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こうした混乱から、やがて中国人民武装警察隊や人民解放軍が鎮圧に乗り出すのではという懸念も広がっているが、香港の若者たちの爆発的な怒りの背景には、彼らが抱くいくつかの強い鬱憤がある。その一つが、異常な不動産価格と住宅不足である。

どれだけ高学歴を得て毎日懸命に働いても、一般的な若者が香港で広めのマンションに住むことなどほぼ不可能だ。もともと香港の面積が小さいということもあるが、一方で政府の土地管理政策がいびつであり(香港で住宅地として開発されているのは全面積の24%にすぎない)、加えてほんの一握りの大富豪たちが、時に腐敗した香港政府の役人とつるんで限られた土地の多くを所有し、それらを離さないことが原因だ。ある調査によると、香港で自宅を保有している市民は全体の半数しかいないという(フォーブス、2015年4月3日)。

そんな若者にとってのもう一つの不安材料が、大陸からの圧力によって急速に中国化し、自由を失っていく香港社会の現状であろう。

香港では近年、地元メディア関係者が次々と襲われる事件も起きている。2014年1月には香港の主要紙『明報』の男性編集長が突如解任され、親中派の人物が後任として編集長ポストに就いたが、この翌月には元編集長が白昼に2人組の男に刃物で襲われて重傷を負うという事件が発生した。

また、さらにその翌月には『香港晨報』の幹部2人が鉄パイプを持った4人組に襲撃された。被害者らはいずれも、大陸の政策に批判的な人々であった。そのほかにも、習政権に批判的な書籍を扱う書店の関係者5人が相次いで失踪し、中国側に拘束される事件など、香港の言論の自由を標的とした攻撃は後を絶たない。

これらの事件の背後には中国政府の本音があると感じた香港市民は多いが、そこに降りかかってきたのが、共産党政権からの要請があれば、香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能とする今回の逃亡犯条例改正案であった。

この法案を提出したのは、大陸寄りとみられている香港公安局の李家超(ジョン・リー)局長であるが、こんなことがまかり通れば、香港人がこれまで享受してきた自由や権利が大きく奪われてしまい、中国政府が約束した一国二制度が崩れ去るのは時間の問題になる。

このことが、すでに香港の現状や将来に大きな不満や不安を抱いていた若者の怒りを爆発させたのだろう。そして、彼らがそんな不満や不安を共有していたからこそ、カリスマ性を持つリーダーが不在であっても、多くのデモ隊が各地でさまざまな抗議活動を延々と継続し得たと考えられる。

そんな彼らのデモが時にさらに激しい抗議活動にまで発展したのは、本来なら香港市民を守るはずの警察が、逆にデモ隊に対してかなり苛烈かれつな実力行使をしたことに対する強い失望と怒りが広く共有されたからでもある。事実、香港警察に対する怒りは相当に激しいようだ。

無論、この条例改正案を入れられて困るのは、何も香港の一般市民だけではない。改正案には「外国人」も含まれるため、米英政府や欧州連合も懸念を示した。

一方で、こんな香港市民の激しい抗議活動を利用して、北京の習近平政権に対抗しようと考える「抵抗勢力」もある。それが、習近平政権と激しい闘争を繰り返してきた、江沢民国家主席が率いる一派上海閥である。ここに今回の混乱の根深さがある(詳細は拙稿「トランプと金正恩はなぜ奇妙に仲がいいか」を参照)。

中国本土との犯罪人引き渡し協定がない香港は長年、習近平政権の標的となった上海閥に近い多くの富豪たちが逃げ込む「安全地帯」と化していた。習政権からすれば、逃亡犯条例改正案の成立は、こんな香港にたむろする「上海閥の下手人たち」を一網打尽にし、その経済基盤を一気に破壊することにもつながる。

そんな習政権に対し、上海閥が徹底抗戦するのもまた当然の流れであろう。事実、2014年の雨傘運動の時点で、江沢民一派が背後で運動を支援しているといううわさはあったし、今回の一連の抗議デモにも江沢民系の組織が関与しているのではとする指摘もある(台灣英文新聞2019年7月9日 "Former China leader Jiang Zemin and supporters in Chairman Xi's sights")。

つまり、怒れる香港市民は、中国の一党独裁を嫌い、自分たちの自由と民主主義の維持を望んで立ち上がったわけだが、上海閥は自らの生き残りのためにそれを利用している、というわけだ。

