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退役した米軍高官10人は9日、米大統領選で民主党候補のハリス米副大統領を支持する書簡を公表した。ハリス氏が国家の最高司令官にふさわしい唯一の大統領候補であるとする一方、共和党候補のトランプ前大統領については 「国家安全保障と民主主義上の危険だ」と批判した。

書簡はハリス、トランプ両氏による10日夜の討論会を前に公表され、新しい選挙広告を打ち出したハリス氏陣営は、Xにこの書簡を投稿した。

書簡では、トランプ氏には大統領在任中に軍人を侮辱するような発言があったと指摘。2021年の米軍のアフガニスタン撤退前には、タリバンとの交渉で5000人の戦闘員が戦場に復帰することを認めるなど 「混乱したアプローチ」があったことを明らかにした。

一方、ハリス氏に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻やインド太平洋地域での中国との緊張など「危機管理的にも国際的にも、最も困難な国家安全保障上の課題に対応する能力を示してきた」と評価した。

ハリス陣営は今回の選挙広告で、ペンス前副大統領などトランプ政権時の高官らがトランプ氏の2期目が実現すれば大きなリスクをもたらすと警告する内容の映像を公開した。

10日には、アフガン撤退の際に死亡した米軍人13人を追悼するため、ジョンソン下院議長によるメダルの授与が予定されている。トランプ氏と共和党はアフガン撤退を巡ってハリス氏の責任を追及しようとしてきた。ただ、退役軍人らは書簡の中で、トランプ氏が「軍人を危険にさらした自身の役割に責任を取らなかった」として非難している。

アメリカ大統領選挙に向けたハリス副大統領とトランプ前大統領によるテレビ討論会が日本時間の11日、行われます。両者が直接、論戦を交わすのは初めてで、対決の行方に大きな関心が集まっています。

11月のアメリカ大統領選挙に向けたハリス副大統領とトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会は、日本時間の11日午前10時から東部ペンシルベニア州最大の都市、フィラデルフィアで行われます。

討論会はことし6月にバイデン大統領とトランプ氏の間で行われた時と同じく、観客は入れず、司会と候補者だけで討論を進めることになっています。

ハリス氏はこれまでの演説で「トランプ氏は国を過去に引き戻そうとしている」などと批判してきたほか、中間層を重視する姿勢を打ち出していて、トランプ氏との違いを強調しながら自分には大統領職を担う能力があるとアピールしたい考えです。

一方のトランプ氏は、インフレへの対応や移民政策で、ハリス氏が成果をあげられず、状況を悪化させたと批判し、自身の大統領時代の成果を強調するとみられています。

6月の討論会では、バイデン氏がことばに詰まるなど精彩を欠き、選挙戦からの撤退に追い込まれるきっかけとなりました。

全米を対象にした各種世論調査の平均ではハリス氏とトランプ氏の支持率はきっ抗していて、討論会を通じてどちらが流れを引き寄せられるか対決の行方に大きな関心が集まっています。

米大統領選の民主党候補、ハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領は10日、初のテレビ討論会で対決する。

ハリス氏にとっては、政策の優先順位を示すとともに、自身の知性を侮蔑し、人種差別的、性差別的な攻撃を浴びせるトランプ氏をはね返す強さを見せる機会だ。

トランプ氏にとっては、ハリス氏の勢いを鈍らせるチャンスとなる。

大半の世論調査では、全米および激戦州の半数超でハリス氏がやや優勢だが、トランプ氏も11月5日の選挙で勝てる距離に付けている。

討論会は一般に、選挙に非常に大きな影響を及ぼす可能性があり、両候補にとっては今回が唯一の討論会になる可能性もある。バイデン大統領は6月の討論会で失敗し、選挙戦から降りることになった。しかし2016年、ヒラリー・クリントン氏はトランプ氏との3回の討論会全てで相手を打ち負かしたと見られていたにもかかわらず、選挙ではトランプ氏が勝利した。

今回の討論会の見どころを紹介する。

<変化をアピール>

両候補とも、自分こそは現状を覆す「チェンジ」をもたらす候補だとアピールしている。現副大統領と前大統領の対決であることを考えれば、やや逆説的な話だ。

ハリス氏は、バイデン政権の失策に引っ張られず、その功績に貢献した実績を訴える一方で、自身が大統領になれば米国が新たなスタートを切るとも示唆している。

トランプ氏は2017年から21年まで4年間大統領を務めたにもかかわらず、首都ワシントンの体制に反旗を翻す反乱分子のように装っている。

しかし同時に、ハリス氏よりも国際舞台での経験が多いことを誇示し、例えば自分ならウクライナやガザでの紛争を終結させ、核武装した北朝鮮やイランから米国を守ることができると約束している。

<個人攻撃>

ハリス氏が候補者となって以来、トランプ氏は彼女の家系の信憑性に疑問を呈し、演説やソーシャルメディアへの投稿で個人攻撃を繰り返してきた。

討論会でこうした攻撃を繰り返せば、投票先を決めていない有権者、特にトランプ氏が大統領にふさわしい気質を備えているのかと疑問視している有権者を遠ざけることになりかねない。

2016年のクリントン氏との討論会では、トランプ氏は頻繁に激怒し、司会者の話をさえぎり、指を指して彼女をののしった。2020年にはバイデン現大統領に同じ戦術を試みて何度も話をさえぎり、バイデン氏に「黙ってくれないか」と言わせた。

ハリス氏はこれまで、トランプ氏の個人攻撃をおおむね無視してきた。トランプ氏が討論会に個人攻撃を持ち込んだ場合、ハリス氏がどう対処するかに注目する視聴者もいるだろう。

トランプ氏との対照を際立たせたいなら、ハリス氏は同じ土俵に引きずり込まれない姿勢を示す必要がある。

<チャンス>

この討論会は、テレビを見守る何百万人もの国民に対し、ハリス氏が自身の政治的アイデンティティーを確立するチャンスだ。
有権者の間では「バイデン氏とトランプ氏の再対決はうんざり」という声が繰り返し聞かれていただけに、ここ数回の大統領選の民主党候補に比べて知名度が低いことは、ハリス氏にとって大きな武器になるかもしれない。

