https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

ノーベル賞経済学者が考えた「市場」最強の株式投資法|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

しかし、すでに見たケースは、2つの株式を1対1の割合(50万円ずつ)で購入した場合だった。しかし、ここで満足してはいけない。2種類の株式から成るポートフォリオにはそれぞれの株式が占める比率に応じて無限の組み合わせがある。つまり、もっと確実に稼げる、効率のいい組み合わせがあるかもしれないわけだ。


1対1の割合以外の組み合わせについても同様の計算をしてみると、それぞれのリスク・リターンの点の集合はどうなるだろうか?


図のとおり、2銘柄から成るポートフォリオのリスク・リターンは、ちょうど弓矢の弦を左に大きく引いたような形になる。では、これらのうち、どのポートフォリオがいちばん有利と言えるだろうか?

そう、元の線分IJからの乖離幅が最も大きい点だ。なぜなら、その点こそがリターンを変えずにリスクだけを最も低減させていることになるからである。つまり、この世界では、このポートフォリオが最強の投資商品だということになる。

ここで、別の株式Kに登場してもらい、株式KとポートフォリオIJとの配合商品をつくってみる。この新ポートフォリオのリスク・リターンも、相関効果により点IJと点Kを結ぶ直線よりも左に歪んだ曲線を描くことになる。つまり、さきほどのポートフォリオIJよりも、新たなポートフォリオIJKのほうが、さらにリスクを低減できるというわけだ。さらに株式Lも加わった場合が下の図である。

こうして新たな株式をポートフォリオに組み込んでいくと、リスクはどんどん小さくなる。


そして最終的には、世の中のすべての投資対象から構成される最大のポートフォリオができあがるはずだ。


そのリスク・リターンの点の集合も、やはり下のような弓なりの曲線を描く。この曲線のことを効率的フロンティア(Efficiency Frontier)と呼ぶ。

効率的フロンティアに関して言えることは2つある。1つは効率的フロンティアよりも上部の領域に位置する投資はあり得ないということ。すべての銘柄をどんな比率で組み合わせようと、そのポートフォリオはこの境界線を超えるポートフォリオはつくれない。


もう1つは、この境界線よりも下の領域に位置するポートフォリオへの投資は、合理的とは言えないということだ。上の図のとおり、XとYという2つのポートフォリオがある場合、リターンが同じであるなら、よりリスクの低いYを選ぶべきなのは明らかだ。

投資家は「自分がいちばんだと考える銘柄」ではなく、「みんながいちばんと考えそうな銘柄」を恣意的に買おうとする――そうした行動様式をケインズはかつて「美人投票」という言葉で表した。


これに対し、マーコウィッツの理論は、論理的なアプローチに裏打ちされた「客観的な美人投票」を実現し、魅力あふれる最もセクシーな銘柄たちをみごと一列に並べてみせたのだとも言えるだろう。

効率的フロンティア上に並んでいるさまざまなポートフォリオは、いわばオリンピックにおける各国代表のようなものだ。では、さらにこの中から金メダリスト、つまり「市場最強のキング・オブ・ポートフォリオ」を選出するには、どうすればいいだろうか?


オリンピックゲームにおいて、誰とも利害関係のない公正な審判が必要となるのと同様に、ここでもジャッジを下す中立的な銘柄が必要だ。投資の世界では、リスクフリーレート(無リスク資産の金利国債金利こそがうってつけの審判役となる。


リスクフリーレートとは、価格変動リスクがない、最低限保証されている利回りだ。価格変動がないのだから、さまざまな株式の動きには何の影響も受けない。言い換えると、無リスク資産をポートフォリオに入れても相関効果はゼロであり、リスクの低減には何ら寄与しないということになる。


ここで、効率的フロンティアの上に並んでいる最強のポートフォリオたちと、無リスク資産Oとから構成されるポートフォリオを考えてみよう。相関効果が働かないのだから、リスク・リターンの点の集まりは曲線ではなく直線を描くことに気づくはずだ。そう、効率的フロンティア上のポートフォリオと無リスク資産Oから構成されるポートフォリオは直線状に並ぶことになる。


では、その中で最も優秀な選手は誰か?


ずばり、点Oから伸ばした線と効率的フロンティアの接点Pである。それ以外の点は線分OPよりも下方に位置するので、リターンの面で劣っている。

点Pに位置する「ポートフォリオの王者」のことをマーコウィッツは、マーケット・ポートフォリオ(MP: Market Portfolio)と名づけた。株式市場のマーケット・ポートフォリオは、市場に存在する株式をその時価総額の比率で案分して組み込んだものだ。これこそが、最も低リスクで最も高リターンな株式投資法だということになる。マーケット・ポートフォリオの発見こそが、マーコウィッツの理論がたどり着いた1つの最終結論なのだ。

なお、一般的には、グローバルで見ればMSCI指数、アメリカではS&P500、日本ではTOPIX東京証券取引所に上場している銘柄すべてのポートフォリオのインデックス)などがマーケット・ポートフォリオに近いものだと言われている。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160608#1465382289