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イランはアメリカが核合意から一方的に離脱し、経済制裁を発動したことで約束されたイランの経済的な利益が得られていないとして、合意の義務の履行を段階的に停止する措置を取っていて、7日からはウランの濃縮度の引き上げに踏み切る方針です。

イランによる濃縮活動は核合意で平和利用に限られる水準に制限されてきましたが、今後はこうした義務に従わないとしたものです。

ウランの濃縮度の引き上げは核兵器の開発につながりかねない措置でもあります。

一方で、イランは、核合意には引き続きとどまるとして合意に参加しているヨーロッパ各国がイランの経済を制裁から守る実効性のある支援策を取れば再び義務を順守するとしています。

イランとしては強硬姿勢を示すことで、ヨーロッパ各国にイランへの支援策を強く促すねらいですが、敵対するアメリカが強く反発するのに加えて、イランの立場に理解を示してきたヨーロッパの支持も失うことにつながりかねず、合意の枠組みの維持が一層困難になるのは避けられない情勢です。

イランが核合意で制限されてきたウランの濃縮度の引き上げに踏み切るという見方が広がる中、アメリカのホワイトハウストランプ大統領がイギリスのメイ首相と電話会談を行ったと6日発表しました。

電話会談は前日の5日に行われ、イランに核兵器保有させないことやイランが後ろ盾となっているシリアに制裁を強化することなどについて両国が連携していく方針を確認したとしています。

イランが実施に踏み切るとしているウランの濃縮度の引き上げは、その度合いによっては平和利用の範囲を超えて核兵器の開発につながるものでもあります。

ウランを核燃料や核兵器として使用するには、天然ウランにごくわずかに含まれる核分裂を起こしやすい「ウラン235」の濃縮度を高める必要があります。

この作業を「ウラン濃縮」といい、用途によって濃縮度は異なります。原子力発電所の燃料として使うには3%から5%程度で十分ですが、核兵器に使用するには90%以上の濃縮度が必要とされています。

核合意では、イランが核兵器の開発をしないよう、濃縮度を3.67%に制限しています。

濃縮度をどれくらい引き上げるかについて、イランのロウハニ大統領は「必要なだけ」とだけ述べるにとどまっています。

しかし、濃縮度の引き上げは核兵器の開発にもつながりかねない措置で、核合意の中でも特に重要な義務が履行されないことになります。

イランが核合意の義務を破る形でウランの濃縮度を引き上げるねらいは核合意に参加するヨーロッパから具体的な支援策を引き出すことです。

イランは、アメリカが去年、核合意から離脱し、経済制裁を発動したことで、合意の中で約束された経済的な利益が得られていないとして不満を募らせてきました。

イランは、核合意の義務を守っているにもかかわらずアメリカから制裁を科され、合意に参加するヨーロッパ各国が有効な支援策を打ち出せない中で自国だけが義務を守らされている現状にしびれをきらしたことで、ことし5月、合意の義務の停止に踏み切ると発表しました。

第1弾としてイランは今月1日に低濃縮ウランの貯蔵量が合意の制限を超えたと発表しました。

そして第2弾として7日以降はウランの濃縮度の引き上げやプルトニウムが抽出できないよう設計変更がなされた西部アラクにある重水炉を以前の状態に戻すと表明しています。

このうち濃縮度の引き上げは、イランの核開発を抑止してきた合意の根幹に関わる義務で、欧米などはイラン側に強く自制を求めています。

こうした重要な義務の停止に踏み切る一方で、イランは依然として核合意にとどまる考えを示していてロウハニ大統領は今月3日、「ほかの参加国が合意を守るのであればわれわれも義務を完全に履行する」と述べて、あくまでアメリカの制裁からイランの経済を守る支援策をヨーロッパから引き出すことがねらいだとしています。

イラン政府に近く、外交問題に詳しいテヘラン大学のマランディ教授は「アメリカやヨーロッパが核合意の約束を守らなかったにもかかわらず、イランは1年以上にわたって合意とどまり、枠組みを支持する姿勢を示してきた。ここから先は義務を停止させ欧米への圧力を強化していく。これは、核合意を維持するための措置であり破壊するためではない。しかし、これによって成果が得られなければ最終的には、イランは合意から出て行くことになるだろう」と述べて、欧米の対応によっては核合意の破棄も辞さないとしています。