カリフォルニア州司法長官であるハリス氏にとっては、検察としての手腕を発揮する舞台にもなる。2021年の連邦議会議事堂襲撃事件に際し、トランプ氏が取った行動などの責任を追及することができるだろう。

法廷での経験豊富なハリス氏は、6月の討論会におけるバイデン氏よりも効果的に、トランプ氏の虚偽にリアルタイムで反論できるかもしれない。

トランプ氏にとって今回の討論会は、ハリス氏は国政を運営する準備ができておらず、自分の方がその仕事に適任だと主張する絶好のチャンスだ。

トランプ氏はおそらく、バイデン政権の国境警備政策をめぐってハリス氏を攻撃するだろう。国境警備政策は今年初めに強化されたが、それまで政権は記録的な数の移民流入を阻止できなかった。トランプ氏は、物価高によって中間層の暮らし向きが厳しくなったとも主張しそうだ。

トランプ氏はまた、混乱に満ちた2021年の米軍のアフガニスタン撤退に対するハリス氏の責任を追求する可能性もある。「喜び」や「バイブス(雰囲気)」に頼る選挙戦を展開してきたハリス氏に、国の最高司令官になる準備はあるのかと疑問を投げかけるだろう。
<弱み>

民主党は数カ月前から、トランプ氏には権威主義的傾向があり、民主主義にとって危険だと主張してきた。ハリス氏はこの路線を繰り返すだけでなく、政策面でトランプ氏の最大の弱点のひとつである人工妊娠中絶への反対姿勢についても強く追求する可能性がある。
ハリス氏はおそらく、人工中絶権を合憲とした判断を連邦最高裁が覆したことについて、判事を任命したトランプ氏の役割を強調し、同氏が大統領に返り咲けば女性の生殖の権利がさらに縮小されると警告するだろう。

ハリス氏の側近や参謀らによれば、同氏はまた、国境の壁、インフラ、新型コロナウイルスパンデミックに関するトランプ氏の大統領在任中の失敗に焦点を当てる見通しだ。
ハリス氏は、トランプ氏が企業に減税というばらまきを行い、最低賃金の引き上げに反対したとして、在任中の経済政策についても非難する可能性がある。

ハリス氏はまた、保守派のヘリテージ財団が打ち出した政策案「プロジェクト2025」とトランプ氏を結びつけようとするかもしれない。このプロジェクトは大統領の権限を乱用するものだとの批判があり、トランプ氏は距離を置こうとしている。

不倫口止め料不正処理事件でトランプ氏が有罪の評決を下されたことや、同氏の性的暴行疑惑を持ち出す可能性もある。

一方トランプ氏は、民間医療保険の廃止や、大規模なクリーンエネルギー計画である「グリーン・ニューディール」など、ハリス氏が2020年の大統領選時には支持していたが現在は支持を撤回しているリベラルな政策を視聴者に思い出させる可能性がある。

ハリス氏が無党派層や投票先を決めていない有権者の支持を得るには、こうした疑問への強力な回答が必要だ。同氏はこれまで、大統領就任に向けた大まかなビジョンしか描いてこなかったが、トランプ氏と司会者らはもっと詳細な説明を迫るかもしれない。

一方、急伸左派の有権者は、ガザ紛争などの重要な問題でハリス氏の見解がバイデン氏と異なるかどうか、そして停戦合意に向けてイスラエル政府により強い圧力をかける意思があるかどうかにも注目するだろう。

2016年の大統領選挙を控えた2回目の候補者討論会。ドナルド・トランプ氏はヒラリー・クリントン氏に忠告した。自分が大統領になったら司法省による追及が待っているぞと。

  「トランプ氏のような気性の持ち主が米国の法律を担っていないことに、心から安心する」とクリントン氏は返した。

  トランプ氏はすかさず「それはあんたが刑務所に入るからだよ」と、ささやくような低い声で言い返した。ラスベガスのショーを取り仕切る司会者のような芝居じみた言い方は、たちまちその場にいた支持者の歓声と拍手を引き起こした。

  討論会のセッティングはリアリティー番組のスターだったトランプ氏に有利だった。マイクは常に2人の音声を拾っており、生中継の会場には聴衆もいた。トランプ氏は舞台を自由に歩き回り、時にはクリントン氏のすぐ背後で同氏をにらみつける場面もあった(世論調査クリントン氏が3回の討論会全てを制したとしていたが、実際の選挙はそうならなかった)。

  このトランプ氏とハリス副大統領は10日夜、フィラデルフィアで討論する。しかしハリス氏が相手にするトランプ氏のパフォーマンスは、8年前とは異なる。マイクは常にオンではなく、聴衆もいない。回答も反論も2分に限定される。候補者はいずれも演壇を離れてはならない。

  78歳のトランプ氏はこの8年間で老け込み、見た目にもそれが表れている。聴力は低下し、姿勢は前かがみになり、話し言葉も聞き取りにくいことが多い。何十年も前から思うままに言葉をまき散らしていた人が、最近では何かを聴衆に説明しようとして理解不能な言葉の羅列になってしまうようになった。

  10月に60歳になるハリス氏が背負うのは、6月に行われたバイデン大統領とトランプ氏の討論会が有権者に残した記憶だ。バイデン氏の無残な様子が候補者交代につながり、米国はハリス対トランプという歴史的にも重大な大統領選挙を迎える。多くの有権者にとってハリス氏は未知の部分が多い。しかしハリス氏は本物のモメンタムを持ち合わせている。それはセレブを自負するトランプ氏がねたみ、恐れるカリスマ性とスター性だ。

  選挙そのものにおいて討論はさほど重要ではないというのが、一般的な認識だ。しかし時にこれが勝運を左右する。だからこそ両陣営は真剣に取り組んでいる。

  トランプ氏はいつものように攻撃的で、偽情報にまみれ、人を見下し、大げさに振る舞うだろう。それこそ同氏の支持層が求めている姿だ。陣営はトランプ氏の優しい面が討論で出てくることを望んでいる。共和党の全国大会で、分裂ではなく統一をもたらすトランプ氏を期待していたアドバイザーたちと同じだ。その期待は裏切られ、党大会は分裂をもたらすトランプ氏で閉幕した。10日の夜は、悪意に満ちたトランプ氏が見られるだろう。

