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ロバの尻尾事件とアンディ・ウォーホル:アートはこうして“色のついた株券”になった|日本人が知らない本当の世界経済の授業|ダイヤモンド・オンライン

「……アートについて説明しましょう。アートの中でも現代アートというのはアメリカの覇権を象徴するものなのです。第2次世界大戦で本土が傷つかなかったアメリカは覇権国への道を歩むわけですが、覇権国にふさわしい“文化”がありませんでした」

 その後、アメリカは世界のリーダーになるわけですが、第2次世界大戦後の対抗勢力は共産主義ソ連になるのです。いわゆる東西冷戦といわれた時代です。そして冷戦時代にある有名な事件が起きます。ソ連フルシチョフ第一書記が訪米した際、ある抽象画展覧会を観て『まるでロバの尻尾で描いた絵だ』と酷評した、“ロバの尻尾”事件(1962年)です。フルシチョフは、アメリカを侮蔑したつもりだったのかもしれませんが、逆に田舎者の共産主義者には抽象画はわからないというのが露呈したわけです」


「なんだか、田舎者同士のツバの掛け合いみたいですね」


「たしかに(笑)。これを契機にしてアメリカで生まれた“共産主義者には理解できない”抽象画——そして抽象表現主義を、アメリカの文化として世界に知らしめる戦略に乗り出すのです。

「そうなんですよね。重要な点は、こうしたアメリカの現代アートを主導したのが、第2次世界大戦の最中にアメリカに亡命してきた大勢のユダヤ系のアーティストたちだということです。彼らは、抽象表現主義なのです」


ユダヤ系?抽象表現主義?わからないです」


「ほら、ユダヤ教の世界は、偶像崇拝が禁止されているじゃないですか。ユダヤ絶対神ヤハウェは抽象的な存在で、仏像のような具体的な表現ができないわけです。だから抽象画が発展するんですよ」

「そのとおりです。そして、クレメント・グリーンバーグというユダヤ系の美術評論家が、一般にはわかりづらい前衛的な抽象表現主義に、理論的権威を与えたのです。それは国策に加担した文化的プロパガンダだと、後から大いに批判されることになるのですが」


「つまり、一般庶民には子どもの落書きのように見えるわけのわからない絵かもしれないけど、高尚な人間が見ればすごい価値があるんだよ、というような宣伝をやったってことですね」


「はい。そして、それに成功するとユダヤ系のアート業界は次のステップを踏み始めました。それは、アートの世界に市場メカニズムを導入し、大衆を含めた市場の拡大を目指したということです。


 “市場”というのはユダヤ系の得意分野です。それも宗教的な背景から生まれています。キリスト教イスラム教は原則的に利子を認めていません。つまり、おカネからおカネを生むというのは、汗をかかずに得た利益であり、道徳的に認められない卑しい仕事だという考えがあるため、おカネの世界とキリスト教イスラム教は距離があったわけです。それに対して、ユダヤ教にはそのような制約はありませんでした。ですから、ユダヤ人は他の宗教の人がやらない金融業などの市場関係の分野に大いに進出するのです。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』って読んだことありますか?」

 ここで、アンディ・ウォーホルの登場となります。ヴァルター・ベンヤミンが『複製技術時代の芸術』という本を書いたように、アート市場をつくったユダヤ系の人たちはシルクスクリーンのように複製印刷されたものにも価値を生むようにしていきました。繁栄するアメリカの大衆の“アートを家に飾って見せびらかしたい”という欲望を煽り、同時に大衆にも手が出せるアートを創造したわけです」

「というわけで、市場原理が得意なユダヤ系の人たちの活躍で、アートが芸術的な価値から乖離して一人歩きを始め、まるで“色のついた株券”のようになっていくのです。そして現在においては“アート産業”ともいえる発展を遂げています。

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