“性暴力”無罪判決受け 被害者団体が刑法見直しなど要望 #nhk_news https://t.co/rdZHyXhGPI
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年5月13日
ことし3月、名古屋地方裁判所岡崎支部は、実の娘に性的暴行をした罪に問われた父親の裁判で、娘が同意していなかったことは認めた一方「相手が抵抗できない状態につけこんだ」という有罪の要件を満たしていないとして、無罪を言い渡しました。
これを受けて、性暴力の被害者や支援者などの団体「Spring」は法務省と最高裁判所に要望書を提出しました。
このうち、法務省に対しては、被害者が抵抗できたように思えるような状況でも、抵抗できない場合があることは心理学的に証明されているとして、刑法の要件の見直しを求めました。
団体によりますと、山下法務大臣は、刑法の見直しについて「実態調査を進めていく」と答えたということです。
また、団体は、最高裁判所に対しては、被害者が抵抗できなかったかどうかの認定にばらつきがあるとして、被害者の心理に関する医学的な知見を踏まえた研修を、裁判官に対して行うよう求めました。
団体によりますと、最高裁の担当者は「持ち帰って関係部局と共有したい」と答えたということです。
父親からの性暴力の被害者で、団体の代表を務める山本潤さんは「私自身も父親に抵抗できたかというと、難しかったです。同意のない性行為が罪として認められないのは、社会として考えなければならない問題だと思っています」と訴えました。
今回のケースでは、父親が当時19歳の実の娘に性的暴行をした罪に問われました。
裁判では、娘が同意していたかどうかや、娘が抵抗できない状態につけこんだかどうかが争われました。
ことし3月26日の判決で、名古屋地方裁判所岡崎支部の鵜飼祐充裁判長は娘が同意していなかったと認めました。
また、娘が中学2年生の頃から父親が性行為を繰り返し、拒んだら暴力を振るうなど立場を利用して性的虐待を続けていたことも認め「娘は抵抗する意思を奪われ、専門学校の学費の返済を求められていた負い目から精神的にも支配されていた」と指摘しました。
一方で、刑法の要件に基づいて「相手が抵抗できない状態につけこんだかどうか」を検討した結果、「娘と父親が強い支配による従属関係にあったとは言い難く、娘が、一時、弟らに相談して性的暴行を受けないような対策もしていたことなどから、心理的に著しく抵抗できない状態だったとは認められない」として無罪を言い渡しました。
これに対して検察が控訴したため、2審の名古屋高等裁判所で有罪か無罪かが改めて争われることになります。
性暴力の被害者や支援者は、裁判で被害の実態が理解されず、無罪判決が相次いでいるとして、各地で抗議のデモを行っています。
先月から始まったデモは被害者に寄り添う気持ちを花で表現しようと「フラワーデモ」と名付けられ、11日は、東京、大阪、福岡の3か所で行われました。
このうち東京では、午後7時からJR東京駅前で行われ、主催者によりますと150人以上が集まりました。
参加者は花とマイクを手にして自分が受けた被害の経験などを語りました。
性暴力の被害者団体の代表を務めている山本潤さんもスピーチし、「私も父親から被害を受けた当事者です。最近、無罪判決の報道が相次いでいるのを見て、被害の実態が理解されていないと苦しんでいます」と述べ、刑法の見直しを訴えました。
今回の無罪判決は大きな波紋をよんでいて、ネット上では署名活動が始まり、賛同する声が3万件近くに達しています。
今回の判決のあと、ツイッターには「これが法律家と普通の国民との『感覚のかい離』だ」などといった批判の声が相次いで投稿されています。
一方で「疑わしきは罰せず」などと理解を示す意見もあり、判決から1か月以上がたった今も投稿が続いています。
波紋が広がっていることを受けて、性暴力の被害者などの団体や人権活動をしている団体は、先月26日からインターネット上で署名活動を始めました。
呼びかけ文では「おととし刑法が改正されましたが、要件はそのまま残されたため、泣き寝入りをせざるをえない人がたくさんいるのです。海外では、複数の国で、不同意の性交をすべて刑事罰の対象とするなど、被害者の視点に立った性犯罪の定義規定の改正が実際に行われています」としています。
そのうえで「相手が抵抗できない状態につけこんだかどうか」といった刑法の要件を撤廃し、「同意があったかどうか」のみを要件とすることや、親族や教師など指導的立場にある者や、会社の上司など地位や関係性を利用した性行為を処罰できる新たな犯罪の類型を設けることなどを求めています。
この呼びかけに対し、13日午後5時の時点で賛同する声は2万9000件を超えています。