  ハリス氏はこの討論会で主導権を握りたければ、少なくとも以下のことに留意してほしい。

1)分割画面を意識せよ:90分の討論会中、カメラはずっと候補者を撮影している。話していないときの表情も注目される。その動画はネットで拡散される。6月の討論会でバイデン氏はゾンビのように見えた。始まって10分か15分で、バイデン氏再選のチャンスは遠のいた。いつもは自制から程遠いトランプ氏は、でたらめな話を続けたにもかかわらず、このときは自制を効かせているように見えた。ぼやけた受け答えに自制が勝利した討論だった。選挙遊説でのハリス氏はてきぱきと、楽観的で、情報通であり、常に完璧な話しぶりだ。その姿こそ分割画面の片側に映し出されるべきだ。

2)攻撃は最大の防御なり:全てのコメディアンと同様、トランプ氏は聴衆の前では気分が乗り、自分の話しぶりを楽しむ。同時に動揺することも多い。うそつき呼ばわれされても構わないが、変人扱いされることは気にする。道化のレッテルを貼られても気にしないが、無能と見られることは恐れる。独裁者にこびへつらうと言われても平気だが、憲法をないがしろにしたと言われると冷静さを失う。大統領職の法的権限を乱用していると言われても構わないが、無法者呼ばわりは気に障る。見た目で人を攻撃することをいとわないが、元気のない高齢者と評されるのは嫌だ。自分が大統領だった時に米経済はブームを迎えたと好んで繰り返す。以前からハリス氏を気に入らないと思っていたトランプ氏だ。ハリス氏が討論で痛いところを突けば、トランプ氏はバランスを失って倒れる。ハリス氏はそのような攻勢に出るべきだ。

3)司会者は適度に無視して構わない:討論相手を繰り返し侮辱したり、司会者の質問を全部無視したりするのは別として、たいていの脱線には視聴者は寛容だ。2020年討論会では汗だくで好戦的なトランプ氏がバイデン氏の話を延々と遮り反感を買ったことが、バイデン氏勝因の一つだった。あの場所ではバイデン氏だけが大人だった。司会者の指示をトランプ氏より頻繁に受け入れつつ、質問から逃げたり話をそらしたりするタイミングを分かっていた。ハリス氏も同じことができる。

4)得意の議題で戦え:人工妊娠中絶とリプロダクティブライツ(女性の性と生殖に関する権利)は、民主党およびハリス氏が勝てる分野だ。トランプ氏はこれまでにこの議題に関して何度も見解を翻し、もはや何が本当の姿勢なのか信頼できなくなっている。ハリス氏は自らこの議題を提起するとともに、検察官としての実績や犯罪と法務執行に対するビジョンを強調するべきだ。移民問題民主党のアキレス腱(けん)になっているが、これを逆手に取る反撃の手段がある。超党派でまとまった移民法案をトランプ氏が身勝手な政治的理由でつぶしたこと、そしてバイデン大統領による最近の亡命規制強化で国境地域の問題が沈静化したことを有権者に思い出させることだ。新型コロナ禍後の医療に対する健全なアプローチも指摘に値するだろう。人種とジェンダー、富の不平等への対応も然(しか)り。ハリス氏は成熟した判断能力とアメリカンドリームへの楽観、未来志向というメッセージを運ぶ。喜びとチャンスというカードは常に強力な切り札だ。

5)激戦州の有権者を忘れるな:先に挙げたポイントと関連するが、この選挙戦は最初から、激戦6、7州の有権者と浮動票の奪い合いだ。しかし最大の争点は常に経済だった。もちろん有権者が気にしている問題は複数ある。しかし経済が安定トップの位置にある。インフレは多くの有権者が生活の苦しさ実感する指標であり、経済全体の一面を成す。トランプ氏は間違いなくこの問題で攻撃を続けながら、移民が米国を侵略するという恐怖をあおるだろう。ハリス氏には経済のデータと現実という味方がいる。ゴールドマン・サックスが最近明らかにした予測では、「ハリス政権」下の米国は「トランプ政権」より好調な経済を享受する。ハリス氏はその旗を振るべきだ。

6)トランプ氏のためのトランプ氏:トランプ氏は公僕でもないし、国民を癒やす存在でもない。有権者より常に自分を優先する。これまでに無数の約束を破ってきた。ハリス氏は討論を通してトランプ氏の自己陶酔といかさまぶりを露呈させるべきだ。

7)強気で臨め:トランプ氏は討論会の準備に副大統領候補のバンス上院議員のほか、ゲーツ下院議員、ギャバード元下院議員を起用して準備している。これだけでも、ハリス氏は気持ちが楽になるはずだ。

(ティモシー・オブライエン氏はブルームバーグ・オピニオンのシニアエグゼクティブエディター。米紙ニューヨーク・タイムズの元編集者・記者で、著書に「TrumpNation: The Art of Being the Donald」。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

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原題:7 Tips for Harris to Win Her Debate With Trump: Timothy O’Brien(抜粋)

11月のアメリカ大統領選挙に向けたハリス副大統領とトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会が、日本時間の11日に行われます。討論会を前に両陣営がそれぞれ相手を批判する声明を発表するなど、対決ムードが高まっています。

テレビ討論会は日本時間の11日午前10時(現地時間の10日午後9時)から、東部ペンシルベニア州最大の都市フィラデルフィアで行われます。

討論会を翌日に控え、ハリス氏はフィラデルフィア政府専用機で到着しました。

ハリス氏の陣営は声明を発表し「討論会に向けて過激で正気を失ったトランプ氏は、復しゅうと報復の危険な脅しを強めている」と指摘するとともに、「国民はトランプ氏の独りよがりの復しゅうを拒否し、前向きなビジョンを持つハリス氏を選ぶことになる」と強調しました。

一方、トランプ氏の陣営も声明を発表し、「ハリス氏は党の候補者に指名されて以来、単独でのインタビューや記者会見を行っておらず、厳しい質問に答えるのは討論会が初めてとなる。副大統領として、われわれの経済に与えた損害を説明し、何も新しい計画を実行しなかった理由を答えなければならない」として、バイデン政権の副大統領としての責任などを追及する構えを示しました。

投票日まで2か月を切る中、どちらの候補者も、全米に生中継される討論会を通じて流れを引き寄せたい考えで、対決ムードが高まっています。

討論会 一時調整は難航

ハリス副大統領とトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会は、予定された日程での開催が一時、不透明になるなど、調整は難航しました。

9月10日の討論会はもともと、選挙戦から撤退する前のバイデン大統領と、トランプ氏との間で合意していたもので、ハリス氏も党の候補者に指名される見通しとなって以降、予定どおりの日程で出席する考えを示しました。

これに対してトランプ氏側は、ハリス氏が党の候補者に正式に指名されるまで開催を確定できないと表明したほか、討論会を主催するABCテレビは政治的な立場が偏っているなどと主張し、開催が不透明になりました。

トランプ氏は8月8日になって9月10日の討論会に応じる意向を示し、開催に向けて調整が進み始めました。

討論会のルールは?

