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日本政府が、半導体の原材料などで韓国向けの輸出規制を厳しくする措置をとったことについて、韓国側は9日にもWTOの理事会で国際的な貿易ルールに反すると主張するものとみられます。

今回の措置について日本政府は、軍事転用も可能な原材料であるにもかかわらず、韓国側に貿易管理の上で不適切な事例が複数見つかったことが主な理由で、安全保障上、必要なものだとしています。

また、今回の措置が「数量制限」というWTOでのルール違反にあたるとするこれまでの韓国側の主張に対して、日本政府は安全保障上の必要があれば例外とされる規定があり、ルール違反にはあたらないと説明しています。

日本政府としても、韓国側の主張に対して同じWTOの理事会でこうした見解を説明し、ほかの加盟国に理解を求める方針です。

スイスのジュネーブにあるWTOの本部では、加盟国が集まる理事会が8日から開かれていて、日本時間の9日午後5時すぎ、2日目の議論が始まりました。

この中で韓国政府は、日本が半導体の原材料などの韓国向けの輸出規制を厳しくしたことに対して意見を述べる予定で、日本の措置が国際的な貿易ルールに違反していると訴えるものとみられます。
発言は日本時間の9日夜遅くか10日未明になる見通しです。

WTOには貿易紛争の解決にあたる役割がありますが、現在開かれている理事会はモノの貿易の在り方を協議するための場で、韓国政府の発言によってWTOの紛争処理が始まるわけではありません。

ただ、韓国政府は国内の大手企業から輸出規制の影響について聞き取りなどをしながらWTOへの提訴を検討することにしていて、今後、提訴に向けた手続きに踏み切るかどうかが焦点となります。

今回の輸出規制をうけて、韓国の経済団体が、国内の半導体や通信関連の企業などを対象にアンケート調査を行ったところ、およそ60%の企業が、半年以上、日本の措置が続いた場合、生産に大きな支障が出ると回答し、先行きへの不安が高まっている現状が明らかになりました。

アンケート調査を行ったのは、韓国の中小企業の経営支援を行う経済団体の「中小企業中央会」で、今月3日から5日の3日間に半導体や通信関連の中小企業およそ270社を対象に調査しました。

この中で、「生産に大きな支障が出る時期」については、▽3か月から6か月後と答えた企業が最も多く30.1%、▽1か月から3か月後と回答したのが23%、▽1か月以内が5.9%で、およそ60%の企業が今回の措置が半年以上続いた場合、生産に大きな支障が出ると回答しました。

また、各企業の対応について聞いたところ、▽21.6%が「代替の原材料の開発を進める」と答える一方、▽「対応策がない」という回答が46.8%と最も多く、先行きへの不安が高まっていることが明らかになりました。

韓国政府は今後、半導体などの原材料の国産化に向けて集中して投資する方針で、日本への依存を減らす方法を模索しています。

しかし、原材料の開発や日本以外の外国からの原材料の輸入にかかる期間については、▽「半年から1年」が34.9%と最も多く、▽「1年から3年以内」も29.7%と、回答した企業の60%余りが半年以上かかるという見通しを示していて、影響を懸念しています。

韓国のスーパーやコンビニエンスストアで、日本のビールの売り上げが先週から減少傾向にあることが分かり、現地メディアは今回の輸出規制の影響だと指摘しています。

韓国メディアによりますと、今月1日から7日までの間、大手スーパー「Eマート」では日本メーカーのビールの売り上げが前の週に比べて14.3%減った一方、日本以外からの輸入ビールと韓国産ビールの売り上げはともに3%前後増えました。

また、コンビニエンスストアの「CU」では、ビール全体の売り上げは前の週に比べて2.6%増えましたが、日本メーカーの商品は11.6%減ったということです。

韓国では、今回の輸出規制を受け、日本製品を買わないよう呼びかける動きが先週からインターネットなどで出ていて、地元メディアは不買運動が少しずつ広がりを見せていると指摘しています。

日本政府は半導体の原材料などで韓国向けの輸出規制を厳しくする措置をとったことについて、軍事転用も可能な原材料であるにもかかわらず、韓国側に貿易管理のうえで不適切な事例が複数見つかったことが主な理由で、安全保障上、必要なものだとしています。

