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米連邦準備理事会(FRB) のパウエル議長によるジャクソンホール会合での講演で、9月6日と18日が近年の米金融政策において最も重大な日となった。両日とも、FRBが政策運営における新たな指針の中心に据えた失業率に関係するイベントだからだ。

9月6日は8月の米雇用統計が公表される。18日は次回連邦公開市場委員会(FOMC)2日目で、政策金利の決定とともに最新の経済物価見通しが明らかになる。

FRBが9月FOMCで利下げを決めることは、パウエル氏や他の幹部が示唆しているようにほぼ確実だろう。残された疑問は、最初の利下げ幅が25ベーシスポイント(bp)と50bpのどちらになるのか、また当面どの程度利下げが進むのかになる。

そして9月6日と18日を終えれば、投資家はその答えを得られるはずだ。

<インフレから失業へ>

パウエル氏は講演で、2つの点で実質的な姿勢転換を見せた。1つ目は大方の予想通り、利下げが近いとはっきりシグナルを送ったこと。もう1つは多分それほど想定されていなかったが、今後の政策決定で最も重要視する事象がインフレから失業に移行した、とやはり明確に発信したことだ。

FRB労働市場環境がさらに冷え込むのを目指さないし、歓迎もしない」というパウエル氏の警告は基本的に、現在の4.3%という歴史的に見るとなおかなり低い失業率に「防衛ライン」を設定したことを意味する。つまり失業率がこれを上回れば、政策対応に動く公算が大きい。

ダイナミック・エコノミック・ストラテジーの創設者ジョン・シルビア氏は「FRBの2つの使命のうち、今は失業率の比重が90%前後を占め、インフレは10%程度になっている」と分析。景気後退が現実化していないことを考えると、パウエル氏が政策運営の軸足をインフレから失業に転換したのは驚くべきことだと付け加えた。

<2つの失業率>

当然ながら労働市場、ひいては経済全体が強いか、そうでないかを判断する指標は1つではない。名目ベースの雇用の伸びもあれば、労働市場の参入・退出人口、また新型コロナウイルスパンデミック以降にFRBが重視する雇用動態調査(JOLTS)における離職者と求人件数もある。

しかし一般の人々や市場全般、政治家にとって、労働市場がどの程度しっかりしているかを最もわかりやすく把握できるのは失業率だ。足元では大統領選が佳境を迎えている面からも、失業率の重要度は倍増している。

7月の失業率は0.2ポイント上昇の4.3%と2021年10月以来の高水準。これにより、直近3カ月の平均失業率が過去1年の最低より0.5ポイント高くなった場合、景気後退入りのサインだとする「サーム・ルール」が発動された。

同ルールを考案した経済学者クラウディア・サーム氏は、景気後退は不可避だとの主張にこそ否定的だが、失業率上昇は懸念要素だと指摘する。いったん上昇の勢いが生まれた場合、簡単にはブレーキがかからず、低下に転じる公算はもっと小さいからだ。

さらに現在の失業率は、FRBが6月に公表したFOMCメンバーが想定する長期的な失業率の中央値(4.2%)を上回った。FRBがこうした想定を四半期ごとの経済物価見通しに盛り込み始めた2015年以降、主要な政策変更のタイミングは常に、実際の失業率とFRBの長期的な失業率見通しが交差した時期と一致していた。

本格的な利上げを開始した2016年終盤、パンデミックによって政策金利をゼロまで引き下げた2020年初め、直近の利上げサイクルを開始した2022年初めは、いずれもこれに当てはまる。

だからこそ、最新の失業率とFRBの長期的な失業率見通しが近日中に判明することがいかに重要か分かる。どちらかに変化が起きれば、年内から来年序盤にかけてのFRBの政策経路を探る上で有効な手がかりになるだろう。

<積極利下げの条件>

市場ではFRBの利下げ幅について年内は100bp、来年も少なくとも100bpと見込まれている。また金利先物は、次回9月の利下げ幅を基本的に25bpと想定しているが、50bpの確率は33%程度あるとみている。

そこで9月6日に失業率がまたしっかりと上昇すればどうなるだろうか。次回FOMCで50bpの利下げにお墨付きが与えられ、その後も50bpの追加利下げの可能性が大きくなっても不思議ではない。

ただこのような規模とスピードを伴う利下げは、FRBにとっても実行するのも情報発信するのも容易ではない。同じぐらい大事なのは、そうした動きは、米経済が本当に景気後退へ足を踏み入れ、市場に広がっている「ソフトランディング」シナリオが完全に崩壊した場合だけになるだろうという点だ。

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