今回の討論会は、6月にCNNテレビが主催したバイデン氏とトランプ氏による討論会と同様に、観客を入れずに行われることになりましたが、ルールを定める過程で、発言が求められていない側の候補者のマイクの音を切るかどうかで両陣営が対立し、注目されました。

6月の討論会では、前回2020年の選挙戦での討論会で、トランプ氏とバイデン氏が互いに相手の発言を遮るなどして非難の応酬になったことを念頭に、候補者が質問に答えている間、もう一方の候補者のマイクを切る措置がとられました。

ところが今回、ハリス陣営が、マイクは常にオンのままにするべきだと主張したのです。

背景には、6月の討論会で一方の候補者のマイクを切るルールが取り入れられたことで、トランプ氏がバイデン氏の発言を遮ろうとしても音が拾われず、結果的としてトランプ氏を利する形になったとハリス陣営が判断していると見られることがあります。

トランプ氏自身は今回、「マイクを切ってもかまわない」と発言したものの、トランプ氏の陣営は当初の案どおり、一方の候補者のマイクを切るべきだと主張し、結局ハリス陣営が主張を取り下げる形になりました。

ABCテレビによりますと、討論会は1時間半にわたって行われ、2回のテレビCMの休憩を挟みます。

会場となるのは、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるアメリ憲法の歴史などを学べる施設で、司会2人と候補者だけで討論を進めることになっています。

候補者が1つの質問に答える時間は2分間です。候補者にはペンとメモ用紙、それに水が用意されますが、事前に準備したメモ書きを持ち込むことはできず、テレビCMの際の休憩時に陣営のスタッフと接触することもできません。

討論会はABCテレビのネットワークを通じて、全米に生中継されることになっています。
ハリス副大統領のねらい

ハリス副大統領にとっては、今回が党の大統領候補として初めてのテレビ討論会になります。

ハリス氏は今回の大統領選挙では党の候補者選びの過程で討論会などを経ておらず、大統領候補となってからもテレビのインタビューに応じたのは一度だけで、記者会見などの機会も設けていません。

このため、臨機応変な受け答えで失敗するリスクを避けているという見方もあり、アメリカのメディアは関係者の話として、ハリス氏は模擬討論を重ねるなど入念な準備を行うと伝えていました。

討論会では、検察官を務めてきた自身の経験を強調し、トランプ氏の大統領在任中の政策には不備があったなどとして厳しく追及するとともに、トランプ氏からの攻撃にも感情的にならず、冷静に対応する姿を見せて国のリーダーとしての資質を示したいものとみられます。

また、ハリス氏は人工妊娠中絶を含む生殖医療を受ける権利を守ることを選挙戦での主要な訴えの1つと位置づけていて、討論会でもトランプ氏との違いを際立たせたいものとみられます。

さらに、討論会のルールをめぐっては、6月にバイデン氏とトランプ氏の間で行われた際には、相手候補の発言中はマイクの音を切る措置がとられましたが、ハリス氏は8月31日、SNSに投稿し「マイクを常時オンにして透明性の高い方法で議論しよう」と呼びかけました。

ハリス氏の陣営としては、発言を遮ったり、ハリス氏を中傷したりするようなトランプ氏の言動による有権者の「トランプ離れ」をねらっていたとみられています。

トランプ前大統領のねらい

トランプ前大統領は今回の討論会を通じて、ハリス副大統領の政策をただすとともに、大統領としての資質に疑問を投げかけることで、支持につなげたい考えです。

討論会に向けて、前回の大統領選挙でハリス氏と民主党の候補者指名争いで討論した経験がある政権移行チームのギャバード元下院議員からのアドバイスも受け、準備を進めてきました。

トランプ氏は、特にハリス氏の経済政策や移民政策について厳しい問いかけを行い、政策に具体性がないという自身の主張を印象づけようとしています。SNSには「私はハリス氏と討論し、彼女が詐欺師であることを暴くことをとても楽しみにしている」と投稿していて、ハリス氏がエネルギー政策などで方針転換をしたことについても問いただすものとみられます。

また、トランプ氏はハリス氏が今回以外の討論会には応じていないことについて「私との討論を恐れている」と述べていて、ハリス氏が大統領候補に指名されたあと、CNNテレビとのインタビュー以外は取材陣からの質問にほぼ応じていないことについても批判を強めるものとみられます。

一方、陣営としては、トランプ氏が政策論争を行う姿を示すことで、個人的な攻撃を行う姿勢に否定的な層にアピールするねらいもあるとみられます。

ことし6月に行われたバイデン大統領との討論会のあと、トランプ氏は一部の世論調査で支持率を伸ばしていて、今回の討論会をきっかけに攻勢を強めたい考えです。

専門家「ハリス氏 リーダーの資質示せるかがポイント」

今回のテレビ討論会について、アメリカ政治に詳しいジョージタウン大学のハンス・ノール准教授は「ハリス氏が実際はどのような候補なのか、トランプ氏がこれまでと違う新たな候補に対してどう対応するのか、よりリアルな形で明らかになるだろう」と分析しています。

ハリス氏についてはこのところ民主党の全国党大会などで注目され、望ましい流れとなっているとしながらも、「ハリス陣営としてはトランプ氏と戦えることを示さなければならない」と述べ、若さをアピールするとともに、リーダーにふさわしい資質を示せるかどうかがポイントだと指摘しました。