そんな上海閥は近年、習政権による「反腐敗運動」という名の猛烈な粛清を受けて、急速にその勢力を衰えさせている。

例えば、2007年にわずか44歳で人民解放軍の少将に昇格した東部戦区の楊暉参謀長は、長らく軍の中にあって江沢民氏に忠誠を誓う親衛隊のような立場を維持し、習近平政権への抵抗勢力を形成していたと言われているが、2018年8月になって突如として失脚した。

その翌月には、かつて上海閥の重鎮であった周永康氏(無期懲役刑で服役中)の人脈につながる国際刑事警察機構ICPO)の孟宏偉総裁が、一時帰国していた中国国内で突然失踪。翌月には中国当局による取り調べを受けていることが明らかになり、2019年3月には共産党の党籍を剥奪され、刑事訴追されることが決まった。

狙われているのは官僚たちだけではない。上海閥と親しい富豪もまた、次々に災難に遭っている。

2014年、香港に本社を置く中国の政府系コングロマリット「華潤集団」の宋林董事長が、突然巨額の汚職容疑で失脚した。宋林氏は上海閥人脈に連なっており、習近平氏ににらまれてのことであった。

また2017年1月には、中国の若き大富豪・蕭建華氏が、滞在していた香港のフォーシーズンズホテルの一室から姿を消すという事件が発生した。上海閥人脈のマネーロンダリング資金洗浄)を担当していたと考えられる同氏を拉致したのは、中国政府の情報部員らであったようだが、今日に至るまでその消息は明らかになっていない。

今回の逃亡犯条例の改正案は、こんな水面下での激しい戦いが続く中で、突如浮上してきたのである。

このようにして見ると、今回の香港における混乱の背後にあるのが、「暴力的な習近平独裁政権」対「非力な民主抵抗勢力」という単純なストーリーだけではないことだけは理解しておいた方がよさそうだ。

数カ月にわたって香港での大混乱を引き起こした逃亡犯条例改正案提出は、同地を拠点にさまざまな秘密活動を行ってきた外国情報機関にとっても一大事であった。英国による統治時代から、香港は長らく米英情報機関の活動拠点でもあり、今日もその状況に変わりはないからだ。

例えば、1989年の天安門事件の直後、多くの民主化運動の学生リーダーたちが中国公安当局に追われたが、この時、香港を拠点として、地元の実業家や有志らとともに彼らの海外逃亡を支援したのは英秘密情報部(MI6)や米中央情報局(CIA)であった。

この秘密作戦は「黄雀作戦(行動)」と呼ばれているが、英米情報機関はこの時、逃亡の資金のみならず、通信機や暗視装置、さらには武器なども逃亡学生らに提供したとされている(フィナンシャル・タイムズ、2014年6月1日 "Tiananmen Square: the long shadow")。

ちなみに「黄雀行動」とは、「セミを狙うカマキリを、その背後からカナリアが狙っている」という中国の故事成語(蟷螂捕蝉、黄雀在后)にちなむもので、つまり目の前の獲物を狙っている自分もまた、別の敵に虎視眈々と狙われているという意味だ。

香港の抗議運動に参加しているグループには、全米民主主義基金(NED)から資金援助を受けているものがあるということも度々報じられてきた。このNEDとは、1983年のレーガン政権時代に「他国の政府を民主化する」という目的で設立された組織である。

しかし実際のNEDは、反米的な国の政権交代(あるいは体制転覆)を支援するために、その国の反対派に資金援助などを行ってきたのであり、CIAのフロント機関とも呼ばれている。

NEDは、2014年の雨傘運動の頃から香港のデモ支援を行っていたようだが、そのNEDと並んで香港の民主化運動を支持している地元の富豪もいる。その1人が、地元香港メディア界の大物で、蘋果日報(アップル・デイリー)を創業した黎智英(ジミー・ライ)氏だ。

貧しい家から一代で巨額の富を築いた立志伝中の人である黎氏は、2014年の雨傘運動には億単位の資金を提供し、実際に自分でもデモ隊に参加した行動の人で、もちろん今回の抗議運動をも強く支持している。

そのせいで、黎氏は中国メディアから「漢奸(売国奴)」と罵倒され、その自宅は過去に車で突っ込まれたり、火炎瓶を投げ込まれたりしている。2019年9月5日にもやはり自宅が火炎瓶攻撃を受けている。

