東京新聞:パリ協定発効 「大転換」がはじまった:社説・コラム(TOKYO Web)
すべての国が温暖化の責任を分かち合い、対策を競い合うパリ協定が発効した。採択から一年足らず。京都議定書は七年余をかけた。危機感が世界を一つにし、社会や経済の大転換も加速する。
世界の主要な国々が「地球」という名前の船に帆を揚げて、温暖化防止という大海に乗り出した。かつてない航海だ。
呉越同舟どころではない。米中やインドなど京都議定書では削減義務がなかった温室効果ガス排出大国も、同じ船で同じ旅に出たのである。しかし、そのキャビンにもデッキにも、日本の姿はない。桟橋で見送るだけだ。乗り遅れてしまったのである。
パリ協定とは、京都議定書の後を継ぐ温暖化防止のルールである。先進国だけに温室効果ガスの削減義務を課した京都とは違い、“全員参加”を第一に考えた。
削減数値目標も割り当てない。世界の温度上昇を産業革命前の二度未満、できれば一・五度に抑える、そのためには今世紀後半に実質排出ゼロという共通のゴールをまず設定し、お互いに監視、検証し合いながら、削減や貢献の自主目標を競い合う。
七日、モロッコで温暖化防止会議(COP22)が開幕し、並行して十五日にパリ協定の第一回締約国会議(CMA1)が開かれる。運用ルールなど、パリ協定の中身を詰める大切な会議である。
批准が遅れた日本は、議決権のないオブザーバーとしてしか参加を許されない。
なぜそんなに重要なのか。パリ協定のキーワードは「脱炭素」。地球環境だけではない、今のように、石油、石炭など化石燃料に頼りきりでは、経済の持続的発展にも支障を来す。だから、米中も素早く舵(かじ)を切ったのだ。
中国が「低炭素発展」を掲げたように、パリ協定は、エネルギーの使い方や資本の流れ、金融の仕組みなど、「脱炭素」を軸にした地球的大転換のはじめの一歩。つまり世界を動かすエンジンが変わるのだ。
三〇年までに一三年比26%削減という日本の自主削減目標への世界的評価は高くない。
パリ協定は五年ごとに目標の引き上げを求めている。だからといって温暖化対策を名目にした日本の原発依存を世界は受け入れてくれるだろうか。
世界が欲しがる革新的省エネ技術の開発や提案などで、よほどの“野心”を見せないと、今日の遅れを取り戻すのは難しい。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161104#1478255832
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161103#1478169496