また、ハリス氏の検察官としてのキャリアについて、トランプ氏を責めたてる場面において「検察官のスキルは役に立つだろう」という見方も示しています。

そして討論会に先立ち、ハリス陣営が相手候補の発言中にマイクの音を切らないよう求めたことについては、トランプ氏から失言などを引き出すねらいがあったと分析しています。

そのうえでハリス氏が、女性有権者の関心が高い人工妊娠中絶をめぐって権利擁護を訴える可能性があるとも指摘しています。

一方、トランプ氏側のねらいについて「ハリス氏について、バイデン氏と同様、極端なリベラル候補だと位置づけようとするだろう」と述べ、ハリス氏の大統領としての資質を疑問視する作戦をとると分析しています。

また▼生活費の高騰など、国民が直面しているインフレの問題を取り上げるほか、▼国民の関心事である移民問題についても、ハリス氏が現政権の責任者だとして、副大統領であるハリス氏を含む現政権を批判していくのではないかと指摘しました。

そのうえで、トランプ氏がハリス氏への個人攻撃ではなく、経済問題と移民問題を中心にどこまで政策論争に持ち込めるかも、焦点の1つになるという見方を示しました。

またノール准教授は、ことし6月に行われた討論会で、当時民主党の候補者だったバイデン氏が精彩を欠き、その後撤退に追い込まれたことを踏まえ、「今回の討論会もハリス氏が苦しむことになれば非常に深刻な事態になると思うし、トランプ氏が前回より失敗し、別の姿を見せれば考え直す人がでるかもしれない」と述べた上で、特に支持がきっ抗する激戦州では選挙結果に影響を及ぼす可能性があると分析しています。

過去のテレビ討論会

アメリカ大統領選挙の候補者によるテレビ討論会は1960年に初めて行われて以降、毎回大きな関心を集めてきました。

有権者の関心が高い問題について意見をぶつけ合い、大統領としての資質をアピールする機会となるため、有権者の判断にも影響を与えてきたとされています。

1960年、共和党ニクソン副大統領と、民主党ケネディ上院議員による史上初めてのテレビ討論会では、表情が硬く、疲れた様子のニクソン氏に対し、ケネディ氏は若々しく、はつらつとしていると好意的に受け止められ、選挙戦の流れをつかんで勝利を引き寄せたとされています。

1980年、再選を目指した民主党の現職カーター大統領に共和党レーガン氏が挑んだ対決では、細かい数字をあげて経済問題を議論するカーター大統領に対し、レーガン氏は「またその話ですか」と切り返しました。

そして、レーガン氏は討論会の最後、有権者に対して「あなた自身に尋ねてください。4年前と比べてあなたの暮らしは良くなりましたか?」と語りかけ、1週間後の選挙で勝利しました。

2000年、民主党のゴア副大統領と共和党のブッシュ・テキサス州知事との討論会では、ブッシュ氏の発言に何度もため息をつくゴア氏の姿が「人を見下している」と批判を浴びました。

また、これまでで最も多くの人が視聴したのが2016年の共和党のトランプ氏と民主党ヒラリー・クリントン氏による1回目の討論会で、およそ8400万人が視聴しました。

今回の大統領選挙では、ことし6月27日にバイデン大統領とトランプ前大統領との1回目の討論会が行われましたが、バイデン氏はことばに詰まる場面があったほか、トランプ氏による批判を切り返せない場面が目立ち、精細を欠きました。

この討論会がきっかけとなって民主党内ではバイデン氏に対して選挙戦からの撤退を求める圧力が高まり、7月、党の指名獲得が確実視されていたバイデン氏が、投票日までおよそ3か月半という段階で撤退を表明するという極めて異例の事態となりました。

大統領選までの主な日程

アメリカ大統領選挙では11月5日の投票日を前に、9月から全米各州で、順次、期日前投票が始まります。

このうち激戦州の1つ、東部ペンシルベニア州では、早ければテレビ討論会の6日後の9月16日から期日前投票の申請の受け付けが始まります。

さらに南部バージニア州、中西部のサウスダコタ州ミネソタ州では、9月20日から期日前投票が始まります。

アメリカの選挙では、期日前投票が投票全体に占める割合が年々高まっていて、ハリス氏、トランプ氏ともに期日前投票が始まることも念頭に、討論会を通じて有権者にアピールしたい考えです。

また、民主・共和両党の副大統領候補のウォルズ・ミネソタ州知事と、バンス上院議員のテレビ討論会は、10月1日に行われる予定です。

《日本への影響は》

貿易・エネルギー

【貿易政策 関税上乗せ】

日本政府が注視しているのが、両氏の貿易政策です。トランプ氏は、製造業の雇用を取り戻すとして生産拠点の国内回帰を重視していて、外国から輸入した製品に一律に関税をかける方針を示しています。このうち自動車については、ことし7月の演説で、メキシコに中国メーカーが自動車工場を建設していることを指摘した上で、生産拠点をアメリカ国内に移さなければ、100%から200%の関税を課して、アメリカでは販売できないようにすると発言したこともあります。一方、ハリス氏は、こうしたトランプ氏の関税の上乗せ政策が、アメリカ国内の家計の負担につながるなどとして反対する姿勢ですが、いまのところ、貿易政策については具体的に明示していません。

【日鉄・USスチール買収計画】

日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画への両氏の姿勢も注目されています。ハリス氏は、今月(9月)に入って、「USスチールは、アメリカ国内で所有され、運営される企業であり続けるべきだ」と発言し、買収に否定的な考えを示しています。その後には、バイデン大統領が買収を正式に阻止することを発表する準備を進めていると、複数のメディアが報じています。一方、トランプ氏もことし1月、「私なら即座に阻止する」と発言するなど、買収を認めない考えを繰り返し強調しています。USスチールが本社や生産拠点を置くペンシルベニア州は大統領選の勝敗のカギを握る重要な州のひとつとされ、両氏ともに労働組合に寄りそう姿勢をアピールする狙いがあるとみられています。

【エネルギー・環境政策

エネルギー政策をめぐっては、トランプ氏は、エネルギー価格を引き下げるため、石油や天然ガスなどの化石燃料の増産を支援し、海外への輸出も増やす考えを示しています。一方、ハリス氏は、エネルギー政策についても明確に示していませんが、事実上の公約となる民主党の政策綱領では、クリーンエネルギーの研究開発の投資を継続し、世界をリードできるようにするとしています。専門家の間では、電気自動車や再生可能エネルギーを重視してきたバイデン大統領の政策を引き継ぐという見方もあります。アメリカで生産や販売を行う日本企業が多いだけに、エネルギー・環境政策の方向性にも関心が高まっています。

