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「せいぜい地味な利益を得る程度の割に、不確実性は大きい」「私の長い経験に沿うと、心理的効果を予測することは難しい。この手段を正当化することにはかなり慎重にならざるを得ない」


欧州中央銀行(ECB)の金融調節部門のトップを長く務めたフランチェスコ・パパディア氏は、退任後の2013年11月、マイナス金利政策についてそのように述べていた。


日本銀行がそのマイナス金利政策の導入を決定してから、1月29日で1年が経過した。この間に見えてきた政策の効果と弊害を考えると、パパディア氏の「予言」は本質を突いていたといえる。


 追加の金融緩和手段に限界が表れてきた昨年1月末、日銀は起死回生を狙ってマイナス金利政策の導入を発表した。それによって短期・長期の市場金利は大幅に低下したが、日銀の意に反して多方面において「将来不安」が高まってしまった。


 金融機関の収益に対する圧迫は深刻なものになると予想されたため、銀行株は急落した。保険会社や年金の運用も懸念された。さらに、個人の預金者も「すずめの涙ほどの預金利息が、さらにゼロに近づくのか」と警戒心を抱き、消費者マインドが一時悪化した。日銀は心理的効果を読み誤ったといえる。


 日銀の「主要銀行貸出動向アンケート調査」を見ると、この1年で企業の資金需要が高まった様子も特に見受けられない。家計はマイナス金利政策の導入当初に一瞬盛り上がりを見せたが、今はしぼんできている。


金利低下の本来の効果は、将来の需要を手前に引っ張ってくることにある。だが、日本では長く超低金利が続き、「需要の前借り」は既に散々行われた。しかも、生産年齢人口の長期的減少も加わって、前借りしたい将来の需要も先細りが顕著となっている。


 一方、北欧の場合は、マイナス金利政策にさほどネガティブな反応が表れない。現役世代の人口がしっかりと増加し、高齢者の比率が低く、かつ手厚い社会保障制度によって多くの人々が将来不安を抱いていないためだ。


 裏返していえば、日本は世界で最もマイナス金利政策を導入してはいけない国だったといえる。

#リフレ#アベノミクス