2019年7月10日付の「ブルームバーグ」("Trump Team Sends Defiant Signal to Beijing by Meeting Hong Kong Activist")によると、その黎氏が同月にワシントンを訪問し、ベネズエラやイランに対する軍事力行使を願うマイク・ペンス副大統領やポンペオ国務長官、さらにはジョン・ボルトン元安全保障担当といったネオコン新保守主義者:リベラルから転向、米国の国益のためには武力行使も辞さぬ保守主義者)系高官」と会談、そこで「香港は自由と民主の危機にある」として米国の支援を求めたという。

そんな人脈と関係を持つ黎智英氏を、習近平政権が「CIA工作員」と呼んで非難するのは驚くに当たらない。

米政府高官が黎智英氏と面会するということは、すなわちトランプ政権が中国政府に対して完全なる敵対関係を示したことになるなどと単純に報じる向きもあるが、ここで気をつけなければならないのは、彼ら「トランプ政権内にあるネオコン系高官」の動きは、必ずしもトランプ大統領の意向とは同じではないということだ。

その証拠に、トランプ大統領は香港の民主化運動にはあまり興味がないようで、当初は香港の抗議運動を「反乱」とさえ呼んでいたし、黎智英氏とも親しいジョン・ボルトン国家安全保障補佐官も先日解任されている。そもそも、対外不干渉主義のトランプ大統領は、ネオコンとは一切相いれない考えの持ち主だ。そんなネオコン系の人々を何人も自分の政権内に入れているのは、「友は近くに置け、敵はもっと近くに置け」というトランプ大統領一流の戦略であろうと推察する。

一方の習政権は、何度も香港のデモの背後にはCIAがいると述べており、香港の分離独立を狙っているのではないかと勘ぐっている。実は彼らは、米情報機関が実行する「カラー革命」を恐れているのである。

「カラー革命」とは、2000年代に東欧から中央アジアの国々でCIAが主導して行った一連の政権転覆劇である。この「カラー革命」では、前述のNEDも深く関与しており、例えば過去にはベネズエラキューバ反政府勢力への資金援助をも行っていた。NEDの初代理事長はかつて、「私たちが今日やっていることの多くは、25年前にCIAが秘密裏にやっていたことである」と述べたこともある(ワシントン・ポスト、1991年9月22日 "Innocence Abroad: The New World of Spyless Coups")。

実際、中国政府系メディアは、香港のデモに紛れていた欧米系白人グループを撮影した写真を流し、「彼らはCIA工作員だ」と主張していたし、またデモ隊の中にも実際に米英の国旗を振り回している人々がいたことが、この中国側の指摘に一定の「信頼性」を与えている部分もあるだろう。当然、「民主化運動支持派」はこれをバカバカしい陰謀論だとして非難しているが、互いに激しい情報戦が行われていることは間違いない。

香港行政長官の林鄭月娥氏が、9月4日に突然発表した、逃亡犯条例改正案の撤回。習近平政権にとっては決して望んだ展開ではなかったであろうが、世界中の監視の目がここまで香港に注がれている以上、今の段階で乱暴なことをするのは得策ではない。

北京が今日まで沈黙を貫いているのは、取りあえずは改正案撤回などの「アメ」を与えて香港市民の反応を静観しようという部分もあるだろう。もちろん、今回の林鄭氏の発表も間違いなく北京の了解を得ている。

「鉄の女」から「弱音を吐く女性長官」に姿を変えた林鄭氏はさらに、若者の怒りの背景にあった、香港の異常な不動産価格と住宅不足を解消するための追加的施策を行う考えをも示した。今や彼女は、不満を抱く若者たちに「歩み寄る姿」をも見せ始めている。

無論、デモ隊の中でも「勇武派」と呼ばれる強硬派などは、引き続き普通選挙の実施などを含む「五大要求」の実行を求め、さらなる抗議行動の実施を計画している。しかし「リーダー不在」の香港デモにおいて、一部強硬派の付け焼き刃的要求には、逃亡犯条例改正案やその撤回ほどの「動員力」はない。

この間、林鄭氏はアメリカに対し、これ以上香港の問題に介入するなと警告することも忘れなかった。自らが習政権に忠実であることを示した格好だが、同時にトランプ米大統領との戦いで劣勢に立たされている米エスタブリッシュメント層(=反トランプ派)、および習近平政権との戦いに敗れつつある上海閥から、林鄭氏が少しずつ距離を取ろうとしていることの兆候かもしれない。