ただアメリカがイランに対して経済制裁を課す中でヨーロッパ側がとれる手段は限られているうえ、強硬姿勢はイランの立場に一定の理解を示してきた国際社会の支持も失うことにもつながりかねず、イランを再び孤立させる危険をはらんでいます。

トランプ政権のイラン戦略は最大限圧力をかけ続けることで、イランを対話のテーブルにつくよう促すことにあります。

このため、トランプ政権は、去年5月にイラン核合意から離脱して以降、経済面で圧力を強化しています。

去年11月には「史上最強の制裁を科す」としてイラン経済の生命線とも言える原油の輸出をねらった制裁を発動。日本を含めた一部の国などにはイラン産原油の輸入を一時的に認めてきましたが、ことし5月にはその適用の除外措置も打ち切り、全面禁輸につながる制裁強化に乗り出しました。

ことし4月にはイランの最高指導者に直属する精鋭部隊「革命防衛隊」をテロ組織に指定し、圧力を強めています。

そして、6月にはイランの最高指導者、ハメネイ師を制裁対象に加えるとする異例の強硬措置を発表し、イランに対し厳しく臨む姿勢を改めて鮮明に打ち出しました。

ことし5月以降は軍事面でも圧力を強めています。

対イラン強硬派として知られるボルトン大統領補佐官が地中海に展開していた原子力空母「エイブラハム・リンカーン」などを中東地域に派遣すると突然、発表。

イラン情勢に対応するためなどとして5月には1500人、先月にも1000人の兵士を追加で派遣することを明らかにしています。

先月下旬にはF22ステルス戦闘機を中東カタールの基地に配備し、イラン周辺で軍備の増強を進めています。

トランプ大統領は先月、アメリカ軍の無人偵察機がイランの革命防衛隊に撃墜されたことを受けていったんは軍事攻撃を了承していたことを明らかにするなど、軍事攻撃も辞さない構えを見せて圧力を高め続けています。

その一方で、トランプ大統領はイランの指導者に対話の席に着くよう呼びかけていて、圧力を強めることでイランを対話の場に誘い出す思惑もあるとみられます。

トランプ大統領としてはオバマ前大統領の遺産「レガシー」と言われるイランとの核合意に代わる新たな合意に向けてイランと交渉を行い、みずからの政治的成果としてアピールするねらいがあるとみられます。

ただ、イラン側は核合意を一方的に離脱したうえに圧力政策を続けるトランプ政権は信用できないとしていかなる対話も拒否しています。

こうした中、アメリカ国内の保守強硬派からはイランに対して一層厳しい態度で臨むべきだという意見もあり、イランがさらなる挑発行為に出れば、トランプ大統領が限定的な軍事攻撃を検討するのではという観測も出ていて、先行きは不透明となっています。

EUはイランの核合意の仲介役を担ったことから、アメリカが離脱したあともその枠組みを維持したい立場です。

合意から一方的に離脱したアメリカによる制裁で経済的な利益が得られていないというイラン側の不満を解消するため、フランス、ドイツ、それにイギリスはEUの調整のもと、イランとの貿易を継続するための事業体をことし1月に設立しました。この事業体はINSTEX(インステックス)=貿易取引支援機関と呼ばれています。

ヨーロッパの企業は、このINSTEXを利用してユーロ建てで決済することで制裁を回避することができます。

ただ、取り引きの対象は当面、医薬品や医療機器、食品など小規模なものにとどまるとみられていて、イラン側の不満を解消できるかは不透明です。

EUにとってはイランをあおる言動を続けるアメリカのトランプ政権をなだめながら、イランにも経済的な実利を与えて核合意の枠組みを維持するという難しい課題が突きつけられています。

一方、核開発の本格再開にもつながりかねない、イランによるウランの濃縮度の引き上げをめぐっては、合意を維持したいEUであっても厳しい姿勢を示すことも予想され、今後の対応が注目されています。

イランの核開発をめぐる核合意は2015年7月、イランが核開発を大幅に制限する見返りにアメリカやEU=ヨーロッパ連合などがそれまでに科していた経済制裁を解除することで合意したものです。

