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コラム:米利上げ副作用、日本は輸出減少と世界的株安ルートで流入 | Reuters

米利上げは9月か12月か──。29日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)声明は明確に答えなかったが、年内の利上げは動かないだろう。それを見越して、いくつかの新興国では通貨や株価の下げがすでに鮮明になっている。日本経済にとって、輸出減少と、世界的なリスクオフ心理の強まりによる株価下落という2つのルートによる打撃が予想される。このマイナス効果は、決して軽視できない規模になると指摘したい。


<FOMC声明、市場ごとに異なった反応>


9月利上げを予想していた参加者は、経済活動が「緩やかに」拡大したという「緩やかに」(moderately)が声明に残ったことで失望したようだ。また、6月声明にあった「エネルギー価格は安定したようにみえる」との表現がなくなったことも、9月利上げ派には、不安な要因に映ったようだ。


一方、労働市場に関して「堅調な労働者数の増加」「失業率の低下」を指摘し、「引き続き改善した」と表現した。利上げ判断の重要な要素になる労働市場に関しては、評価をやや強めた印象だ。


マーケットは、市場ごとに独自の反応を示した。外為市場は、雇用の評価引き上げに注目し、9月利上げを意識してドルが対主要通貨で上昇。一方、株式市場では、9月利上げが後退したと見て、ダウ.DJIは続伸した。米債市場はFOMC声明にほとんど反応せず、10年米国債利回りUS10YT=RRは、2.2%台での推移だった。


9月とも12月とも判断がつきかねるFOMC声明の内容だったが、俯瞰して見れば、年内の利上げはよほどの世界的なショックが発生しない限り、実施されると思われる。


声明では、利上げを正当化するには、労働市場の「もう一段の改善」を確認する必要があるとしたが、もう少し改善すれば、利上げできると読むこともできる。


<すでに始まった新興国からの資金逃避>


実際、世界の金融・資本市場では、米利上げを前提にしたマネーシフトが徐々に大きなうねりとなりつつある。


ブラジル・レアルBRBYは28日に1ドル3.40レアルを突破して、12年ぶりのレアル安水準まで急落。ブラジル中銀は29日、政策金利を50bp引き上げて14.25%とし、通貨防衛に躍起となっている。


また、コロンビアでも資源価格の下落を通じ、マネーが流出。コロンビア・ペソCOP=は6月10日以降、7月下旬までに約12%下落した。


アジア市場でも、FOMC前には警戒感が高まり、ジャカルタ総合株価指数.JKSEは28日に2014年3月以来の安値に沈み、バンコクのSET指数.SETIも14年5月以来の安値まで下落した。いずれも米利上げを見込んだ新興国からのマネー流出現象と言える。


通貨安は、新興国経済を直撃する。高成長をおう歌していたインドネシアでは、ルピアIDR=が23日に1ドル1万3395ルピアと1998年8月以来17年ぶり安値を更新し、その後も下落。この通貨安とインフレ、消費停滞が重なって、2015年のインドネシア企業の収益見通しは、昨年末時点の半分以下の平均4.9%にとどまっている。


米連邦準備理事会(FRB)が現実に利上げした場合、新興国から米国に向けたマネーシフトは、一段と本格化するだろう。


その際に想定される大きなうねりの1つは、中国経済に対する影響だ。欧米のホットマネーが中国市場から流出し、今でも上下動の激しい中国株が、一段と下落/上昇の幅を大きくする可能性が高まる。


また、海外マネーの流出による中国国内での投資減速によって、中国経済の成長率が一段と下方圧力を受けることになるだろう。


<懸念される輸出減少の長期化と株安>


その結果、輸出・生産の減少で日本の4─6月期の国内総生産(GDP)が前期比でマイナス成長に転落する公算が大きくなっている。


中国経済の減速鮮明化は、その後も輸出・生産が落ち込んだまま、7─9月期以降のGDPが下振れするリスクが高まることを意味する。


さらにASEAN東南アジア諸国連合)各国の経済も圧迫し、日本からの輸出は、その面でも大きな減少圧力を受けかねない。


また、新興国からの急速なマネー流出は、新興国通貨や株価の大幅な下落を招き、グローバルマーケットでは、リスクオフ心理が高まると予想される。


そのことは、日経平均.N225にも大きな下落圧力になることは、中国株の下落に連動して日本株が下げたことで、証明されているとも言える。


このように実体経済と株価の2つのルートから、日本経済は米利上げの「副作用」の大きな影響を受ける構造の中に組み込まれていると考える。


「利上げは9月か12月か」と予想し合い、「ドルは130円まで円安になって株高」とたかをくくっていると、「想定外」という台詞を吐くことになりかねない。


今は、新興国市場で起きている通貨・株の下落や経済の不調をよく分析し、「利上げ本番」に備えておくのが、王道ではないかと指摘したい。


#FRB #利上げ