金融市場

民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の2人の候補が示す経済政策について、金融市場の関係者は円相場への影響に注目しています。

民主党のハリス副大統領は、初めて住宅を購入する人を対象に頭金として最大2万5000ドル、日本円にしておよそ360万円を支給することを明らかにしています。

▽また、トランプ前大統領側は共和党の政策綱領で、在任時に実施した法人税率の引き下げや所得税最高税率の引き下げなど、減税策について期限を撤廃し、恒久的な制度にするとしています。

市場関係者の中からは、両候補のこうした政策はアメリカの景気を刺激し、物価を押し上げる可能性があるという指摘が出ています。

アメリカではコロナ禍以降続いてきた高い物価上昇が次第に落ちつきはじめ、FRB連邦準備制度理事会は利下げを示唆しています。ところが物価が再び上昇したり高止まりしたりして、FRBが市場の想定よりも利下げのペースを遅らせた場合、外国為替市場では金利の高いドルが買われ、ドル高円安が進みやすくなるという見方が出ています。

一方、両候補が保護主義的な動きを強め、アメリカからの輸出に有利な「ドル安」を志向した場合には、円相場は反対に円高方向に動きやすくなり、日本の輸出企業の採算が悪化するなどのリスクがあるという見方も出ています。

両候補の経済政策は株価にも影響しそうです。

それぞれの経済政策によってアメリカ経済がインフレとの闘いを克服し景気後退を回避すれば、日米ともに企業の株価にはプラスになります。

▽ただトランプ前大統領側は共和党の政策綱領で、中国に対して貿易上の優遇措置などを講じる「最恵国待遇」を撤回し、重要な商品の輸入を段階的に縮小して依存度を引き下げるとしています。市場関係者からは、こうした対応は中国に進出する日系企業の業績の低下につながる可能性があり、日本の株式市場では株価にマイナス要因となるといった指摘が出ています。

▽またハリス副大統領は、法人税を引き上げる考えを示しているほか、物価の上昇を抑えるため食品の価格をつり上げて不当な利益を出した企業に罰則を科す方針を明らかにしていますが、こうした政策によって企業の業績が下がれば、株価に影響が出るのではないかという見方も出ています。

専門家は関税・為替の政策影響に注目

みずほリサーチ&テクノロジーズの小野亮プリンシパルは、2人の候補が示す経済政策のうち特に関税や為替の政策の影響に注目しています。

このうち関税の政策について小野さんは、トランプ前大統領が日本を含めた世界各国からの輸入品に対して一律で関税を引き上げ、中国に対してはより一層強い関税の引き上げを行うのではないかと指摘したうえで「日本の主要な貿易相手国がアメリカと中国であり、輸出が伸びにくくなると日本経済に対してマイナスの影響が続くというか深まっていく可能性がある。日本の輸出産業はエレクトロニクスと自動車という2本柱があり、そこが競争力を持っていても、関税をかけられたり、あるいは各国の報復関税で世界経済が低迷すれば日本の輸出全体が落ち込むリスクがある」と指摘しています。

その上で「日本はアメリカと中国の両者をしっかり見ながら、それぞれのいい部分をとって成長のかてを確保していくことが大事だ」と話しています。

一方、為替政策については、ハリス副大統領とトランプ前大統領が自国の企業、とくに製造業を守るという保護主義的な観点から、いわゆる「口先介入」によってアメリカからの輸出に有利なドル安に誘導しようとする可能性があるという見方を示しています。

その上で「ドル安の反対側は円高なので日本の輸出企業が直接的に影響を受ける。自然な形でドル安円高が進むのはいいが、政治的な政策としてドル安円高に誘導するとなった場合には非常に深刻な状態になる」と話しています。

米国の選挙管理委員会と、民主党の大統領候補であるハリス副大統領の陣営は9日、共和党候補のトランプ前大統領が11月5日の選挙で勝利すれば「腐敗した」選挙管理委員会の職員を投獄するとの考えを示したことについて、脅迫と暴力の扇動にあたるとして非難した。

トランプ氏は7日、不正投票を行えば起訴するとの考えを自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。「不道徳な行為に関与した者は、かつてないレベルで捜し出され、捕らえられ、起訴される」とし、「こうした法的責任は弁護士、政治活動家献金者、不法投票者、腐敗した選管にも及ぶ」とした。

ハリス氏の広報担当者アマン・ムーサ氏は、トランプ氏の発言は「極端で常軌を逸している」と指摘。「トランプ氏は復讐と報復の危険な脅しを一段と強めている」と述べた。

激戦州アリゾナ州のエイドリアン・フォンテス州務長官(民主党)は、トランプ氏の投稿は「暴君のようだ」とし、政治的暴力が扇動される恐れがあると懸念。「安全維持が現在、選管の主要な検討事項の一つになっている」とし、「悪意ある者がトランプ氏の発言を武力に訴える呼びかけと受けとめる可能性がある。われわれは選管と投票所の職員を守る必要がある。あらゆる事態に備えなくてはならない」と語った。

激戦州ペンシルベニア州フィラデルフィア選管のセス・ブルースタイン氏(共和党)は「選管は任務を果たすことに集中する。残念ながら、任務には暴力の脅威への備えも含まれる」と述べた。

世界貿易におけるドル支配を強いるトランプ前米大統領の計画は、経済的混乱を引き起こし、最終的にドル安を招くリスクが高いと、コメルツ銀行のストラテジストが長期的シナリオとして指摘した。

  同行の為替調査責任者ウルリッヒ・ロイヒトマン氏は9日のリポートで、ドルから別の通貨にシフトする国々に100%の輸入関税を課すというトランプ氏の警告が現実となった場合に、米金融市場で起こり得る理論的な一連の出来事を分析した。トランプ氏は7日のウィスコンシン州での選挙集会で同公約を示した。

