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この中で、天野事務局長は「今の時代は非常に先が見通しにくく、不確定要素がある。北朝鮮やイランの問題などがあり、曲がり角で重要な局面に達している。先がどうなると推測してみてもはっきりしたことはわからないが、自分たちが何をできるかはわかる」と述べ、核をめぐる世界の先行きは不透明なものの、核軍縮に向けたIAEAの重要性は変わらないという認識を示しました。

そして、天野氏は、北朝鮮の非核化について「その目標は国連の決議でしっかりと定められている。完全で不可逆的な非核化が目標だ。そこにどうたどりつくか、どの範囲でいつやるかは政治の問題だ。その意味では、米朝のトップレベルが会うのは大変いいことだ」と述べ、2度の米朝首脳会談について一定の評価をする考えを示しました。

そのうえで、天野氏は「しっかりした査察のない約束はあまり意味がない。しっかりした査察は、その取り決めが長く続くことを意味するので、北朝鮮にも関係国にも国際社会全体にも利益になる」と述べ、非核化を確実に前進させるためには、アメリカなど一部の国による査察ではなく、国際機関であるIAEAの査察が不可欠だという考えを示しました。

また、天野氏は、北朝鮮の核開発について「過去10年にわたって継続的に核活動を行い、かつ拡大していることは間違いない事実だ。おととしIAEAの中に北朝鮮チームを作り、観測に力を入れている」と述べ、独自に衛星写真を分析するなど、IAEAとして北朝鮮に対する監視を強化していることを明らかにしました。

さらに、天野氏は「関係国で合意ができた時は、IAEAはすぐ行けるように準備を進めている」と述べ、アメリカや北朝鮮などから要請があれば、いつでも北朝鮮に査察官を送れる態勢を整えていることも明らかにしました。

一方、天野氏は、世界の核軍縮への日本の貢献について「日本は原子力の技術が非常に進んでいて、優れた人材が多い。日本人にはIAEAの事務局に入って知識や経験を生かし、平和な世界の実現に向けて活躍してほしい」と述べ、特に若い世代の活躍に期待感を示しました。

IAEA国際原子力機関は、原子力の軍事目的への転用を防ぐため1957年に設立された組織で、専門家の職員が核関連施設の査察などを行うことから、「核の番人」とも呼ばれています。

核兵器やその技術が拡散するのを防ぐうえで欠かせない組織として、日本をはじめ世界各国が支援しています。

IAEAは、1992年からよくとしにかけて、北朝鮮の核関連施設への査察を6回行いました。しかし、北朝鮮は1994年にIAEAから脱退しました。

そして、2009年以降は査察官が北朝鮮に入れなくなっています。

今、世界はアメリカのトランプ政権発足以降、3つの核問題に直面しています。

1つめは、地球上にあるおよそ1万5000発の核兵器のうち、90%を保有するアメリカとロシアの対立です。

両国の間では、INF=中距離核ミサイル全廃条約と戦略核弾頭の削減を定めたSTART=戦略兵器削減条約の2つが核軍縮の土台となってきました。

しかし、アメリカのトランプ大統領は、ロシアのミサイル開発がINF全廃条約違反にあたるとして、条約の破棄をロシアに通知しました。

一方のロシアは、違反を否定し、対立が先鋭化しています。再交渉が行われなければ、INF全廃条約は半年後に失効します。

また、STARTも、新STARTとして2011年に更新されましたが、2021年2月に条約の有効期限を迎えます。

2つめが北朝鮮の核開発問題です。

北朝鮮は1994年にIAEAから脱退し、2009年以降は査察官が北朝鮮に入れなくなっています。そして、北朝鮮は2006年以降、合わせて6回の核実験を行っています。

アメリカのトランプ大統領は、ことし2月に北朝鮮キム・ジョンウン金正恩)委員長と2度目の米朝首脳会談を行いましたが、物別れに終わり、先行きは不透明です。

3つめがイランの核問題の今後です。

この問題をめぐっては、2015年にアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国とイランの間で、核開発を大幅に制限し、見返りに経済制裁を解除するという合意に達しました。

しかし、トランプ大統領は去年5月、合意ではイランの核保有を止められないなどとして、離脱を発表し、大規模な経済制裁の実施も発表しました。

こうした動きに対しては、イギリスやフランスなども反発していて、今後の行方は見通せません。

会合は、安保理の議長を共同で務めているフランスとドイツの呼びかけで、2日に開かれました。

会合に出席したIAEA国際原子力機関天野之弥事務局長は「世界中では核施設や核物質が着実に増え続けている」と懸念を示しました。

そのうえで、天野氏は、北朝鮮の核開発について「ここ数年で拡充している施設があるが、現地に入れないので、一連の活動の目的を解明できていない。われわれは数週間のうちに現地に査察チームを派遣できる用意がある」と述べ、北朝鮮での査察を再開させる必要があるという認識を示しました。

また、会合では、多くの国からも、北朝鮮の非核化を確実に進めるためにはIAEAによる査察が不可欠だという発言が相次ぎました。

国際社会の核軍縮の柱が、1970年に発効したNPT=核拡散防止条約です。

NPTは、核兵器の拡散を防ぐために、核の保有アメリカ、ロシア、中国など安保理常任理事国5か国だけに認めています。一方で、この5か国に対しては、軍縮に取り組む義務も定めています。

国連は、このNPTに基づく核軍縮の枠組みの強化を図るため、来年、5年ぶりとなる再検討会議を開く予定で、その論点の整理などを行うための準備会合を今月下旬に開きます。

2日、安保理で開かれた会合では、NPTの準備会合に向けて、現状をどう評価し、核軍縮にどう臨むのか、核兵器保有するアメリカ、ロシア、中国など常任理事国5か国を含む各国が意見を交わしました。

国連外交筋によりますと、今回の会合は、核軍縮が停滞していることへの危機感を共有する議長国のドイツと国連が主導して開催が決まったということです。

韓国外務省は3日、韓国に入港している4隻について、国連安保理北朝鮮に対する制裁決議に違反した疑いがあるとして、当局が出港を停止する措置を取り、うち1隻は韓国船籍だと明らかにしました。

地元メディアは、韓国船籍の1隻は洋上で北朝鮮船籍の船に物資を積み替える「瀬取り」で石油精製品を引き渡したと指摘され、去年10月から南部プサン(釜山)の港に留め置かれていると伝えています。

韓国では去年、制裁決議に違反し北朝鮮産の石炭などを原産地を偽って密輸したとして、韓国の業者が摘発されています。

地元メディアは、韓国が国際社会から「制裁の抜け穴」だと見なされるおそれもあると伝えています。

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