こうした状況の急変は、香港の今後の針路を少しずつ変化させつつあるようにも見える。市民の中には事実、各地で暴れまわるデモ隊に対し明確に距離を置く動きも出始めたようで、一部では中国の五星紅旗を持った中国支持派が現れ、デモ隊と乱闘を繰り広げる事案も発生した。明らかに潮流は変わりつつある。

こうなると勇武派や、上海閥などが支援する民主化要求グループは焦りを感じ、ますます過激にならざるを得ない。実際、9月の中旬に行われたデモでは多くの火炎瓶が使用されるなど、一層過激化する様相を示している。

2019年10月1日、中華人民共和国建国70周年記念を迎える。すでに北京では大規模な式典の準備が始まっており、香港のデモ隊との衝突で負傷した警察官も招待されている。この式典は、習近平主席への個人崇拝を全面的に押し出すものになるであろう。

それに対し、民主化を求める「勇武派デモ隊」が、香港でも行われる記念式典の前後に何か騒擾そうじょうを起こす可能性もある。上海閥はそれを支援するであろうし、場合によっては誘発さえするだろう。

この大切な記念日に大規模な抗議デモが発生し、軍事パレードや記念式典が妨害されるなどの事態が発生すれば、習近平政権はその顔に大きく泥を塗られる事態になる。上海閥にとっては、それがもっとも胸のすくことであるからだ。一方で、もし本当に大規模でより暴力的な騒擾が発生し、香港警察の対処能力を超えると判断されれば、深圳に展開する人民武装警察隊が投入され、香港は一気に武力制圧されてしまうのではないかという心配の声も上がっている。

そう考えると、この建国記念日前後に、例えば無差別銃撃や爆弾テロのような事件が起こってくれた方が都合がよいと考えているのは、上海閥だけではなく、習近平政権も同じではないだろうか。「デモ隊の暴徒化」が「テロ活動」に発展すれば、習政権は一気に人民武装警察隊を香港市内に投入し、「テロ支援容疑」で上海閥の関係先を一斉摘発することもできるからだ。

こんな習近平政権による香港鎮圧計画は、実はトランプ大統領(「米政府」ではないことに注意)にとっても決して悪い話ではない。上海閥と緊密な関係を維持しつつ、世界各地で戦争を作り出して巨額の利権をむさぼってきた米国エスタブリッシュメント層や情報機関(つまり、反トランプ派)を弱体化させ、世界中から米軍を撤退させることで軍事費や社会保障費を抑え、北朝鮮を完全に取り込んで地下資源ビジネスで儲けるという、自身の目的に資することになるからだ。

こうして見ると、トランプ氏が香港の民主化運動支援にそれほど前向きではない理由や、数千人のデモ隊が在香港米領事館に向けて「トランプ大統領、香港を解放してください」という旗を掲げて行進し、アメリカによる圧力を呼びかけたわずか数日後というタイミングで、香港の民主化運動に同調してきたボルトン補佐官がクビになった点は奇妙に合点がいく。

香港問題に関する限り、トランプ氏にとっては「敵(反トランプ派+上海閥)の敵(習近平一派)は味方」ということであろう。当の習近平氏にとっても、まずは国内の敵を一掃しない限り、アメリカとの覇権争いを満足に戦い抜くことはできない。つまり、習氏とトランプ氏の利害は、少なくとも短期的には一致している。

一方で長期的に見れば、習近平一派と上海閥が激しく争うほど、状況は全ての面でトランプ氏にとってさらに有利になる。香港での混乱が長期化すれば、それはやがて習近平体制の基盤を揺るがすことにもつながるし、上海閥を支援する米国内の反トランプ派のエネルギー消耗にもつながる。トランプ氏は、そんな両者の勝負がついたのちに、「消耗した勝者」に対して厳しいディールをふっかければよいのである。

いずれ、習政権と上海閥が香港の権力掌握を巡って雌雄を決するときが来るであろう。そのとき、香港市民が求める自由と民主化への叫びは、強大な権力を持った二つの大陸系利権集団の闘争の中で永遠についえることになる。そんな未来を見越したように、香港市民による海外移住申請が急増している(ロイター通信、2019年9月13日 "Hong Kongers troubled by unrest look for new homes abroad")。