トランプ氏、脱ドル化の国々に100%の輸入関税賦課へ-返り咲きなら

  投資家はトランプ氏の選挙公約に注意を払うべきだというのがロイヒトマン氏の見解だ。「禁止関税」は意図した効果と逆の結果をもたらす可能性があると、同氏は警鐘を鳴らした。厳しい政策が各国のドル離れを誘発し、米国債の安全資産としての地位を脅かし、「大規模なドル安につながる」可能性があると、同ストラテジストは記述。

  「トランプ氏はドル支配を強要しようとしている。それは全てを変える」とロイヒトマン氏。「米国が全面的な禁止関税を課せば、世界の経済システムに大規模な混乱を引き起こすだろう」と続けた。

  もちろんだが、選挙公約が実現しないことは珍しいことではない。ドルは世界の基軸通貨としての地位を失うとの声も長年にわたって数え切れないほど聞かれたが、今のところそれは現実のものとはなっていない。

  20年以上のキャリアを持つベテラン為替ストラテジストのロイヒトマン氏は、トランプ氏の大統領返り咲きでドル高になる論拠があることもリポートの中で認めている。ロイヒトマン氏は今年、ドルに対しておおむね強気な見方だ。

  モルガン・スタンレードイツ銀行など他のストラテジストは、トランプ氏の関税政策と米経済成長促進がドル高につながるとこれまでに主張している。ある程度において、市場関係者があらゆるシナリオを示していることは政治的な風向きの変化に基づいて予測を立てることの難しさを浮き彫りにしている。

  ドルの優位性はここ数十年に低下したとはいえ、国際通貨基金IMF)によれば、2024年第1四半期(1-3月)には公的外貨準備高に占めるドルの割合は59%と引き続きトップ。ユーロは約20%で2位だった。

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原題:Trump’s Dominant Dollar Idea Risks Backfiring, Commerzbank Warns(抜粋)

今年米国でリバタリアンシンクタンクのケイトー研究所が行った世論調査では、輸入ジーンズに関税を課すのは「良いこと」との回答が6割に達した。だが、それによって価格が10ドル高くなった分を払うと答えたのはわずか3割にとどまった。調査から読み取れるのは、有権者は輸入関税の考え自体を好ましく思いながら、関税がもたらす結果は受け入れようとしない構図だ。

これは大きな問題につながる。11月の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領のどちらが勝つとしても、関税は何らかの形で政策構想に入ってくるだろう。バイデン大統領は、トランプ政権時代に導入された輸入関税の大半を引き継ぎ、さらに幾つか新たな措置も加えた。ハリス氏はまだ通商政策についてほとんど言及していないが、国内労働者の支援や競争相手に痛手を負わせる目的の戦略的な関税には賛成している。

ただ長年の貿易関税提唱者にふさわしく、最も強烈なアイデアを打ち出しているのはトランプ氏だ。同氏は全ての輸入品に10─20%、中国製品には60%の関税適用を提案し、これは物価を押し上げないと主張している。ケイトー研究所の輸入ジーンズに関する調査結果を踏まえれば、こうした単純な説明は多くの有権者に対して訴求力を持つかもしれない。しかし現実はもっと複雑で、米国の家庭に悪い影響が及ぼす面が大半になるだろう。一番望ましいのは、米国の繁栄促進方法として筋の悪いこのような考えが、もっと適切な形に進化することだ。

<自国にも弊害>

トランプ氏が掲げるあらゆる輸入品への関税案は、構想としてその明快さが有権者の受けを良くしており、多少強引な理屈を駆使すれば、実行もある程度容易になるだろう。例えばトランプ氏は、貿易赤字は国家の脅威だと宣言し、緊急避難措置を正当化するかもしれない。1971年、輸入の伸びが輸出を圧倒する事態に動揺した当時のニクソン大統領は、全輸入品に10%の関税を導入。その法的根拠は今もなおはっきりしないが、ともかくも発動された。

輸入関税の狙いが貿易相手に打撃を与えることなら、それは有効に作用する。外国政府が直接関税を支払うわけでないものの、輸入価格が上昇すれば外国製品の需要は減退し、外国メーカーにマイナスとなる。中国の場合、UBSのアナリストチームの試算では、米政府が60%の輸入関税を適用すれば、国内総生産(GDP)成長率は現在の半分の2.5%に下振れてしまう。輸出が減少するとともに、その影響で消費や投資も冷え込むからだ。

とはいえ輸入関税は、自国にも弊害を及ぼすという大きな欠点を持つ。国内消費者の負担が増すからだ。さらに輸入品の需要が低調になれば、自国通貨が値上がりし、輸出企業の製品が外国で割高化して売れにくくなる。タックス・ファウンデーションのエリカ・ヨーク氏によると、全輸入品に20%、中国製品に60%の関税が適用されると、米国で100万人超の雇用が失われるとみられる。

通貨高は、外国資産を保有する米国の投資家にとっても、ドル建ての価値が目減りするという意味で痛手となる。ドル建てで外国企業に融資をした金融機関や投資家などは、相手の返済能力低下も心配しなければならない。エクソンモービル(XOM.N), opens new tab、アップル(AAPL.O), opens new tab、ファイザー(PFE.N), opens new tabといった大手企業を含めた世界の多国籍企業トップ100は、約半分の資産を米国外に保有していることが、国連のデータから確認できる。

より大きな問題は、これらの反対意見が総じて抽象的なため、有権者が大して気にしていないことにある。つまり輸入関税の実現を阻む力にはほとんどならない。ギャラップが2022年に行った調査では、貿易はチャンスよりも脅威の方が大きいと答えた回答者が3分の1を超えた。トランプ政権が18年から20年までに導入した関税のコストの重さを示す証拠は枚挙にいとまがないが、バイデン氏が政策を継続したことで、自由貿易の妥当性を訴えても有権者の票を集めにくくなっている。

<代替案>

トランプ氏は5日の集会で、輸入関税について19世紀の保護貿易主義者だったマッキンリー大統領を引き合いに出し、国民の生活を「より甘美に明るく」してくれると語った。
ただしそうした主張が、自国産業を育成して米国に投資も呼び込めるという理屈であるなら、成功する根拠は乏しい。

