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マイナス金利は量的緩和と矛盾欧州でも実体経済に効果なし|野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて|ダイヤモンド・オンライン

日本銀行は、マイナス金利を導入した。


 これによって、短期金利が低下し、長期金利も低下するだろう。円安だけが目的なら、国債購入は必要なくなる。これは、量的緩和政策が行き詰まっていることから、金利政策へ転換しようとするものだ。


 しかし、銀行の収益が悪化するので、国債購入が続く可能性が高く、矛盾が生じる。


 ヨーロッパの経験では、マイナス金利実体経済を活性化する効果はない。


 なお、マイナス金利政策の是非については、野口塾(私が主催する私的研究会)において昨年6月に議論を行ない、その際の報告「マイナス金利と金融政策」を9月17日に私のホームページに掲載した。ただし、以下で述べる私の考えは、この報告の考えとは異なるところもある。

日本銀行は、マイナス金利を導入した。これまで、銀行が日本銀行保有する当座預金に対してプラスの付利をしていたが、それを転換し、つぎのような仕組にする。


当座預金を三層構造に分ける。第一の「基礎残高」(約212兆円)は、2015年の超過準備の平均額に固定され、付利は、従来通り0.1%。


「マクロ加算残高」(約38兆円)は、所要準備などであり、金利はゼロ。


政策金利残高」は、当座預金全体から「基礎残高」と「マクロ加算残高」を差し引いた残額であり、付利はマイナス0.1%。


 したがって、今後の超過準備残高がすべてマイナス0.1%となるわけではない。


 この政策の狙いは、銀行の貸出増加を促すことであるとされている。

 これまで当座預金に0.1%付利していた理由は、量的緩和で日銀が国債を買い上げても、銀行の収益が減らぬようにして、買い上げを容易にすることであったと考えられる。


 ところが、マイナス金利が導入されると、国債を売却して当座預金にしても付利がマイナスになるので、銀行は国債を売却しようとしなくなる。つまり、これまでの量的緩和政策の遂行は困難になると考えられる。この意味で、マイナス金利政策と量的緩和政策の継続とは矛盾するわけだ。

 マイナス金利政策は、ヨーロッパ中央銀行がすでに実施している。その意味で、別に目新しい政策ではない。


 まったく未知の政策だというような論評が見受けられるが、そうではない。すでにその効果等についても、ある程度のことは分かっている。


 ECBは2014年6月5日、政策金利をそれまでの0.25%から0.1%引き下げ、過去最低となる0.15%にした。それと並んで、銀行から資金を預かる際の金利をマイナス0.1%にするマイナス金利政策の導入も決定した。昨年末からは、マイナス0.3%に引き下げられている。


 ECBは、15年1月に、国債買入れ型の量的緩和(QE)実施を決定した。買入れは月額600億ユーロのペースで3月に開始、16年9月末まで継続するとした。


 マイナス金利は、デンマークスウェーデン、スイスなどにも波及した。


 この政策は、どんな効果をもたらしただろうか?

 以上を要約すれば、金利を引き下げ、ユーロ安をもたらした。しかし、物価上昇率には影響がなく、目的とされた貸し出し増加も実現していないということになる。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160203#1454495974

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