「わたくし麻生太郎、このたび国権の最高機関による指名、かしこくも、御名御璽(ぎょめいぎょじ)をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました」
「かしこくも」をここに入れると首相就任と天皇の権威が結びつく。だからとげとげした味がする。
現行憲法は国民主権である。内閣総理大臣を指名する主体は国民、すなわち国会だ。天皇は国民のかわりに任命の事務を担当しているだけだ。
後日、文部委員会で岡野清豪(きよひで)文相が「臣とは、主権者である国民に対する臣だ」と取りつくろった。本音はともかく、「首相とは、国民の臣である」というのが吉田内閣の政府見解だったのである。孫首相の所信表明はそれからいささか外れてはいないだろうか。