『遠羅天釜』
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此ノ首題ヲ杖ニモ力ニモシテ、是非トモ法華眞ノ面目ヲ見届クベシト、深ク望ミヲ掛ケテ唱ヘラルベシ。願クバ出ル息キ入ル息キヲ題目ニシテ欲シキ事ヨト、随分親切ニ断ヘ間モナク唱ヘラルベシ。唱へ唱へテ怠ラズンバ、久シカラズシテ心性タシカニ、大石ナドヲユリ居ヘタル如クニテ、一心不乱ノ心地ハ、ホノカニ覚へ有ルベシ。其ノ時ニステ置カズ、随分唱ヘラルベシ。イツシカ聞キ及ビシ正念工夫ノ大事に契当シテ、平生ノ心意識情都ベテ行レズ、金剛圏ニ入ルガ如ク、瑠璃瓶裡ニ坐すスルニ似テ、一点ノ計較思想ナク、忽然トシテ大死底ノ人ト異ナル事ナケン。纔カニ蘇息シ来ラバ、覚ヘズ純一無雑、打成一片ノ眞理現前シテ、立チ処ニ法華眞ノ面目ニ撞着シテ、乍チ身心ヲ打失シ、本門寿量久遠實成ノ如来ハ現前ニ分明ニシテ、推セドモ去ラジ。