防衛省によりますと、15日午前3時半ごろ、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島の西で日本の領海に侵入したのを、海上自衛隊のP3C哨戒機が上空から確認しました。情報収集艦はその後、南東に向かい、およそ1時間半にわたって領海内を航行したあと、午前5時ごろ、屋久島の南の沖合で領海を出たということです。
中国海軍の艦艇が領海に入ったのが確認されたのは、平成16年に原子力潜水艦が沖縄県の石垣島沖で領海侵犯して以来で2回目となります。
沖縄の東の太平洋では、現在、海上自衛隊とアメリカ海軍、それにインド海軍による共同訓練が行われていて、防衛省によりますと、中国海軍の情報収集艦は、インド海軍の艦艇2隻の後方を航行し領海に入ったということです。
各国の軍艦には一般の船舶と同じように沿岸国の安全を害さなければ領海を通過できる「無害通航権」が国際法で認められていて、防衛省は、警戒と監視を続けるとともに情報収集艦の航行の目的を分析しています。
中国国防省は、日本時間の午後4時すぎにコメントを発表し、「この海峡は国際的な航行に使われる海峡であり、中国軍の艦艇が通過することは、国連海洋法条約が規定する航行の自由の原則に合致している」と主張しました。
世耕官房副長官は、午前の記者会見で「中国艦艇がどういう目的で航行したかについては現時点では確たることを申し上げるのは控えたい。政府としては引き続き、わが国周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期していく」と述べました。
そのうえで「外務省アジア大洋州局長から在京中国大使館次席に対して、先般の中国海軍艦艇による尖閣諸島接続水域への入域に続いて今回、中国海軍の情報収集艦がわが国領海に侵入したこと等に鑑みて、中国軍の活動全般に対する懸念を申し入れた」と述べました。
また、記者団が、先に中国海軍の艦艇が尖閣諸島周辺の接続水域に入った際には外務省の斎木事務次官が程永華駐日大使に抗議したことを踏まえ、政府の対応の違いについて質問したのに対し「尖閣について中国は自分の領土という独自の主張をしており、当然、対応に差があってしかるべきだ」と述べました。
中谷防衛大臣は防衛省で記者団に対し、「中国海軍の艦艇の航行は、日米印の演習に参加し、わが国の領海内を航行していたインド海軍の艦艇に引き続いて行われたものだ。海上警備行動は発令しておらず、先方の意図や目的は分析中だ」と述べました。
そのうえで中谷大臣は「中国海軍の艦艇が領海内を通過したのは2度目で非常に例が少ない。今後も中国艦艇の動きに十分注目して、警戒監視に万全を期したい」と述べました。
このあと、中谷大臣は再び記者団に対し、「中国は近隣国であり、こういった活動については丁寧に接してくるべきだ。戦後2回目のわが国領域内の航行であり、非常に懸念がある」と述べました。
防衛省によりますと、現在、沖縄の東方の太平洋では海上自衛隊とアメリカ海軍、それにインド海軍が共同訓練を行っていて、中国海軍の情報収集艦は、この訓練に参加しているインド海軍の艦艇2隻の後方を航行していたということです。インド海軍の艦艇が東シナ海から太平洋に向かって航行し、口永良部島の西で日本の領海に入ると、それに続くように午前3時半ごろ領海に侵入したということです。
これを受けて、警戒監視に当たっていた海上自衛隊のP3C哨戒機は情報収集艦に対し、無線で「日本の領海を航行している」と伝えるとともに動向を監視していました。
情報収集艦は、領海内で停泊するなどの特異な行動は確認されなかったということで、その後もインド海軍の艦艇の後方を南東に直進し、およそ1時間半後の午前5時ごろ、鹿児島県の屋久島の南で領海から出たということです。
国連海洋法条約では、軍艦を含むすべての国の船舶について、沿岸国の秩序や安全を害さなければ領海を通過できる「無害通航権」を認めています。
去年9月、中国海軍の艦艇がアメリカ・アラスカ州のアリューシャン列島の沖合で、アメリカの領海内を航行したことが明らかになった際には、アメリカ国防総省は無害通航に当たるとして国際法上は問題ないという見解を示しました。
一方、国連海洋法条約は、無害通航が認められない例として、武力による威嚇や武器を使った訓練、沿岸国の安全を害する情報収集などを挙げています。平成16年に、中国海軍の原子力潜水艦が石垣島の沖合で日本の領海内を航行した際は、海中に潜没したまま航行し浮上して国旗を掲げなかったため、秩序と安全を害さない意思を明確に示さなかったとして、防衛省は「無害通航」ではなく「領海侵犯」にあたると判断しています。
防衛省は今回の情報収集艦の活動の目的などについて分析を進めることにしています。