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司法取引 試案もとに導入の是非を議論 NHKニュース

法制審議会の特別部会は、取り調べの録音・録画の法制化など刑事司法改革が話し合われていて、23日の会合では、新たな捜査手法として、法務省の事務局が示した「司法取引」の試案をもとにその導入の是非が議論されました。
試案の内容は、事件の容疑者や被告が、共犯者など他人の犯罪事実を明らかにする供述や証拠の提出をして捜査に協力した場合、その見返りとして検察が起訴を見送ることや刑を軽くするよう裁判所に求めることを認めるものです。
対象となる事件は、汚職振り込め詐欺などの知能犯罪のほか、薬物や銃器の犯罪としていて、殺人事件など身体的な被害者がいる事件は外されています。
「司法取引」は、取り調べに依存した捜査手法を抜本的に見直すとともに悪質、巧妙化する組織的な犯罪に対応するねらいがあります。一方で、自分の刑を軽くするため、うその供述をして、無実の人があたかも罪を犯したように引き込む危険性も指摘されています。
会合では、警察の委員から「犯罪の情報収集が難しくなっているなかで、非常に有効な手段で評価できる」という意見が出されました。一方、弁護士の委員からは「海外では司法取引の15%は、『引き込み』だという報告も出ていて、合意に至るやり取りもきちんと録音・録画されなければ賛成できない」といった意見が出ました。
また、裁判所の委員からは「他人の犯罪の証明のために重要な供述をしているかの見極めが難しく、裁判が長期化するおそれもある」といった指摘も出され、意見はまとまりませんでした。
議論は今月30日にも行われる予定で、これまで日本の刑事司法制度では認められてこなかった「司法取引」が導入されるのか注目されます。

法務省事務局の試案で示された「司法取引」の制度は、これまでの法制審の議論を踏まえた内容となっています。試案では、「司法取引」を行うには、捜査機関と容疑者・被告、弁護士の三者が合意する文書に署名することを条件としています。
そのうえで、容疑者や被告側の捜査への具体的な協力方法として、共犯者など他人の犯罪を明らかするために、取り調べで真実の供述をすることや裁判で証言すること、さらに、証拠を提出することを挙げています。
これに対し、捜査機関側は、検察官が、容疑者には起訴の見送り、また、被告には起訴の取り消し、さらに、起訴した場合にも裁判所に刑を軽くするよう求めるなどの見返りを与えることができるようになります。
対象となる事件については、これまでの議論で、被害者団体の委員から「捜査機関と容疑者の話し合いで起訴されない事態を被害者は納得できない」という意見が出されたため、殺人や傷害致死といった深刻な身体的被害者がいる犯罪は除かれ、汚職や詐欺といった知能犯罪や、薬物や銃器の犯罪に限定されています。
この「司法取引」の効果については、検察出身の委員から「談合など会社が関わる組織的な犯罪には不可欠な制度で、事件の解明に有効な手段となる」と導入を期待する意見が出ています。
その一方で、みずからの刑事処分を軽くするために無実の他人があたかも事件に関わっているかのように供述する「引き込み」の危険性が指摘されています。
弁護士の委員からは「引き込みは現在でも起きていて、制度化が実現すれば、そうした傾向を助長するのではないか」という懸念の声が出されています。
こうした「引き込み」を防ぐため、試案では、うその供述や偽の証拠を出した場合、5年以下の懲役とする罰則規程が盛り込まれていますが、どのように実効性を高めるのかは課題として残ります。
また、捜査機関側による制度の乱用を防ぐため、試案では、検察官が事前の合意に反した場合には、裁判所が起訴を取り消すことや、司法取引で得られた供述などを証拠と認めないことなども規定されています。

日弁連=日本弁護士連合会の元会長で、特別部会の委員の宮崎誠弁護士は「司法取引を制度として導入するには慎重な検討が必要だ」と話しています。
司法取引の今後の議論について、宮崎弁護士は「他人を巻き込んで罪に陥れる危険性がないのか、捜査機関との取り引きが公正に行われるのかという観点から、制度づくりを見ていく必要がある」と指摘しました。
そのうえで、「司法取引は外国では評価されている面もあるが、数多くのえん罪を生んでいるのも事実なので、制度として導入するには慎重な検討が必要だ」と話していました。