一方で、より生産的な資産を国内に引き込むことを目指すなら、次期政権は古い別のアイデアを再び引っ張り出してくることもできる。

再検討に値する考えの1つは、輸入よりも輸出にインセンティブを付与することを狙った税制の導入だ。16年に共和党の一部有力議員が提案したこの制度は、企業がどこで利益を計上したかよりも、どこで製品・サービスが消費されたかに基づいて、賃金を差し引いた後の売上高に課税する。これは実質的に米国内では輸入に課税されるが、輸出は課税対象にならない。

そうした税制自体は、貿易不均衡を是正するわけではない。しかし企業経営者らが米国内で利益を計上する動機を強め、ある程度はその利益を生む資産をとどめる効果がある。間もなく期限を迎える、企業設備投資の全額を課税所得から控除する「即時償却」を延長すれば、効果がさらに高まる可能性もある。

このような税制の実現に向けた課題はなお多い。他国は、消費課税を米国が巨大な税回避地になる試みと受け止め、米国製品に対する報復関税導入に動くかもしれない。有権者への説明もなかなか難しいし、現在多額の輸入をしているウォルマート(WMT.N), opens new tabやターゲット(TGT.N), opens new tabなどが反対してもおかしくない。

それでも単純明快さが常に正しいわけではない。トランプ氏の高額関税案は説明しやすいが、実行されれば混乱と破壊をもたらしかねない。米国をより魅力的な投資先にする新たな方策の検討に取り組む方が適切だ。

11月の米大統領選で再選を目指す共和党候補のトランプ前大統領は、フロリダ州で21歳以上の成人による娯楽目的の大麻マリファナ)使用合法化に向けた住民投票案を支持すると表明した。

トランプ氏は8日夜に自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「以前から言っているように、個人使用のために少量の大麻を所持した成人の不必要な逮捕や投獄を終わらせる時が来たと確信している」と述べた。

さらに、大統領として返り咲きを果たせば、大麻の医療研究に引き続き注力し、州法の基づき運営される大麻関連事業に対し、銀行がサービスを容易に提供できるよう取り組むと表明した。

トランプ前米大統領が創設したSNS「トゥルース・ソーシャル」を運営する「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ」の株価下落が止まらない。先週には今春の株式公開以来の最低水準まで落ち込んだ。

9日に7%の反発があったものの、トランプ・メディアは3月27日の最高値66.22ドルからほぼ4分の3(72%)の価値を失った。

この売りにより、投資家の資産からは相当な額が消えている。トランプ氏もその一人だ。
トランプ氏が保有する1億1475万株の価値は5月9日時点で62億ドル(約8900億円)だった。現在の価値は約21億ドル。この急落によりトランプ氏は世界の富豪500人を示すブルームバーグ・ビリオネアズ・インデックスから脱落した。

この大幅下落は、トランプ・メディアの数十億ドルという時価総額が理にかなっていないと繰り返し警告してきた専門家らの懸念を強めるものだ。同社は赤字で収益はほとんどなく、トゥルース・ソーシャルはSNS界で比較的小さな存在のままだからだ。

タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル最高経営責任者(CEO)はCNNに対し「トランプ氏でなければ、この株は1ドルで取引されていただろう」と語った。
アナリストらは、同社の株価下落の背後にはトランプ・メディアの脆弱(ぜいじゃく)な経済基盤以外にもおそらく他の要因があるとみている。

タトル氏は、一部の世論調査でハリス副大統領とトランプ氏の支持率が拮抗(きっこう)していることが大きな要因だと主張する。

実際、トランプ・メディアはバイデン大統領が7月21日に撤退しハリス氏を支持して以来、時価総額の約半分を失った。

タトル氏は同社の株は完全にトランプ氏が当選することを前提としたものだとし、「トランプ氏が勝てばこの会社は存続できるかもしれない。しかし負ければどうやって存続しうるのか私にはわからない」と述べた。

ただしトランプ・メディアは依然として3億ドル以上の現金などを保有しており、買収や事業資金に充てる資金力がある。

#米大統領

米連邦最高裁判所の判事でただ一人、20社余りの株式を保有しているのがサミュエル・アリート判事だ。こうした保有株により、同判事が企業絡みの主要な訴訟審理に加われない可能性もある。

  アリート判事の2023年財務報告が先週公表されたが、それによれば、同判事は20数社の株式を所有し続けている。判事自身もしくは妻が、レイセオンコノコフィリップスに加え、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)子会社などの株式を数万ドル相当を保有

  石油会社が気候変動訴訟に挑んだり、J&Jが子会社を破産させることでタルク(滑石)を原料とするベビーパウダーの使用でがんを発症したとして訴えられている訴訟の決着を図ったりする中で、アリート判事は一部の裁判で退席を迫られるかもしれない。

  最高裁ディスクロージャー(情報公開)規定は、配偶者や扶養している子どもの経済的利益にも及ぶ。アリート判事の場合、自身での株式保有か妻の保有かは不明。

  最高裁判事に個別株の保有は認められているが、倫理規定では、その企業が関与する訴訟に関与すべきではないとされている。以前は何人かの判事が個別企業の株式を保有していたが、現在ではまれだ。クラレンス・トーマス判事とアリート判事が、資産家から贈答品や旅行などの接待を受けていたことも明らかになっており、司法倫理に対する監視の目が強まっている。

  アリート判事は最高裁報道室を通じてのコメント要請には応じなかった。

  裁判所改革を支援する団体「フィックス・ザ・コート」の調べによると、同判事は2021年以降、自身が株式を所有する企業が関係する64の案件で審理に加わっていない。判事に特定の訴訟で審理を担当しなかった理由を述べる義務はないが、この集計は公開情報に基づいている。

原題:Justice Alito’s Stock Portfolio Stands Apart on US Supreme Court (抜粋)

ドイツの機械・エンジニアリング大手シーメンス(SIEGn.DE), opens new tabは9日、米ニューヨーク州に6000万ドルを投じ、ロサンゼルス-ラスベガス間の高速鉄道を走行する車両の製造工場を建設すると発表した。

ニューヨーク州ホースヘッズの新工場は約300人の雇用を創出し、シーメンスにとって米国初の高速鉄道車両工場となる。

予定では、ブライトライン・ウエストが運営する高速鉄道を走る車両「アメリカン・パイオニア220」の製造を2026年から開始する。

高速鉄道は全長350キロを2時間10分で結ぶ。2028年のロサンゼルス五輪前の完成を目指している。

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