今の香港情勢の背後にあるこれら両サイドの本音は、「先に手を出した方が負け」だが「相手が先に出すのを待っている」という状態だ。その動きを背後からじっくりと眺めているのが、トランプ陣営ということになる。中国の故事成語「螳螂捕蝉、黄雀在后」になぞらえると、セミ上海閥)を狙うカマキリ(習政権)の後ろからカナリア(トランプ陣営)が狙っている」という状態だ。

かつて中央情報局(CIA)が、天安門事件から命からがら逃れた民主化学生らの海外逃亡を支援した「黄雀作戦」は、香港を拠点として行われた。同じ香港で今、習近平政権と上海閥を狙ったもう一つの「黄雀作戦」ともいうべき、トランプ氏による対中攻略作戦が進行中だ。しかしこの「新・黄雀作戦」は、香港の民主化運動には一切無関心でもある。

トランプの「新・黄雀作戦」が今後どのように展開するかはわからないが、このままだと「カマキリがセミを捉える」のは時間の問題のように見える。いずれにせよ、急速に「中国化」していく香港の混乱の行方が、今後の米中関係に大きな影響を与え、その余波がやがて日本にも襲いかかってくることだけは間違いあるまい。

4か月近くにわたって大規模な抗議活動が続く香港では1日、中国の建国70年にあわせた抗議活動に参加していた18歳の男子高校生が、警察官に拳銃で撃たれ、一時、重体となりました。

警察は自衛のためだったと釈明していますが、市民の間では警察の責任を追及する声が高まっていて、2日夜も各地で抗議集会などが開かれました。

このうち、拳銃で撃たれた生徒の高校がある新界地区の集会では、参加者が折り鶴を折って生徒の回復を祈るとともに「子どもを撃つな」と書かれたプラカードを掲げて抗議していました。

また一部の地域では、抗議活動の参加者が過激化し、警察署に火炎びんを投げ入れるなどしたため、警察が催涙弾を使って強制排除に乗り出しました。

市民の間では、一連の抗議活動でデモ隊を取り締まる際の警察の暴力行為が過剰だとして批判の声があがっていただけに、警察の発砲でけが人が出たことに対して、警察や政府への反発が一段と強まっています。

複数の香港メディアによりますと9月29日に香港中心部で行われた抗議活動を取材していたインドネシア人の女性記者が、警察が発射したゴム弾を右目に受けて大けがをしました。

この記者は、香港で発行されているインドネシア語の新聞の記者で弁護士が2日、右目を失明するとみられると容体を明らかにしました。

記者は、ゴム弾を受けた当時、「プレス」と書かれた黄色いベストを着用して、歩道橋の上から、抗議活動を取材していたということです。

香港では抗議活動が一部で過激化するなか前線で取材する記者が、デモ隊と警察との衝突に巻き込まれて、負傷するケースが相次いでいます。

香港で続く抗議活動では、参加者の多くが、当局から身元が特定されないようマスクやゴーグルなどで顔を隠して参加しています。

これについて親中派の議員らが3日、記者会見し、顔を隠すことがより過激な行為につながっているとして、マスクなどで顔を隠して抗議活動に参加することを規制する法案を制定するよう香港政府に求めたことを明らかにしました。

会見した議員は、「抗議活動の参加者は、顔を隠すことで法律の責任から逃れられるので暴力行為に及んでいる」と述べました。

これに関連して、複数の地元メディアは、香港政府が立法会の承認を経ずに行政長官の判断でさまざまな規則を設けることができる「緊急状況規則条例」を発動して顔を隠して抗議活動に参加することを禁止できるよう、4日にも行政長官の諮問会議である行政会議に諮る方針だと伝えました。

「緊急状況規則条例」が発動されれば必要に応じて、SNSによるメッセージのやり取りや集会、移動の自由などを制限できることから、民主派の議員は「条例の発動は市民の人権を著しく制限するもので、決して容認できない」と強く反発しています。

香港政府が「緊急状況規則条例」の発動を検討していると報道されたことについて、これまでたびたび大規模なデモ行進を主催してきた民主派の団体が声明を発表し、「条例は植民地時代の悪法で、行政機関が権力を乱用し、香港の市民を迫害するものだ。市民がマスクを使用するのは催涙弾から身を守るためで、これを制限することは市民の身の安全や表現の自由を侵害するものだ」として、強く反発しています。

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