アングル:食糧危機のナイジェリア、経済改革強行で物価高騰 https://t.co/BzmFbG3pCQ https://t.co/BzmFbG3pCQ
— ロイター (@ReutersJapan) August 23, 2024
ナイジェリア最大の都市ラゴスに住むボラ・アデシヤンさん(55)が最後に食事をしたのは16時間前で、空腹に耐えている。気を紛らわすために近所の繁華街を散歩して帰宅すると少量の水を飲み、その後は屋台で売れ残った豆やパンを代金後払いで受け取るまでじっと安静にしている。
アデシヤンさんはこれらを、朝方5枚のビスケットを全員で分け合ってから何も口にしていない3人の孫とともに食べる。彼女が3人の孫、その母親のエスザーさんと暮らすのは、ベットルーム1つだけのアパートだ。
コックとしてのアデシヤンさんの稼ぎは週に1万ナイラ(6.49ドル、約950円)だが、家族の1週間分の食料を用立てるにはとても足りない。
アデシヤンさんは「今年になって自宅で最後に夕食を取ったのがいつだったか思い出せない。キャッサバ(イモ類の一種)が毎日一食手に入れば、良い日になる」と語った。
ナイジェリアではアデシヤンさんを含めて何百万もの家族がこうした飢えに苦しんでいる。全面的な経済改革を強行した結果として、物価全般が跳ね上がる過去最悪のインフレに見舞われているからだ。
昨年5月に就任したティヌブ大統領は、燃料と電力の補助金制度を廃止するとともに、外国からの投資呼び込みや、インフラ整備予算確保のために通貨ナイラの対ドル相場を切り下げた。
ナイラの急落に伴ってガソリン価格は3倍になり、食品価格も高騰。ティヌブ氏は穀物の国家備蓄を放出して空腹状態の世帯に食料を供給せざるを得なくなった。
もはや現在のナイジェリアは、コメや豆、パンといった主食はぜいたく品になり、今月には困窮した人々の全国的な抗議行動が発生。人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、デモ隊と警官隊の衝突で少なくとも22人が死亡した。
エスザーさんはトムソン・ロイター財団に、学校の清掃員として毎月稼いでいる6万ナイルのうちの半分は交通費に消えると明かした。補助金廃止でガソリン価格が1リットル当たり165ナイラから600ナイラに急上昇したためだ。
残りが子どもたちの食料に回されるが十分な金額とは言えない。
アデシヤンさんは、電力料金も3倍になって払えなくなったと話す。「コメと豆の缶詰、幾つかのトマトを買って、調理用のガス料金を足せば全てなくなる。電力料金の支払いを再開する前に、まず食べていかなければならない」という。
<治安問題や気候変動が追い打ち>
経済改革がもたらした危機は、北部の食料生産地帯の農場が武装集団に襲撃され続けていることでさらに悪化。別の地域でも、気候変動に起因する洪水や干ばつで収穫が打撃を受け、物価高を通じて多数の人々を飢餓に陥らせている。
国連世界食糧計画(WFP)のナイジェリア事務所長を務めるデービッド・スティーブンソン氏は「経済改革は低所得層の栄養補給能力に多大な影響を及ぼした。物価高でこれほどに人々が市場から退出を迫られる光景は見たことがない」と述べた。
スティーブンソン氏によると、今年アフリカ西部で食料安全保障が危機レベルに直面している5500万人のうち、3200万人はナイジェリアの人々で、その人数は昨年の2500万人から増加した。
同氏は、ナイジェリアの食品価格上昇率は年間40%と、同国として過去30年前後で最も高く、アフリカ地域でも一番高い伸びだと指摘する。
今月の抗議行動の参加者は、ティヌブ氏にガソリンと電力の補助金復活を求めたが、ティヌブ氏は改革の成果が出てくるまでもう少し我慢してほしいと呼びかけた。
アデシヤンさんの近所の人たちは抗議行動に加わったが、彼女は暴動に転じるのを恐れて静観を決めた。今は孫たちも1日3食は期待できないと分かるようになっている。
ただ、とても硬いが安い燻製の牛皮をコメとともに食べるのを嫌がる孫たちに、アデシヤンさんも慰めの言葉を見つけられずにいる。「ナイジェリアは昔とは違ってしまったと伝えている。1日1食でも摂ることができれば幸運なのだと知らせたい」という。
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