これに対して韓国のソン・ユンモ産業通商資源相は9日夕方、ソウルで記者会見を行い、日本政府は韓国が輸入した「高純度のフッ化水素」が北朝鮮に流出した疑いがあると主張しているとしたうえで、「北朝鮮を含む国連制裁決議の対象国に流出したという証拠は発見されていない」として、「根拠のない主張」だと否定しました。

そのうえで「疑惑に根拠があれば具体的な情報を共有し、緊密に協力するのが責任ある国家としての姿勢だ」と述べ、日本側に情報共有などの対応を求めました。

またソン産業通商資源相は「今月12日の午後にも東京で日本との2国間協議を行う方向で調整している」などと述べ、韓国側の立場を伝えるとともに措置の撤回を求める方針を示しました。

一方、日本政府は韓国側からの求めに応じて事務レベルで事実関係を説明する場だとしていて、協議が成立するかは不透明な状況です。

日本による輸出規制を受け、韓国の国会では9日、イ・ナギョン(李洛淵)首相が「WTO世界貿易機関への提訴は必要だと思う」と述べるなど、提訴を見据えた発言が相次ぎました。

イ首相は9日午後の国会で、野党議員から今後の対応を聞かれたのに対し「さまざまなことを考えているが、まずWTOへの提訴は必要だと思う」と答弁しました。

また、カン・ギョンファ(康京和)外相も「韓国企業の被害を最小に抑えられるよう、短期的、中長期的な対応を模索していて、WTOへの提訴も準備している」と述べました。

韓国では10日、ムン・ジェイン文在寅)大統領が、半導体市場で世界有数のシェアを誇るサムスン電子やSKハイニックスをそれぞれ傘下に収めるグループの幹部と会って、今後の対応について意見を聞くことにしています。

韓国メディアは、今回の規制措置を受けて、アメリカの大手金融機関「モルガン・スタンレー」が9日、韓国のことしの経済成長率の見通しを2.2%から1.8%に引き下げたと伝えました。

その理由について「韓国企業の規制対象の品目の在庫は3か月分に満たない。日本政府の輸出の手続きに3か月かかることを踏まえると、供給先の交換などにコスト増加につながる可能性がある。日韓の貿易問題が韓国経済にとってさらなる圧力となりうる」としています。

一方、韓国の株式市場は、日韓両政府や半導体関連企業などの動向をにらみながら取り引きが行われています。

サムスン電子やSKハイニックスなど、今回の規制措置に関連する企業の株価は変動を続けていて、韓国の代表的な株価指数は先週以降、下落傾向にあり、9日も0.59%下落しました。

一方で、日本政府が輸出管理の優遇措置の対象から韓国を除外した場合に、規制の対象となるとされている炭素繊維を扱う会社の株価は9日になって値上がりしていて、韓国国内で需要が増えることを見込んで取り引きされているものとみられます。

韓国メディアは、先行きの不透明感が広がっているとして「株式市場が一寸先が見えない霧の中に入ってしまった」などと伝えています。

政府は半導体の原材料などで韓国向けの輸出規制を厳しくする措置を取った主な理由として、安全保障上不適切な事例が複数あったためだとしています。

詳細は明らかにしていませんが、関係者によりますと、これらの原材料は化学兵器サリンなどに転用される可能性もあるにもかかわらず、一部の韓国企業が発注先の日本企業に急いで納入するよう迫ることが常態化していたということです。

経済産業省はこれを問題と見て、日本企業に聞き取りや立ち入り検査をして改善を求めた一方で、韓国側の当局は貿易管理の体制が不十分で韓国企業への適切な対応を取らなかったということです。

こうした状況が続けば、軍事転用も可能な物資が韓国から大量破壊兵器を開発するほかの国に渡るリスクを排除できないという懸念があり、今回の措置に踏み切る背景となったということです。

一方、政府は、今回の措置は国内の運用の見直しであるため、韓国との協議には応じないとしています。

ただ、韓国側の要請を受けて、今月12日に都内で事務レベルで、今回の措置の詳しい内容について説明する場を設けることになりました。

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