所得がともに小幅減少した。商務省が5月30日に発表した第1・四半期国内総生産(GDP)改定値は成長率が速報値から下方修正されたが、その主因は個人消費の減速。そしてFRB物価上昇率を2%の目標に収める上で重要とみなしているのが、まさにこの動きだ。

FRBが物価目標の基準としている個人消費支出(PCE)物価指数は、5月31日発表の4月分の前年比上昇率が2.7%で、3月と同じ伸びだった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPCE物価指数の前年比上昇率も、3月に続く2.8%となった。

政策担当者は、2022年6月に7%を超えてピークをつけた物価上昇率が着実に鈍化してきた流れが足元で停滞しているのではないかと心配している。

ただ改善の兆しも見えてきた。コア物価上昇率は前月比では予想を下回っているし、実質ベースで消費と所得がともに減少したことから、経済成長と物価上昇にブレーキがかかってきた状況が確認できる。

RSM・USのエコノミスト、チュアン・ヌグイエン氏は「米国家計のバランスシートはなおしっかりしているというのがわれわれの意見だが、裁量的支出の比率はかなり低下しつつある」と述べた。この観察は、娯楽用品などの支出が鈍り、住居費や公共料金向けの支出が増えているという最新データと合致している。

同氏は物価と消費に関するリポートで「米経済が軟着陸に向かってクールダウンを続ける確率はより高まっている。これはFRBが数十年来の高水準に金利を維持するタカ派的姿勢を見直す理由になる。今のようなデータがあと数カ月続くようなら、FRBの行動(利下げ)は遅くなるより早まると思う」と分析した。

市場では利下げ開始は早くて9月と予想されているが、FRBは明確な時期を提示することには及び腰。労働市場と経済全般が堅調な限り、特に物価情勢に難を抱えている局面では急いで利下げする必要はないというのが代表的な見解だ。

何人かの政策担当者は問題の一つとして、物価全体のうち前年比上昇率が3%を超えるモノとサービスの割合が4月でもなお約55%と、パンデミック前のほぼ2倍の高さになっている点を挙げている。

<変わる企業行動>

とはいえ変化が訪れるかもしれない。

ターゲット(TGT.N), opens new tabやウォルマート(WMT.N), opens new tabといった小売り大手は食品その他の生活必需品の値下げに動いている。薬局のウォルグリーン(WBA.O), opens new tabも、顧客の懐事情が苦しくなっていることを理解するとして値下げを打ち出した。

FRBの見立てでは消費者全体で考えると、低失業率と賃金上昇を背景に健全さを保っているが、低所得層の間ではローンのデフォルト(債務不履行)率の高まりやクレジットカード借り入れの増大など緊張の兆候が出てきている。

企業サイドにも、FRBが期待してきた変化が表れ始めた可能性がある。つまりパンデミック期間に見られた価格決定力とそれによる収益力が弱まり、市場シェア獲得競争を強いられるという展開の始まりだ。

ここ数カ月のFRB当局者の発言を踏まえると、彼らは企業が全般的に過去2年に比べ値上げする力が衰えてきたという変化を感じ取っているもよう。直近の地区連銀景況報告(ベージュブック)では、消費者の選別的な支出行動がより鮮明化し、それが企業に重圧となっていると指摘された。

LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は「消費者は以前に比べて価格志向を強めており、企業の利益率を圧迫する公算が大きい。一部の消費者がしつこい物価高に苦しむ中で、(企業の間では)値下げや販売促進のインセンティブが今後拡大するはずだ」とみている。