核合意に参加しているのはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の関係6か国と、イランの合わせて7か国で、長年の交渉の結果、2015年7月に結ばれました。

核合意では、イラン側はウラン濃縮に使われる遠心分離機を合意後10年間にわたって1万9000基から3分の1以下にあたる6100基に減らすほか、ウランの濃縮度はおよそ20%から平和利用に限られる3.67%まで15年間にわたって抑えることが義務づけられました。

また、西部アラクにある重水炉については、核兵器に転用可能な兵器級のプルトニウムを抽出できないようにするため、設計を変更することなどが求められています。

そして、IAEA国際原子力機関はすべての核関連施設への定期的な査察が可能になり、核開発が懸念される施設についても検証のための立ち入りを求めることができるとしています。

こうした核合意に基づいて、イランが核開発を制限したことが確認できたとし、アメリカやEUなどは合意が結ばれた翌年の2016年、イランに科していた経済制裁を解除しました。

この核合意について、当時のアメリカのオバマ大統領は、外交交渉によって中東から新たな戦争の危機を防ぐことができたと意義を強調し、みずからの「政治的な遺産」と位置づけるなど、日本を含む国際社会からも歓迎する声が上がりました。

しかし、おととし就任したアメリカのトランプ大統領は、イランに対して厳しい姿勢を示し、去年5月には「核合意には欠陥がある」として合意から一方的な離脱を表明。

これに伴って、8月以降、金融やエネルギーといった分野で核合意の基で解除していた経済制裁を再び発動します。

ヨーロッパなどの5か国は、アメリカが離脱したあとも核合意を維持しようと、イランの経済を制裁から守る支援策を模索しますが、実効性のある手立ては打てていません。

このためイランは、アメリカの制裁によって合意で約束された経済的な利益が得られていないと不満を募らせていきます。

そして、アメリカが核合意から離脱して1年となることし5月、トランプ政権への対抗措置として核合意の義務の履行を段階的に停止すると表明。

第1弾の措置により今月1日には、低濃縮ウランの貯蔵量が制限の300キロを上回ったことを明らかにし、初めて核合意の義務を履行しない状態となっていました。

フランスの大統領府は6日、声明を発表し、マクロン大統領とイランのロウハニ大統領が6日、1時間以上にわたって電話会談を行ったことを明らかにしました。

この中でマクロン大統領は、イランが7日以降、核合意の制限を超えてウランの濃縮度を引き上げるとしていることについて「核合意の意義をさらに弱める危険がある」として強い懸念を示したということです。

そのうえで、すべての関係国による対話の再開を目指し、今月15日までにその条件を探ることでロウハニ大統領と一致したとしています。

フランスをはじめヨーロッパ各国は、イランの核開発を抑制する枠組みとして核合意を維持したい立場です。

声明ではマクロン大統領が今後数日間、関係各国に働きかけを続けるとしていて、イランとアメリカ双方に自制を求め、対話によって緊張を和らげる道を模索するものとみられます。

イランの原子力庁や外務省は7日共同で記者会見を行い、ウランの濃縮度を核合意で決められた3.67%の制限を超えて引き上げると発表しました。

イラン当局は会見の数時間後には作業に着手し、7日から8日にかけてこの数値を超える見通しだとしています。

アメリカがイラン核合意から一方的に離脱し経済制裁を発動したことでイランは約束された経済的な利益が得られていないとしていて、7日までに関係国が具体的な措置をとらなければウランの濃縮度を引き上げると警告していました。

会見で原子力庁の報道官は濃縮の目的について「国が必要としている原子力発電所の燃料を調達する」と述べ、濃縮度は当面原発の燃料に必要な5%程度にとどめることを示唆しました。

そのうえでイランは、一部の義務の停止は核合意に基づいた措置で違反にはあたらないと主張し、合意に参加しているヨーロッパの国々が原油の輸入再開を含めたイランへの有効な支援策を示さなければ、60日後に再び新たな義務の停止に踏み切るとしています。

イランの核開発を抑止してきた重要な義務が履行されなくなることで敵対するアメリカに加えて、イランの立場に理解を示してきたヨーロッパの国々の反発も避けられず、合意の枠組みの存続は一層厳しい局面にさらされています。

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