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コラム:米国経済を覆う「日本化」の正体=河野龍太郎氏

11月6日投開票の米大統領選挙が終盤戦に入る中、「フィスカル・クリフ(財政の崖)」の問題が山場を迎えている。「財政の崖」とは、2012年末にブッシュ前政権以来の大型減税措置が失効し、加えて2013年初めに政府支出の強制削減が発動されることから、まるで崖から転落するように急激な財政引き締めが起きてしまうことをいう。

また、もう一つ心配されるのは、以下述べる通り、米国の政策当局が自国の潜在成長率を過大評価するあまり、裁量的な財政・金融政策を続け、必要な構造調整を阻害してしまうのではないかという点である。

ちなみに、日本では98年に金融危機が訪れた段階でさえ、潜在成長率は2%台と考える人が少なくなかった。現実には90年代の平均成長率は1.1%であり、2000年代も0.8%であったから、実際には90年代末時点で潜在成長率は1%程度に低下していたと考えられる。しかし、潜在成長率が高水準に維持されていると誤って判断し、あくまで景気循環的に成長率が低下していると考えたために、アグレッシブな財政・金融政策だけで対応しようとした。


もし潜在成長率の水準を正しく認識していれば、財政・金融政策だけで対応しようとせず、潜在成長率を高めるために構造改革を進めたはずである。現在でも、アグレッシブな財政・金融政策が必要と訴える人が少なくないが、そのような人は潜在成長率がいまだに高いと想定しているのだろう。筆者の推計では、日本の潜在成長率はすでに0%から0.5%にまで低下している。