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【竹内薫の科学・時事放談】疑惑

 セルカン氏はかなりの有名人で、科学分野から音楽、芸能関係にいたるまで、幅広い人脈を誇る。彼の著書は著名なサイエンスライターが書評で取り上げ、売り上げも好調だった。マスコミのインタビューも多く、講演会にも引っ張りだこの状態だった。

 しかし、ふたを開けてみれば、セルカン氏の人生の大半は虚像であり、華やかなタレント活動の大本にあったはずの学問や宇宙飛行士といった基盤は幻にすぎなかった。

 それにしても、なぜ、セルカン氏の虚飾の人生は始まったのだろう? 私にはその理由が少し分かる気がする。マスコミで仕事をしていると、番組や記事での人物紹介が「誇大宣伝」じみていることに気づく。私も「科学者」と紹介されるたびに「科学の物書きです」と訂正している。私の友人もテレビで「ノーベル賞に最も近い日本人」と紹介されそうになって、現場にいた私が「それは根拠がない」と慌てて止めたことがある。